2026年10月 2日
#1036 杉浦 皓亮 『スクラムが好き』
強みも好きなプレーもスクラムと言う杉浦選手。新人らしい無欲なコメントの中に、好きなものへの情熱とプライドが見えてくる気がします。(取材日:2026年7月下旬)

◆ターニングポイント
――学生時代の記事を読んでみると、3番へのこだわりや愛着を感じますが、いかがですか?
記事にはいろいろと書いてありますが、僕としては特段こだわりというものはあまりなくて(笑)。これまで3番としてやってきていますし、3番をやり始めたのが高校2年生の時で、そこからずっとやってきたので、愛着はあると思います。3番をやり始めた時が、ターニングポイントかなと思っています。
――それはどういうターニングポイントでしたか?
中学校ではセンターをやっていたんですけれど、高校になる時にバックスじゃなくてフォワードに行きたいという思いがありました。特段、足が速かったわけではないので、これからバックスでは厳しいだろうと思っていました。高校1年でナンバー8をやって、どんどん体重も増えていき、フロントローをやりたいと思い始めて、高校1年の冬に1ヶ月くらい怪我をしてその復帰の際に、3番をやってみようとなりました。
――もともと身体が大きくなりやすいんですか?
食べることが好きだったので、制限をかけなければ、いくらでも太ってしまう体質だと思います。
――体重が増えても出来るポジションの方がやりやすかったんでしょうか?
そうですね。当時の高校の監督にフロントローになるについて、当時は動けるプロップが求められてない時代でしたが、その中でも動いているふうなプレーをしろと(笑)。嫌な言い方ですけれど、効率的な動き方、このポジションの中でどの役割を任されているのかをしっかり理解しろと。見られ方としては、良いように見られるようにプレーをしろと言われました。
――見られ方と中身は違うということですか?
自分の解釈の中では、それほど走れていなかったので、その中でも試合を見ている人から穴になっていないとか、そういうふうに見られろ、と解釈しました。正直、プロップってディフェンスでも穴になりがちなので、本来であれば穴にならないように動かなければいけませんが、僕はそんなに動けるタイプじゃなかったので、上手く自分に合った形でコミットできるのかということも含めてだと思いました。
◆強みはスクラム
――実際にどうプレーしたんですか?
細かい部分で言うと、とにかくラック際のポジションにつく、ということをやっていました。外にいると抜かれてしまうので、ディフェンスではそこだけ考えていました。
――そこで学んだことはポジショニングですか?
ディフェンスはそうかもしれないですね。高校、大学とラグビーをやってきて、特段パワーがあったりスピードがあるということはなかったんですが、どこで活躍できるかと考えたら、チームの理解だったり、何を求められていて何をしなければいけないのかをちゃんと自分の中で考えて行動するというところが、高校でも大学でも出来ていたのかなと思っています。
――元バックスだと、スピードもあったのでは?
バックスの時もスピードはありませんでした(笑)。ただバックスをやっていたこともあるので、ハンドリングは上手く出来ているのかなと思うので、そこはバックスをやっていて良かったと思いますね。
――U20日本代表やU23日本代表にも呼ばれていますが、どこを評価してもらって呼ばれたと思いますか?
自分の中で運もあったかなと思っていて、いろいろなめぐり合わせがあって、U20でもU23でも呼ばれたのかなと思います。どちらの時も怪我人などが出て追加で呼ばれたりしたので、そういう部分もありながらも、自分の強みはスクラムだと思っていますし、その次にパフォーマンスに波がないので、そこを評価してもらったのかなと思います。なぜ選ばれたかというよりも、選ばれたからには目の前のことを頑張ろう、という気持ちでやっていました。
――もともとプレーに波のない選手だったんですか?
そうですね。
◆努力が実った時
――HPに、ラグビーをやっていて良かったことに対して、辛いことを乗り越えたあとの達成感が気持ちいと載っていますが、辛いことをいとわないという気持ちがあるんですか?
それはちょっと違うかもしれません。恥ずかしい話、僕は誘惑とかに弱くて、苦手なことから逃げたりすることが多いんです。その中でもやったことに対して、その努力が実った時にはそれだけの嬉しさや喜びがあります。特にスクラムではそれがありました。
――実際にどういうことをやると安定感に繋がるんですか?
