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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

3月のゲスト 海津 澄子 ライター・フードコーディネーター 私が気になるもの 地元のお母さんの味

3月は、弊社サイト内のクッキング選手権でイエローエプロンズの一員として隔月ごとにレシピを発表している海津澄子さん。最先端の食に触れることも多い仕事を通して、最近注目しているのは「地元のお母さんの味」。どこがそんなに気になるのか、ご自身の「お母さんの味」と共に聞いてみました。

イカナゴは春の風物詩

 私が最近やけに気になるものといえば、地元のお母さんの味です。私は生まれも育ちも神戸、それも三ノ宮より西の方。なので、この時期のお母さんの味といえばどうしても「イカナゴ」になります。イカナゴはスズキ目イカナゴ科の魚で、瀬戸内では春を呼ぶ魚として知られています。明石海峡で操業するイカナゴ漁は、瀬戸内海の春の風物詩といわれるくらい。この時期にしか獲れないイカナゴの幼魚、体長3〜4cmほどのシンコを甘辛く固く煮たイカナゴの釘煮や、釜揚げはこの時期だけのものなのです。
 地元の漁協では、毎年2月の中旬にはイカナゴ漁の試験曳きを行って、会議でイカナゴのシンコ漁の解禁日を決めます。解禁日が決まるとニュースになったり、スーパーの店頭に告知が出ることも。知らない人が聞くと、「本当〜?!」と思うかもしれませんが、この時期、神戸西部地区や明石のお母さんたちは真剣なんです。それに漁協も、漁期や漁獲時間、漁船に許可を出すことで獲りすぎを防いで資源保護にも努めているわけです。
 イカナゴ漁が始まると、その日に揚げたシンコはすぐ、その日の昼には魚屋やスーパーの店頭に並び、釘煮にしようとする人たちが大勢買い求めます。だから、子どもの頃からこの時期になると、ご近所の家々からぷぅ〜んと醤油を炊いたいい香りが漂ってきたものです。それくらいどの家でもイカナゴの釘煮を作っているんです。
 口伝てで教えてもらった作り方で何年か作っているうちに、みんな段々と我が家なりのこだわりのポイントができてくるようで、それに伴って、最近は味にも色んなバリエーションがあるみたい。釘煮といいながら柔らかく煮上げたり、鷹の爪を入れてピリッとさせたり、各家庭の味があるようで、ほんのお味見程度を差し上げたりいただいたりするのも、この時期ならではです。
 ところで釘煮の名前の由来ですが、醤油とざら目糖で固く煮上げ、その姿がさび釘のようだということから付けられた名前のようですね。

いかなごの写真

地元の母親の味へと回帰

 近頃、LOHASやスローフードなんかが話題で、わざわざそのための本も出たりしていますよね。そういうものを読んでいてふと思ったんですが、お母さんの味、お袋の味って実はとってもLOHASでスローフードですよね。ちょっとホッとできるような、でもオシャレなレストランで食べる流行の料理もいいもんですが、自宅に戻った時に母が出してくれる、子どもの頃から食べつけた味。地元で採れた野菜を、捨てるところを出さないように、上手に使いまわした料理だったり、その季節、その季節の魚を、それに合ったように料理してあったりして。それこそ、味噌汁の具一つとっても、その地方、地方で違うでしょう。

いとこ煮の写真

 例えば、秋田出身の友達がいるんですが、その友達にご馳走してもらったいとこ煮。これは南瓜と小豆ともち米の煮物。その友達の家では、お父さんが作った南瓜、小豆、もち米だったりするんですよね。味も特別な出汁などは入ってないので、素材の味が生きてるんです。そして、きりたんぽの中に入れるキノコも「裏山から採ってきたんだよ」なんて。そういう田舎らしい故郷がないこちらとしては羨ましいですね。
 他には、九州出身の知人から教えてもらったのはトビウオ。トビウオが食べられるなんて、瀬戸内出身の人間は知らないわけですが、九州や山陰ではかなり普通な食べ物だと。地元ではアゴと呼ぶらしいですが、それで出汁を取ったりもするそうです。
 家が農家や漁業をしていなくても、地元のものを使って作ってくれていたものを、現在の風潮に照らすと、まごう事なき流行のLOHASや、スローフードに当てはまるんですよね。そうすると、これからは洋の食べ物だけではなく、和の食べ物にも回帰していくんじゃないでしょうか。特に、地方から出てきている人には手に入りにくい地元の食材を使って、そこには子どもの頃の味の記憶という強みもありますから、リピートも高いでしょう。

地元の味を守るために

 こういう仕事をしていると、色々な食事情も見えてきたりすることがあります。勿論、流行の店や、新しく流行ってる食べ物なども気になります。ただ、それはあくまでもこれまでの生活があったからだと思うんです。今の世の中を見ていると、朝ご飯を食べてない子どもや、遠足にコンビニのお弁当を持ってきたりすることもあるらしい。そうせざるを得ない環境があるんでしょうが、やはり、子どもには、できれば親が作ってあげたものを食べた記憶があって欲しいと思います。なので、あまり手をかけなくても料理を完成させられるものや、惣菜、子ども連れでも気軽に入ることのできるレストランなどが増えるといいのでしょう。親があまりに忙しく、子どもと一緒に食事すらできないのであれば、そういった状況を変えていくべきだな、なんて考えたりもします。
 それから、食の安全も大切ですよね。地産地消している間はそんなに多くの量は必要とされないのでしょうが、それが日本全国で求められる時、輸入や、大量生産などの弊害として食の安全がおろそかにされることがままあります。そういったことが起こらないように、生産者の立場を理解しつつ見守っていきたいです。
 今、私はサントリーのサイト内で行われている「クッキング選手権」イエロー・エプロンズの11人のうちの一人として、2ヶ月に1回、その時期に合わせた食材を使ったレシピを発表しています。今までに、キノコ、ハム、卵とレシピを出してきました。レシピを考える時は、海外の今まであまり知られていない料理を、食べやすくアレンジして紹介したいなと思うと同時に、母親の味、地元の味を、今風にちょっと手を加えて盛り込んでいけたらなと思っています。他の人たちのレシピも、それぞれの人たちの経験や出身地が垣間見えるものがあったりと、毎回、私自身が勉強にもなっています。
 まだまだ知らない料理や食材が日本の中だけでも一杯あると思うので、できるだけ行ったことのないところに足を伸ばして、色んなものを食べたいですね。

海津澄子さん写真

プロフィール

海津 澄子(かいづ すみこ)

学生時代に出版社で編集のアルバイトをし、字書きの仕事に目覚めるも、卒業と同時に元々興味のあった食の仕事として冷凍食品会社の製品開発部に就職。2年で外資系企業の研究所に転職。外資系企業を退職後アメリカで料理学校に通い、帰国後、ライター兼フードコーディネーターとして関西を中心に活躍。ゴマ油会社や、コーヒー会社の料理コンテストでも入賞の経験があり、レシピを考えるのは得意。現在弊社サイトの「クッキング選手権」イエロー・エプロンズの一員としてメニューを隔月に発表中。

海津澄子さん写真

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