サントリーグルメガイド全国版

サイトマップ

勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

8月のゲスト 中島美加 フリーライター 私が気になるもの 温泉たまご

8月のゲストはフリーライター中島美加さん。「食」は旅もの、街ものの取材で欠かすことのできない大切なアイテムで、しかもプライベートでも「食」重視で休日を過ごすことが多いのだとか。仕事柄、贅沢なグルメに遭遇することも多いが、元来、食材の味が楽しめるシンプルグルメが大好き。そんな中島さんが温泉取材のおまけ的要素である温泉たまごに心を奪われているそうです。温泉にほっこり浸かるより、温泉たまご作りを優先するということからトレンドにとイチ押ししてくれました。

温泉たまごに魅せられて

 まず温泉たまごの定義から話しましょう。温泉たまごは一般の半熟たまごと比べ、黄身と白身の堅さが逆転しているのが特徴。つまり卵黄よりも卵白の方がやわらかく、この食感がたまらないという「温たまファン」は多いはずです。卵黄部分と卵白部分の凝固温度がそれぞれ70度と80度と10度の差があるため、70度以下(65度程度)のお湯にゆっくり浸けておけばできるという仕組み。家庭用「温泉たまごマシン」も出回っているし、そんなマシンがなくてもポットなどで65度の温度を保てば、簡単に作ることができるのです。でも、私の心はそんな嘘では満たされなくなってしまいました。そう、温泉の湯に浸けた正真正銘の温泉たまごでなければ納得がいかないのです。
 ありがたいことに、取材で各地の温泉を巡る機会が多くあります。温泉街をぶらぶらと散策する時に、編集にたずさわる者として、あればぜひ取材して帰りたいアイテムが「温泉たまご」。それはコレ1つでいかにも温泉!を表すことができるから。私にとっても最初は温泉のおまけ的存在でしたが、様々な温泉地で卵を湯に漬け、時間を計り、ワクワクしながら殻をむいているうちに、脇役のはずが、いつしか準主役の座にまで上りつめてきたのです。
 なぜなら、その土地土地で出合う個性的な温泉たまごが、旅をより印象づけてくれるからです。
 白浜では黄身と白身の堅さが反対だから「反対たまご」と呼ばれていたり、城崎では無農薬のエサで育った鶏の卵を使っていたり…。今となっては、温泉たまごの特徴と温泉地の風情が一緒になって蘇るまで、大きな存在になってしまったんです。

土地土地で出合う個性的な温泉たまごの写真

私の中のベスト3

 とても私事ながら、ここで今現在の温泉たまごのベスト3を紹介させてもらいます。といっても、3つの中で順位はつけられないのですが…。
 まず一つ目が「湯村温泉」。3年前まで、私は美肌の湯といえば鳥取の「三朝温泉」、和歌山の「龍神温泉」、岡山の「奥津温泉」をあげていたのですが、取材で湯村温泉に訪れてみると、自分の住んでいる兵庫県にこんなに肌がスベスベしっとりする湯があるなんて〜と、まさに目からウロコだったのです。その湯は、入ると肌に吸いつく感じ。湯上がりは、化粧水なしでもバッチリ潤っているんですよ。
 その温泉街はこじんまりしたすり鉢状で、すり鉢の中心に位置する泉源「荒湯」で温泉たまごが楽しめます。卵はネット&塩付きで、町中の売店で販売していますので、一度トライしてみて下さい。

卵を湯壺で茹でている写真

 辺り一面に白い湯気と硫黄の香りが漂う中、温度の違う3箇所の湯壺がある「荒湯」。その中で一番温度の低い湯壺で12分間茹でれば、いい感じの温泉たまごが完成します。すぐそばの川沿いにある足湯(約7m。日本一長い足湯)に浸かりながら食べるのが、オススメです。
 早朝や夕方には、この湯壺に夕飯用の野菜や山菜(季節になると蟹も!)を茹でる近所のお母さんたちが集ってきます。湯壺=地元の台所という情景に、ほのぼのした気分になれるのが、実にいいんですよ。
 そして二つ目が、和歌山・熊野古道の地にある日本最古の温泉地「湯峰温泉」。熊野詣の道中に疲れを癒したり、禊ぎをしたり…。ひなびた街並みに、果てしなく長い歴史を感じます。傷や病気を治癒する効果があるので薬湯といわれる公衆浴場のほかに、川の中州には世界遺産に登録された露天風呂「つぼ湯」があります。大人750円、こども450円(公衆浴場込)でその世界遺産の湯船も体験できるなんて、素敵でしょ。
 さて、温泉たまごは90度近い源泉が湧き出る「湯筒」に10分間浸けるのが目安です。沸騰に近い温度なので、いわゆる温泉たまごではなく、どちらかというと固茹でたまごになりますが、硫黄の匂いがしっかり染みついて、塩がなくても美味しいのです。ジャガイモやサツマイモ、栗をゆがくと、これまたホクホクでオススメですよ。芋類は1時間近くかかるので、温泉に入る前に「湯筒」に仕込んでいきましょう。