そこを深掘りされると、なかなか答えることが難しいんですけれど、スクラムにおいては大学の時に積み重ねてきたものが、安定感に繋がっているのかなと思います。
――技術的なことということですか?
それもあると思います。メンタル面で言うと何とも言えない部分があるので、ちょっと話すのが難しいですね。良くも悪くも熱くなれないというか。
――冷静なんですね
いや、冷静ともちょっと違って、別にクールなタイプでもないんです。
――普段はあまり怒ったりはしませんか?
しないですね。
――感情を爆発させることもありませんか?
そういうタイプでもないですね。
――優しくて大人しい感じですか?
どうですかね(笑)。だから、カッキーさん(垣永真之介)やTKさん(竹内柊平)みたいに叫ぶことは、大学の時に意図的に盛り上げるとか相手にプレッシャーをかける意味でもと言われたんですが、なかなか出来ていなかったですね(笑)。
――それが良い方向に出ていて安定感があるということですよね?
だと思います。大事な試合の前に緊張するとか、プレー中のミスを引きずるとかも、ないですね。
◆繋がっている
――いま感じているラグビーの魅力は何ですか?
ラグビーをやってきた人生の中で、いちばんやっていて良かったと感じることは、やっぱり繋がりが増えたことです。U20、U23でも繋がりが増えましたし、ラグビーをやっていると「そこも繋がっているの?」って思うことがあるので、いまサンゴリアスにいられていることも、その繋がりがあったからだと思うので、感謝をしています。
――いまの課題は何ですか?
まずこのレベルでやるためには、フィットネスとフィジカルが足りていないと痛感しています。そこが改善されない限りは、自分の強みである安定感も強みとは言えないので、そこが課題だと感じています。
――そこを改善するために取り組んでいることはありますか?
そこが苦手なところで、自分からやることが苦手なので、そこは考えています。
――見えないところで努力をしていることもありますか?
それが出来るようになれたら良いなと思いながら、自分には出来ないのかなとも思ってしまうので(笑)、行動することが苦手なんです。
――引っ張ってもらった方が良いんですね
そうですね。今までは、そういう指導者や仲間に恵まれてきたんだと思います。
――どう改善していこうと考えていますか?
今のところはまだ考えられていないですね(笑)。フィットネスなども、まずは自分からどうすれば良いのかを聞きに行って、その後の行動をどうするかを決めなければいけないと思います。
――次のシーズンでどうするかというよりも、もう少し長い目で見て取り組んでいるんですか?
すぐに試合に出ようとは、なかなか思えていないですし、でもラグビーは絶対に怪我があるので、そのチャンスをいつでも掴みに行けるように、準備をしていたいとは思っています。

◆8対8で勝った時
――怪我には強い方ですか?
高校時代の1ヶ月以外はずっとラグビーをしているので、強い方だと思います。
――スクラムは好きですか?
好きです。
――どこが好きですか?
単純にペナルティーを取ったり、押して勝った時に気持ちが良いからですかね。3番側は押していても、スクラムの落ち方によってはペナルティーを取られたりするので、それだと喜べません。8対8で勝った時が嬉しいですね。
――自分だけじゃなく他の7人も大事になりますよね
大事ですね。フロントローは特にセカンドローやバックローと密にコミュニケーションを取ることが大事だと思っていて、選手それぞれに癖があるので、そこはとにかくコミュニケーションを取って修正していくことが大事だと思っています。
――いま、目指しているところのどの辺まで来ていますか?
ぜんぜん、半分も行っていないと思います(笑)。ここからですね。
――そこに対して、なにくそという気持ちはあるんですか?
そこが人よりは、少ないのかもしれないですね。
◆県内で1位になって花園に行く
――出身はどちらですか?
愛知県です。
――のんびりと育てられたんですか?
高校はのんびりでしたね(笑)。生まれが結構、田舎の方で、岡崎の近くのところでした。中学から名古屋の方に通っていて、勉強もしながらラグビーをやっていました。だから中学、高校とラグビーガチガチという感じではありませんでした。
――ラグビー以外にスポーツはやっていましたか?
小学校の時はドッヂボールをやっていました。ドッヂボールは楽しかったですね。
――投げることが得意なんですか?
