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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

5月のゲスト 杉森史明 ホーリョウ商事株式会社営業部長 私が気になるもの 肥前あさくさ海苔

5月のゲストは海苔専業メーカーに勤める杉森史明さん。一年中、海苔と接する環境から近年出合ったのは平松博之さんが作る「肥前あさくさ」海苔。甘みが特に優れており、旨み、香りとも他を圧倒するこの海苔は、一枚が100円とかなりの高級品。コンビニ使用が主流を占める海苔業界にあって、この高級海苔は果たしてトレンドになり得るのでしょうか。「味が違う!」と専門家が唸る海苔とはとはどんなものか。海苔業界の現状とともに話してもらいましょう。

アサクサノリと浅草海苔は違う

 海苔の仕事に携わっている私が、今一番注目しているのは、佐賀県で獲れる「肥前あさくさ」という焼き海苔です。この海苔は今では珍しいアサクサノリで、旨みも香りも他よりあり、特に甘みが特徴の逸品です。
 こう話し出すと、アサクサノリのどこが珍しいの?と思うでしょうから、まずは海苔の世界から話を展開しましょう。我が国で養殖に使われるのはスサビノリとアサクサノリ、その他に北海道や東北の一部ではウップルイノリがあります。この中で私達の口に入っている大半はスサビノリ。この品種は主に北海道で育っていたものを昭和26年に宮城県の塩釜に持って来、その翌年から3年間にわたって東京湾の大森漁場へ移植されたもの。
 一方、アサクサノリは天然採苗の頃には盛んだったのですが、やわらかく、薄いこともあり、病気にかかりやすく、手間がかかると、漁師が敬遠。いつしかスサビノリが市場を席捲してしまったんです。アサクサノリは東京湾では全く姿を消してしまい、そればかりか、現在の市場の100%近くはスサビノリに代わってしまいました。スサビノリは病気に強く、生産の時期も早く、黒い色が特徴。だから売る方にとってもとても都合のいい商品なんですね。
 市場のほとんどがスサビノリと言うと、「エッ?うちには浅草海苔があるのに」と言う人もいるでしょう。アサクサノリの学名は「Porphyra tenera」と言い、和名になるとこれが「アサクサノリ」と表示されます。これが焼き海苔や味付海苔のような商品になると、漢字があてがわれ、「浅草海苔」と表記されるのです。東京湾では数多くの海苔が生産されましたが、これらを総じて「浅草海苔」と呼んでいるようです。だから「浅草海苔」と言っても必ずしもアサクサノリが原料に使われているわけではないのです。

杉森史明さんとアサクサノリの写真

絶滅危惧品種から作った海苔は甘みが特徴

 絶滅危惧品種に指定されているアサクサノリを、もう一度復活させようというのが「肥前あさくさ」海苔を作っている平松博之さんです。彼との出会いは3年前、某イベントで佐賀市漁協婦人部が出展し、焼き海苔アイスクリームの販売をしていたのがきっかけです。その会場で売っていたのが平松さんのお母さんでした。当社も有明産の海苔を沢山扱っていることから、佐賀とは縁があり、平松さんのお母さんと話し込んだのですが、その時、息子さんの活動を聞き、感銘を受けたわけです。私はぜひとも現場を見たいと思い、佐賀まで飛んで行きました。
 ここで少し海苔の養殖について話をしておきましょう。海苔は水温が下がるにつれ、生長します。種付けが行われるのが9月から。カキ殻に培養するのですが、水温が23度台になると、胞子が殻から飛び出し、それを海苔網に付着させるのです。これを我々は採苗と呼んでいます。

