2026年10月30日
#1040 安田 昂平 『背中で見せられるような男』
新人として昨シーズン8試合に出場し3トライを挙げた安田選手。聞けば聞くほどやりたいことが出てきて、選手として、人間として、たくさんの可能性を感じるインタビューとなりました。(取材日:2026年8月上旬)

◆始まりは良かった
――昨年シーズン・デビュー戦でファースト・タッチ、ファースト・トライ。そのデビューも含め、昨シーズンの出来はどうでしたか?
良い形でデビュー戦を決められて、そこから立て続けに試合に出られていたんですけれど、メンバー争いの中で自分のパフォーマンスを高いままキープできなかったので、メンバーから外されてしまいました。最後の3位決定戦には出られましたが、プレーオフではその試合以外出られなかったので、そういう部分では始まりは良かったですけれど、終わりでは落ちたというか、自分の中で一貫性のあるプレーが出来なかったデビューのシーズンだったかなと思います。
――デビュー戦後も数試合続けて出られた時に、意識して取り組んでいたことは?
ちょうどそのタイミングで14番でプレーしていた晟也さん(尾崎)が怪我をして僕が出たんですけれど、フレッシュなプレーでハイボールに積極的に競りに行くとか、ちょっとしたプレーの質を上げられたことが、その時は試合に出られたポイントだと思います。
――その後メンバーから外れるようになったのは、自分では何が原因だったと思いますか?
初めの頃は「なぜ出られないのかな」と思っていたんですけれど、いろいろとレビューをもらっていくうちに、納得しました。細かいミスがあったり、ちょっと遠慮気味になっていた部分もありました。ブルーレヴズ戦は後半から出たんですけれど、なかなかプレーの質が上がらなくて、自分の中で後半から出るというのが難しいシチュエーションでした。復帰の時に良いプレーが出来なかったことが、課題だと思いますし、そういうところが足りていなかったと思います。
――第13節ワイルドナイツ戦には出場しましたね
ワイルドナイツ戦は2回くらいノックフォワードをしてしまい、その後に出られなくなったのは自分の中でも「そうですよね」って納得していました(笑)。

◆課題を活かせた
――そのノックフォワードの原因は何だと思いますか?
ボールを見ていなくて、先に裏のスペースを見てしまっていました。確かケイノ(サム・ケイン)からのパスだったと思いますが、全く見ずに取ろうとしてしまい、それがノックフォワードに繋がりました。
――スペースを見なければいけないという意識が強くあったんですね?
ありました。プレシーズンの時のワイルドナイツ戦で、コスさん(小野晃征/前ヘッドコーチ)から「ボールを持ってまっすぐ蹴れたら良いね」とアドバイスをもらっていました。それでプレシーズン以来のワイルドナイツ戦だったので、そういう部分も加味して頑張ろうと思っていました。自分のところにボールが来たら、一度裏のスペースを見ようと意識していました。それで先に裏のスペースを意識してしまいました。
――そこから学んだことは?
その次に出場した試合が3位決定戦のワイルドナイツ戦です。3位決定戦に臨む前は嫌な形で終わっていたので、しっかり修正して自分が出来る最大限のプレーをやろうと思っていました。第13節で得た課題を、最後の3位決定戦では活かせたんじゃないかなと思います。
――3位決定戦の出来はどうでしたか?
自分の中ではめちゃくちゃ良かったと思っています。トライを取れていないので、そこは何とも言えませんが、総合的に見たらかなり良かったと思っています。
――そうすると最後は昇って終えられましたか?
はい。良い形で終われたと思っています。

◆感覚でプレーするタイプ
――改めて2025-26シーズンを総括すると、どんなシーズンでしたか?
3位決定戦を入れて8試合に出場しましたが、良い経験も出来ましたし苦い経験も出来たので、デビューのシーズンとしては、何て言えばいいんですかね。リーグワンのスタンダードを肌で感じられたシーズンだったと思います。
――リーグワンのスタンダードを、肌でどう感じましたか?
通用すると思ったことが半分、まだ課題があるなと思ったことが半分ですかね。ランやハイボールキャッチは通用すると感じましたが、身体の強さだったり、一度ミスした後の気持ちの持ちようだったりは、もう少し場数を踏んでトレーニングしなければいけないと感じました。
――メンタルの部分はどう向上させていこうと思っていますか?
僕は試合中、あまり考えてプレーするタイプではなくて、感覚でプレーするタイプです。メンタルを向上させることは出来ると思いますが、どうすればいいんですかね(笑)。落ち込むというか、ミスをしても次でやってやろうという気持ちにはなっているんですが、冷静じゃなくなっている感じはありますね。落ち込むというよりもミスで熱くなってしまって、周りが見えなくなる感じですかね。
――次でやってやろうとなった時に集中力は上がりませんか?
集中力はアップするんですけれど、ラグビーはひとつに集中してしまうと終わってしまう気がして、僕は熱くなるとひとつのことに集中しすぎてしまうんだと思います。
やっぱりラグビーは役割がひとりひとり違うので、ひとりが1点だけに集中してしまうと、その人の役割が欠けることになって、そうなるとバラバラになってしまいます。1点だけに集中してしまうと、周りの声も聞こえなくなってしまうと思います。

