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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

2月のゲスト 芦澤 竜一 芦澤竜一建築設計事務所 私が気になるもの 森のような空間を持つレストラン

2月のゲストは飲食店やホテルなど食空間を数多く創造する建築家の芦澤竜一さんです。建築家という観点からトレンド候補に挙げてくれたのが、“森のような空間を持つ店”。現在、地産地消やロハスが流行していますが、それらをもっと進化させたものが今回の提案です。近々ではないですが、将来には流行ってほしいと願う店の概要をじっくり聞いてみましょう。

癒しと生産が共存できる店

 飲食のシーンでこれから何が流行るかという問いかけに対して、私が用意した答えは「森のような空間を持つレストラン」です。こう表現したところでどんな店かはすぐにはわからないでしょうね。
 建築という面から飲食店をとらえてみると、一時期は癒し系と呼ばれる店が脚光を浴びた時期があったわけですが、それが今はロハスという言葉に言い代えられています。でも、このロハス的な店を見渡してみると、全面的に木を使っているからとか、壁材に有害物質を排除してあるとかいうのが多いんじゃないでしょうか。そういったものは表面的なこと。私はもっと内面的にもロハスを求める方がいいと思うんですがね。
 本来、ロハスとはサイクル的な意味があります。サイクルさせ、ものごとを全て持続させていかなければダメなんです。そこで今回のトレンド候補「森のような空間を持つ店」が登場してくるんですよ。現在、飲食店は食材を生産する場所と消費する場所が離れているのが一般的。これをぐぐっと接近させ、例えば飲食店の中で食材を作ってみてはどうだろうと考えたわけです。
 産地偽装問題が発覚し、スーパーでもようやく食材の産地を明記するようになりました。しかし、いくら産地名が書いてあったとしても消費者には、実際にどのような手法で作られているのかをイメージできにくいんじゃないでしょうか。それならいっそのこと、店で作れるものは作っちゃえというのが今回のトレンド候補です。生が誕生し、果てるまでを1軒の店で行う。まさに色んなものが棲む“森”のような店なんです。

森の写真

ビル1棟の中に生産地と消費地を作る

 私が参考にするのはオランダの建築家チーム・MVRDVが提案しているものです。オランダという国は海抜マイナス6mという地が多く、人が造ってできた土地に暮らしていると言われています。だからオランダ人は"世界は神が作ったのだが、オランダはオランダ人が創った"と表現しているくらい。つまり人間が自然をコントロールできる好例なんですよ。また、オランダ人は豚をよく食べる国民でもあります。養豚場は当然、郊外にある。消費マーケットである都心部まで郊外の食材を運ぶわけですが、渋滞が激しいのもオランダの問題点なんです。

プランティッドテーブル写真

 MVRDVは、なら都市の中で養豚すればと考えたわけです。例えば飲食店のあるビルの1フロアで養豚するといいんじゃないかと言うんですね。これは提案段階なので、まだ実施されてませんが、生産と消費を同じビルで行うという面白い考え方なんですよ。
 私が将来のモデル店として想像する店スタイルもMVRDVの提案しているようなもの。例えとして挙げるなら、ビル1棟を誰かが飲食店として経営するとします。フロアの何階かはレストランに使用。別のフロアでは養鶏をし、そこで産んだ卵を食材として使います。また、あるフロアでは野菜を作ってもいいですね。最近ではレタスを工場で栽培している例もありますからできない話じゃないかも。それに屋上を菜園にするのも面白いでしょ。そこで野菜を作り、産みたての卵を使って料理する。まさにビル1棟が森のような空間の役目を果たしているわけです。これは地産地消のもっと接近しているバージョンですね。こうすることで加工行程やどんな処理が施されているかわからないという点は少しは解消されるはずです。

まず手始めにプランティッドテーブルから

 上の写真のプランティッド・テーブルもその一貫から考案したもの。これは私が05年の東京デザイナーズウィークに出展したものですが、テーブルの真ん中に植物を植え、その周囲で人が集う。緑越しに人と人とが会話するのが目的なんです。例えば、この真ん中の土の部分にハーブを植えてみてはどうでしょう。そのハーブを採って洗い、皿の中や料理にも使用するんです。たいていの店では観賞用の花が置かれています。これを食材用にすると、一石二鳥ですよね。それに花瓶だと、邪魔になると、はずしてしまいますが、このスタイルならそれもできず、共存するしかないんですよ。プランティッドテーブルには初めはトクサを植えてあったんですが、事務所の窓際に置いていたらいつかしら勝手に飛んできて、今ではクローバーが成長しています。私はコレを進化させ、テーブルに皿がはめ込んであり、土部分のハーブを採って食する、
そんな光景をイメージしているんです。また、ビルの壁面にトマトが成っているっていうのもいいんじゃないでしょうか。
 都市ではこれまでデザインは消費するものとの考えが持たれていました。飽きられたから潰すのではなく、これからはデザインも持続させることが大切。だから冒頭で今のロハスを批判的に表現したんですよ。
 今、私はシカゴの公園を造っているです。ダウンタウンでは古い建物を潰して廃材を生んでいるんですが、住宅地に隣接したこの公園では廃材やペットボトルなどゴミと称されるものを再利用し、新たなものを生もうとしています。07年から着手し、最速でも5年はかかるんですが、完成すれば面白いコミュニティガーデンになると確信しています。
 今回挙げたトレンド候補は近々にではなく、ずっと先の話。でも店に植物を植えることで消費社会が二酸化炭素を光合成によって還元するって考えただけでもワクワクしてきます。これからは店もデザインや形だけじゃなく、生産と消費、人と自然の関係性を考えていくべきだと私は常々考えているんですがね。

シカゴの公園写真

プロフィール

芦澤竜一(あしざわりゅういち)

早大理工学部建築学科卒業後、7年間、安藤忠雄に師事。01年に安藤忠雄建築研究所を退社し、独立する。「VAJRA Forest」「CARIN…」「SHH」など数多くの作品を手がけ、プロダクト、インテリアから建築、ランドスケープデザインまで幅広い分野で活躍。飲食店も「炭でやくねん」「天府菜館」など多数、神戸・舞子にあるホテル「SETRE RESIDENCE]」も芦澤さんの手によるもので、潰れたホテルを見事に再生させたと評判。明石大橋と海と空が見えるチャペルは人気の的だ。JDCデザイン賞、グッドデザイン賞など国内外を問わず数多くの受賞歴がある。

芦澤竜一さん写真

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