佐賀県西與賀 平松博之作肥前あさくさ

 採苗から約20日たつと、網は一枚張りに。この頃、有明海は海苔畑のようになるんですよ。一枚張りの網で育った海苔は秋芽と呼ばれ、15cm前後に成長する11月初めから1回目の摘み採りが行われます。秋芽は11月下旬まで3〜4回摘み採られ、乾海苔となります。それを我々のような業者が入札して、販売するんですよ。
 平松さんの海苔が素晴らしいのは種を育てる段階から行っている点。一般的には試験場で種を育て、それを漁師が買って網に付けるのですが、平松さんは「強いものを作ろうとすると、種から育てないとダメ」と言い、春にはカキ殻に自ら培養しているくらいです。だから「肥前あさくさ」が完成するには、ほぼ一年の月日を要するんですね。
 これだけ労力を要し、作られた海苔は値が高いのは当然で、全型10枚入りが1300円。つまり、通常の海苔(10枚入り350〜400円)のほぼ4倍するんですよ。高級品が10枚800円の相場なので、それと比較しても高いというのがわかりますよね。しかし、「肥前あさくさ」は一番摘みしか使用しておらず、旨みや香りは他に比べて抜群。特に甘みが特徴的ですね。これを食べた人は必ず「昔、味わった海苔だ」との感想を述べます。その言葉からも古き時代の良きものを再現していることがわかるでしょ。
 佐賀県の西與賀(にしおか)地区では、このアサクサノリ復活に力を注いでおり、今回紹介した商品には平松さんの名を付け、「佐賀県西與賀 平松博之作肥前あさくさ」というブランドで販売しています。

有明と瀬戸内が二大産地

 さて次は、海苔業界の状況を解説しましょう。海苔は大きく2つの産地に分けられ、生産されています。1つは「肥前あさくさ」も含まれる有明産。俗に言う「有明海苔」ですね。これは食い口の良さとはぎれの良さが特徴。しかし、このところ、温暖化などにより海の環境が悪化。そのため色がつかず、勢いが少し落ちています。
 もう1つの瀬戸内産は色が黒く、しっかりしているのが特徴で、色のある方を求める傾向からもこの頃はこちらの方が巻き返し気味に。
 海苔はかつては贈答品として使われており、中元や歳暮の時期には沢山売れたのですが、コンビニのおにぎりが売り出された頃から状況は一変、以降、海苔業者はどうしてもコンビニ主体に商品を展開しています。コンビニおにぎりの中でも有明産と瀬戸内産は用途に違いがあり、後から海苔を巻くタイプには有明産が、直巻きおにぎりには瀬戸内産が使われているんですよ。
 以前は出せば売れるというコンビニおにぎりでしたが、最近はヒット作もなく、そろそろ淘汰される時代に入ったのではないでしょうか。そのためか、生産者もいいものを作りたいとするタイプと、コンビニ向けに均一化したものを作ろうとするタイプに二分化してきました。さて、この後、どんな状況になるのかは専門家の私ですらわからないくらいです。
 話の最後は海苔を美味しく食べるコツを。最も美味しく食べるためには、海苔二枚を中表に重ね、両方のガサガサした方(海苔の裏側)を緑色になるまで焼くこと。焼きすぎると、風味が抜けてバリバリになるので注意を。炭を使うのがベストでしょうが、炭なんて家庭でないでしょうから、オーブントースターやオーブンレンジの使用をお薦めします。この方が火力が安定しているので失敗しないんですよ。
 いい海苔を焼くと、磯の香りがプ〜ンとし、何ともいいにおいが。これに温かいごはんがあれば、もう最高ですね。左党の人は、白ワインと焼き海苔なんていう組み合わせもいいですよ。私が推す「肥前あさくさ」で一杯というのもオツなもの。ぜひともこのスタイルがトレンドになってほしいですよね。

肥前あさくさのりを焼く写真

プロフィール

宮本 進(みやもと すすむ)

杉森史明さんが勤めるホーリョウ商事は海苔の専業メーカー。有明海や瀬戸内海で獲れた海苔を仕入れ、加工し、商品化するのが生業。小売は行っておらず、業務用に海苔を販売。大手持ち帰り寿司やスーパーの惣菜、寿司屋などで隠かに出合っているはず。しかし、どうしても欲しいという人には「ほうりょう本舗」なるwebサイトで販売を行っているそう。現在、同社ではいつもとは違った食べ方をしてもらおうと、料理研究家の石井裕加さんに依頼。「塩のリミルクスープ」や「塩のりいり豆富」などユニークなレシピを提案中。

杉森史明さん写真

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