◆今までやってきたことを出そう
――自分がそういうタイプだということを自覚したのはいつ頃ですか?
ずっと空手をやっていたんですが、空手は1対1なので、1点に集中しても大丈夫なんです。空手では審判への印象を悪くしないために、打たれたらすぐに打ち返して、相手の攻撃は効いていないというアピールをするんです。その影響かわかりませんが、空手の時からそうで、空手の試合では、試合中のことはあまり覚えていません。
ラグビーは個人スポーツじゃなく団体スポーツなので、サインもありますし周りの声を聞いて動かなければいけない場面もあるので、1点に集中してしまうと、周りがサポートできなかったり、自己中心的なプレーをしてしまって、チームとして積み上げてきたものが崩れてしまうと思います。
――そこは空手と同じではないやり方を、と意識しているんですか?
それをデビューのシーズンに気づけたかなと。今までは、周りのレベルも高かったですけれど、それなりに出来ていて、ただリーグワンになると一気にレベルが上がるので、コミュニケーションも倍以上取らなければいけませんし、1点に集中していてはダメだなと。
――改善策は?
しっかりと周りの声を聞いて、まずはミスをしないことが一番ですけれど、ミスをした場合は周りの声をしっかりと聞いて、「なんかやったろう」という一発逆転を狙うようなメンタルじゃなくて、今までやってきたことを出そうというメンタルに切り替えることが大事だと思います。
――チームがピンチの時に一発逆転を狙って成功すれば良いですよね
それはケースバイケースなんじゃないですかね(笑)。いつも「やったろう」だけではなくて、「やってきたものを出そう」という気持ちと、両方を持てたら良いのかなと。
――「やってきたものを出そう」という気持ちを持つと、冷静になれるんですね
そうですね。練習している時を思い出して、冷静になれると思います。何か考えることがあると、自分の気持ちを鎮静化できると思います。
――それを練習から目指しているんですね
そうですね。練習でも試合をイメージして取り組もうと思っています。それが出来るように努力します。

◆男を磨きたい
――以前伺った「強くなりたい」という気持ちはどこから来ているんですか?
僕は小さい頃から4つ違いの兄貴にボコボコにされていて、両親から「ボコボコにされてばかりで男として良くないから、空手でもやりなさい」と言われて空手を始めました。そこから負けたくないという思いが出てきたんだと思います。
――お兄さんを超えたと感じた時はありますか?
いや、まぁ今だと喧嘩をしたら、僕はラグビーをやっていますし、勝てるんでしょうけれど、生物的に届かないという感覚があります。
――そこに届かないからずっと強くなりたいという気持ちがあるわけですか?
そうですね。ラグビーを辞めても筋トレをして男を磨きたいと思いますし、男を磨ける場面があれば進んでやります(笑)。
――もし弟がいれば違っていたかもしれないですね
そうかもしれないですね。僕は先輩に可愛がってもらえるタイプですし、先輩と一緒にいる方が好きでした。年下と何かをやるというイメージが全く湧かないですね。
――ラグビー選手としても強くなっている実感はありますか?
強くなっているというか、身体の面の強い、ラグビーの強いじゃなくて、人間的な強さがラグビーは培われると思います。格闘技の面もあるからかもしれませんが、仲間のために身体を張るので、そういう部分は男として必要な部分なんじゃないかなと思います。そういう部分は、ラグビーで磨かれたんじゃないかなと思います。