結構、肩は強かったと思います。
――野球のキャッチャーも似合いそうですね
中学の時にちょっと変わったスポーツをやりたいと思っていて、それで中学受験をする時にその中学に何の部活があるかを調べたら、ラグビーや水球がありました。そのふたつに体験入部をして、ラグビーの方が楽しかったの、でラグビー部に入りました。レベルの高いところでやりたい、という思いもあったと思います。
――高校でのラグビーの面白さは何でしたか?
高校の時はずっと「打倒、春日丘」でやっていたので、高校1年の時はたしか準決勝で西陵高校に負けて、その次の年は100回記念大会で2校出られたんですが、西陵に負けてしまったので、とにかく県内で1位になって花園に行くということを目標にやっていました。
◆チャンスが来る
――ラグビーをずっと続けていこうと思ったのはいつ頃ですか?
U20の時ですかね。U20日本代表に選ばれて、そこで試合に出ながら考え始めました。
――日本代表を目指しますか?
目指したいとは考えながらも、今の毎日に大変と感じ、迷いながらやっている感じです。
――何に迷っていますか?
もちろんやるからには目指したいんですが、そんなに甘い世界ではありませんし、数年のうちには自分の中で区切りをつけてやらなければいけないと思っています。
――中村亮土選手が以前、「ポンっとメンバーに選ばれた時に結果を出すということ。いつになるかわかりませんが、いつか来るチャンスをモノにできるかできないか。出られない時期やくすぶっている時期を大事にしながら、そこに向けて自分の準備をしていく」と言っていました。それについてはどう思いますか?
その通りだと思っています。大学の時がそんな感じでした。1年生の時は試合に出られるような感じではなくて、一度ジュニア戦ではリザーブに選んでもらいましたが、それ以外は練習の時も上のチームと下のチームと半分くらいに分けられていて、ほとんど上のチームでは練習が出来ていませんでした。2年生の時に春に急に1本目の人が怪我をして、3番を着て試合をすることになって、本当にチャンスが来るんだと思いました。
――それをモノにしたんですよね
大学の時はそうでした。僕の場合はスクラムが好きということもあったので、努力しながらやっていたところがありました。そこをフォワードのコーチが見ていてくれたのか、それで選出してもらったのかなと思っています。
◆スクラムには完成形がない
――比較的、自分のことを客観的に見ているように感じますが、遠い将来、目指していることはありますか?
そこまで考えたことがなかったですね。今はサントリーでの仕事もやらせてもらっている中で、まだあまり任されていない部分はありますが、その中でやりがいも感じているので、プロを考えていないということもありますが、将来もサントリーで仕事をしているのかなとぼんやりながら考えていますね。
――仕事で面白いと感じるところはどこですか?
そこもラグビーと似ているところで、今は業務用の営業をやっている中で、やっぱり人と人との繋がりが大事だと、研修や先輩から聞くので、そこを大事に出来るような人になっていきたいと思っています。
――人は好きですか?
浅く広くはあまり好きではないんですが、狭く深い付き合いが好きですね。
――次のシーズンの目標は?
2025-26シーズンが終わって3番の選手がかなり抜けてしまったので、絶対にチャンスは来ると思っているので、それに向けて全力で準備することです。
――ファンの皆さんに見ていて欲しいところを教えてください
スクラムで押した時は、やっぱり自分も高ぶりますし、観客の声援で高ぶる部分もあります。自分が出ていなくてもスクラムは燃えるところなので、スクラムでのファンの皆さんの声援を期待しています(笑)。
――やはりラグビーはスクラムですか?
やっぱりそうですね。
――それはなぜですか?
根拠はないんですが、試合の流れを変えるのはスクラムかなと思います。フォワードとしては、ちょっとスクラムで負けていると思っているだけで、毎回のセットプレーにそれが出ると思っています。メンタル的にも優位に立つ上では大事だと、自分の中ではそう思っています。
――スクラムを学ぶ上でゴールはないんですか?
僕の考えなんですが、これが出来たらゴールというものはなく、スクラムには完成形がないと思っています。常に良くなる部分があるのがスクラムだと思うので、そこでもより良い自分を追求していこうと思っています。人によって組み方も違いますし、そういうところが面白いんだと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]