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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

8月のゲスト 塩谷卓也 トラベルライター 私が気になるもの 魚醤

8月のゲストは、トラベルライターの塩谷卓也さん。食べることが大好きで、「見知らぬ土地で見知らぬ料理を頬張る瞬間が、旅の醍醐味」とか。最近注目しているのは、あのエスニック料理でおなじみの魚醤。自宅のキッチンに様々なボトルが並んでいるという「自称・魚醤評論家」の塩谷さんに、その理由を語ってもらいました。

東南アジアそれぞれの国に、それぞれの魚醤がある

 ベトナムのニョクマム、タイのナンプラー、フィリピンのパティス、カンボジアのトッ・クトライ、ラオスのナムパー、ミャンマーのンガピャーエー、中国の魚露(ユイルー)など、魚醤という調味料は、東南アジアのほとんどの国々にあります。製造方法はそれぞれ異なりますが、イワシなどの小魚や、魚のアラを塩漬けにして発酵させ、その上澄み液を用いるところが多いですね。
 ちなみに、魚醤の歴史は、遥か古代ローマ帝国の時代にまで遡ります。当時の地中海沿岸では「ガルム」という魚醤が作られていて、このイワシの塩漬けから、イタリアやスペインのアンチョビが生まれたという説もあります。これは余談ですが、中国には福建語で「鮭汁(コエチァプ)」と呼ばれる小魚の魚醤があって、それがあのケチャップのルーツと考えられているそうですよ。何だかロマンありますよね、魚醤って。
 さて、魚醤が苦手という人の大半は、あの独特の匂いがダメなんだと思いますが、実際には魚醤を生のまま舐めたりすることはほとんどないわけで、料理の隠し味として使う程度なら、匂いはまず気になりません。実際、魚醤は日本でもカレーやカップ麺、ウスターソースなどの隠し味として活躍していますし、もう「旨味調味料を使うよりも魚醤」という時代が、すぐそこまで来ているような気がします。  

しょっつる写真

旨味たっぷり液体調味料、使い方は自由自在

 東南アジア諸国の人々にとって、魚醤は煮物や炒めもの、蒸しもの、揚げもの、漬けもの、スープなど、あらゆる料理に利用できる万能調味料。例えば、世界三大スープのひとつに数えられるタイのトムヤムクンにもナンプラーは入っていますし、ベトナム料理なら、定番麺のフォーや生春巻きのタレなどにもニョクマムは欠かせません。こうした国々へ行くと、レストランのテーブルの上には必ず魚醤があり、唐辛子やニンニクを漬け込んでスパイシーにアレンジしたものもよく見かけます。

塩谷 卓也さん写真

 魚醤は、いわば「塩味、旨味、出汁」という3つの役割を果たしていると思うんです。原料となるイワシなどの小魚のタンパク質が発酵によって分解されることで、旨味成分のグルタミン酸やイノシン酸が作られます。本来の魚の風味も出汁のように残っていますから、いわば昆布と鰹節がたっぷり詰まった液体調味料みたいなもの。だからこそ料理にほんの少しプラスするだけで、驚くほど味に深みが出るんです。
 我が家では、調味料ラックの醤油の隣が、ナンプラーやしょっつるなど国内外の魚醤ボトルの定位置。塩分が濃い目なので、それだけ気を付けて、あとは冷や奴やおひたし、納豆、ゴーヤチャンプル、野菜の煮物、ドレッシングなど、どんどん積極的に使っています。チヂミやチゲ鍋などの韓国系にもピッタリだし、パスタやピッツァの時はアンチョビの代わりに使えます。オリーブオイルやバジルとの相性も抜群ですよ。

鮎魚醤をはじめ魅力的な魚醤が続々と登場中

 さて、僕は「次のトレンドは魚醤!」と信じているわけですが、そう思うようになったきっかけは、実はナンプラーでもニョクマムでもなく、メイドインジャパンの魚醤なんです。日本の伝統的な三大魚醤といえば、秋田のしょっつる(ハタハタ)、能登のいしり(イカの内臓)などがあります。それぞれハタハタ、イカの内臓を原料に、昔ながらの製法で生産されていますが、その一方で、地酒や地ビールならぬ“地魚醤”を作ろうぜ、みたいな流れが、北から南まで全国各地で生まれているんですよ。
 北海道では、ホッケやサンマ、帆立、秋鮭などを使った郷土色豊かな魚醤が話題を呼んでいますし、兵庫にはトビウオ、福井の若狭にはウニや小鯛、静岡と高知にはカツオの魚醤もあります。大分県日田市にある味噌醤油の老舗醸造元「原次郎左衛門」の15代目が4年の歳月をかけて造り上げたという鮎の魚醤もそのひとつ。おそらく、淡水魚から作られた魚醤なんて、世界でもこれだけでしょうね。
 この鮎魚醤を友人からもらった時に、まずは炊きたての白飯にそのままかけてみたんです。ググッと凝縮されたまろやかな旨味に感動して、思わずおかわりしてしまいました。それまでは、チャーハンや塩焼きそばを作る時に、秋田のしょっつるを使っていたんですけど、これを入手してからはもう鮎一筋。卵と刻みネギと鮎魚醤だけで作ったチャーハンや、生のクレソンとナッツ類、カリカリに揚げた乾燥わかめ、鮎魚醤を混ぜ込んだハーブライスは、まさに絶品です。
 これから先、まだまだ美味しい地魚醤が出てくると思います。みなさんもぜひ好みの魚醤を見つけて、気軽に使ってみてはいかがでしょうか。

鮎魚醤と料理写真

プロフィール

塩谷 卓也(しおや たくや)

東京生まれ、神奈川育ち。20代初めから海外旅行情報誌やガイドブックのライター&カメラマンとして世界各国を取材。その一方で、国内の市場、酒蔵、伝統工芸、郷土料理、農漁業などをテーマに撮って書いた旅ルポを月刊誌などに連載。これまでに訪れた国はラテンを中心に50以上、一番長い旅は2年間、一番遠い場所は南極。また、好きなデスティネーションはラテン、沖縄、離島だそうだ。著書に「メキシコ・中米のけぞり旅行記」があり、ブログの「湘南番外地」も好評。

塩谷 卓也さん写真

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