なんと有馬にも温泉たまごが…

 公私含めて、年10回は有馬に足を運ぶ私ですが、有馬温泉にも温泉たまごがあることを知ったのは、恥ずかしながら今年になってから。老舗旅館「御所坊」がプロデュースする料理処「旬重」の朝食で、金の湯で茹で上げた温泉たまごを出してくれるのです。
 「旬重」の料理長・勝田英治さんによれば、戦前、有馬温泉には「杉本ホテル」という外国人向けのホテルがあり、そこのマダム・杉本ヨネさんの作るボイルドエッグが、評判だったそう。というのも、ゲストひとりひとりに好みの茹で加減を聞き、絶妙なできあがりを提供していたと言います。「旬重」では、その逸話を素に、最高のボイルドエッグを作りたいというのが、そもそもの始まりだったとか。
 毎朝、勝田さんは8時10分頃に「旬重」から歩いて2分のところにある泉源「御所泉源」に卵を持って出向きます。ちなみにこの泉源から御所坊をはじめ、近隣の宿に金泉が送られています。源泉自体は98度ほどありますが、各宿が不純物を取りのぞくために一旦、湯をためている湯壺では、温度が下がり、70度ぐらいになっているのだそう。そこで「御所坊」専用の湯壺で卵をボイルするそうです。
 日々、温度が違うので、まずは温度を測り、茹でる時間を割り出します。そして凧糸につないだ籠に卵を入れて、そろそろと浸けます。凧糸が金泉で赤く染まっているのには、びっくり。ちなみに、卵は地元の地卵(赤玉)を使っているので、もともと赤いんです。
 少し早めに引きあげ、余熱でほどよい状態に仕上げた温泉たまごは、美しいガラスのエッグスタンドで提供されます。そばには、辛過ぎずにほんのり甘いモンゴルの岩塩が添えられています。
 味の方は白身はまろやかで、黄身は濃厚、しかも風味は抜群。黄身を釜焚きのご飯(「旬重」ではご飯は釜焚き。おくどさん<かまどの意味>を使ってます)に載せて卵かけにして食せば、一卵で二度美味しいのです。
 殻を手でボロボロとむきながら、塩を手でパッパとふりかけて、アツアツを頬張る温泉たまごのイメージとはかけ離れたちょっと気取った温泉たまごですが、たまにはこんなのもいいなぁと思います。
 たかが温泉たまご、されど…。温泉たまごの味わいと共に温泉旅行の思い出をインプットしていくと、なかなか楽しいですよ。この夏、各温泉地で温泉たまご作りにトライする人が増えれば、いつしか自然とブームに…なんて考えているのは私だけですかね。

泉源で温泉卵を作る勝田さんの写真

プロフィール

中島 美加(なかじま みか)

大学時代から、大阪のローカル情報誌「月刊せんば」にて書く機会を与えられ、卒業後は長く阪急電鉄の沿線情報誌「TOKK」の編集に携わる。10年前にフリーランスのライターになり、京阪神エルマガジン社をはじめ関西の雑誌、出版物の仕事を手がける。最近ではプライベートの趣向を活かした紀行文系、自然体感系の取材と、シルバー世代を対象にした媒体の仕事が増えつつある。憧れの家田荘子さんの歩き遍路を密着取材したことが、今のところ今年一番心に残る仕事となっている。

中島美加さん写真

このページの先頭へ

バックナンバー
空飛ぶマグロ肥前あさくさ海苔ワンプレート・フード地元のお母さんの味森のような空間を持つレストラン猪肉(ボタン鍋)酒を飲みながらの団塊世代ライブこんにゃくそば黒糖と豆のマッチング卵かけご飯魚醤球形で黄金色したズッキーニ美的アクセントのあるモノドライフルーツかわいい形(色)のトマト黒豚バークシャー丹後のオイルサーディンエイシー美味しい"ずるさ"のおすそわけミルキークィーン永田農法の野菜無農薬・有機栽培の雑穀ホルモン焼きうどんマンチェゴ日向地鶏のもも焼き