◆ストレスを感じていても筋肉痛を優先して感じる
――外国人選手も多いので、パワーという面での強さはどうですか?
今の筋トレに勤しんでいるんですけれど、それなりに身体も強くなってきていますし、ラグビーの世界に入るとまだ華奢な方かもしれませんが、自分としては仕上がってきているのかなと思っています。現役中はラグビーに支障が出ないくらいで、大きくなりたいですよ。
僕らは高校生の時からずっと筋トレをしてきていて、1~2週間くらい筋トレをしないと気持ち悪くなってしまいます。そうなると、ラグビーを辞めても、ずっと筋トレは続けるんじゃないかなと思います。これだけ培ってきたものが一気になくなるのは、怖いですね。あと何かで見ましたが、ストレスより筋トレの筋肉痛の方が優先されるみたいで、不安やストレスを感じていても筋肉痛の方を優先して感じるそうです。だからストレスを溜めないためにも、筋トレはした方が良いかなと思います。
――ストレスは溜まる方ですか?
いや、溜まらないです。ストレスが溜まっているのかもしれないですけれど、感じないですね。自分の中でストレスを発散させる方法もわかっているつもりです。
――ラグビーに影響が出ないくらいで身体を大きくすることについて、どこでバランスを取っているんですか?
それは培ってきた経験です。まだ大丈夫だと思います。この前もしっかりと走りましたし、走れているうちは大丈夫かなと。
――他に課題は?
同じポジションにジェームス・ロウという素晴らしい選手が入ってくるので、フィジカルですね。スピードメニューもやっているので、速くなりたいです。ラグビースキルやIQも、もちろん高めていかなければいけないですね。

◆開幕戦で先発出場
――次のシーズンでの目標は?
先発で出ることはもちろんですが、昨シーズンはプレシーズンではフルで試合に出させてもらっていたんですが、リーグワンの開幕戦には出られなくて、それが自分の中でいちばん腑に落ちなかったところです。次のシーズンでは開幕戦で先発出場することが、自分の中での一番の目標です。そして優勝したいですね。僕はサンゴリアスというこのチームが好きですし、そこにいる人も好きなので、このチームで優勝したいと思っています。
――一貫性あるパフォーマンスについてはどうですか?
開幕戦で良いスタートが切れたら、良い波に乗れると思うので、まずはスタートがターゲットです。
――次のシーズンで注目して欲しい自分のポイントを教えてください
ランニングとハイボールが持ち味だと思っているので、そこを引き続き見てもらいたいです。そしてサンゴリアスは上位には食い込んでいるけれど、決勝の舞台や優勝が遠のいてしまっていて、沢木監督になった新体制で王座奪還を泥臭く狙いに行くのがサンゴリアスの魅力だと思うので、そういう部分を見て欲しいと思います。それで見ている人に勇気を感じてもらえるようなプレーを、僕自身もしたいと思っています。
――もう少し先の目標はありますか?
ラグビーを引退した先は、もちろん筋トレはしますが(笑)、慕われるような人間になりたいと思っています。僕も良い先輩のことを慕っているので、その人がロールモデルじゃないですけれど、そうやって下の人から慕われるような人間になりたいですね。
――先輩に可愛がられるタイプとのことなので、それは全く新しい一面ですね
私生活では先輩と仲が良いんですが、先輩である以上は後輩にカッコつけないといけないと思っています。高校生までは後輩が苦手で、大学では後輩も同じ寮に住んでいたので、嫌でも絡まなければいけませんでした。そうやって仲良くなって一緒にご飯などにも行きましたが、私生活ではどちらかと言うと先輩や同期といることが多かったですね。けれど、やっぱり背中で見せられるような男になりたいという思いがあって、それが僕が先輩を好きになった理由でもあるので、僕もその人たちように、後輩に憧れられるような存在になりたいと思っています。
――さらに将来にやりたいことは?
将来やりたいことは、洋服の仕事をしたいということと、サントリーの仕事としては業務用の営業で、バーや居酒屋によく行かせてもらうので、そういうところで話を聞いていると、バーを経営してみたいなと思ったりしています。
――洋服の仕事とは?
大学の時とから型紙から作って、自分で洋服を作っていました。自分で作ったジャケットを、着なくなったら友だちにあげたりしていました。売るためには表示タグなど全てつけなければいけないとか品質をクリアしなければいけないということがあるので、売ることは出来なかったんですが、自分で着たり友だちにあげたりしていました。今はなかなか時間がなくて作ることはしていません。
――なぜ洋服を作ることが好きだったんですか?
母方の祖父母がファッション関係の仕事をしていて、祖父は洋服を百貨店などに売り込みに行く仕事で、祖母は子ども服のデザイナーでした。家に古い教科書とか本がたくさんあって、それを読んで独学で勉強して、洋服を作るようになりました。ですので将来は服飾の学校に通おうかと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]