「大学の同級生コンビ」
まさに同期の桜!?桜が咲き誇る、4月上旬、
箕面トレーニングセンターでインタビューを実施。仲良く肩を組む阿部選手(左)と酒井選手(右)。
1981年、茨城と福島、お隣同士の県で生まれた2人のバレーボーラー。中学3年の時に出会い、いつしか交流を深めた。そして共に東海大学へ。その後、阿部裕太選手は東レアローズに、酒井大祐選手はJTサンダーズに入団。時を経て、2015年秋から再びチームメイトになった同級生同士のトークをお届け。大学時代のエピソードや2014/15V・プレミアリーグ決勝戦での秘話などを語り尽くします!
初めての出会いは中学3年
初めて会ったのはいつですか?
酒井 |
中学3年の時の、さわやか杯(全国都道府県対抗中学バレーボール大会のこと。現、JOCジュニアオリンピックカップ)じゃない? |
阿部 |
合宿だよね。 |
酒井 |
話しはしなかったけど、阿部のことは知っていた。デカイセッターがいるなって。 |
阿部選手は酒井選手のことを知っていましたか?
阿部 |
僕は知らない。 |
酒井 |
だろうね(笑)。めっちゃ小さかったし、弱かったし。 |
阿部選手
阿部選手、記憶力に難あり!?
阿部選手は茨城県出身、酒井選手は福島県出身。お隣の県に住んでいたんですよね。高校時代に接点はなかったんですか?
酒井 |
練習試合はよくしていたよね。 |
阿部 |
でも1年の時は喋っていない。 |
酒井 |
いつから話すようになったんだろう。 |
阿部 |
うーん…(熟考してから)、高校時代、キャプテンだったよね? |
酒井 |
キャプテンではない! |
阿部 |
だよねー。先に説明しておきますけど、僕、基本的に記憶力に自信がない(キッパリ)!なので、過去の話は酒井の言っていることが全面的に正しい! |
そうなんですね(笑)。阿部選手が記憶力に自信がないとのことなので、酒井選手、仲良くなったきっかけを教えてください。
酒井 |
僕もきっかけは覚えていないですね。しょっちゅう練習試合で顔を合わせていて、自然と話すようになったのかな。高校3年の時には、携帯だか、ピッチだかの番号を知っていました。 |
阿部 |
大学受験の時は一緒に行ったよね。 |
酒井 |
そう、電車で。何号車に乗るからと話をして。 |
阿部 |
僕、方向に弱いから、酒井の存在は心強かった! |
戦力2倍で、いざ大学受験の会場へ!
方向音痴宣言ですか(笑)。
阿部 |
高校生の時はまだ方向音痴だという自覚はなかったのですが、徐々に分かってきました(笑)。選手やスタッフに、チームで一番方向音痴は誰?と聞いてもらったら、僕の名前が出ると思いますよ。つい先日も、梅田で迷ってしまって、交番で警察官に道を聞いたりして大変でした。 |
じゃあ、大学受験の時は酒井選手がいて良かったですね!
酒井 |
いやいや、僕もカッペだし(笑)。東京方面へ行くことがないから、案内板を見ながら、あっちじゃね?こっちじゃね?という感じだったと思いますよ。 |
阿部 |
案内板を見ても、僕はよく分かんないし(笑)。酒井と僕とで、カッペ同士、単純に戦力が2倍になったよ。 |
ちなみに酒井選手は、方向感覚は?
酒井 |
僕は方向音痴ではありません!結構、できる子です(笑)。 |
酒井選手
大学時代は、ジャージと共に。そして社会人でも?
阿部選手は大学2年の時に全日本に召集されたんですよね。大学時代は、さぞかしモテたんじゃないですか?
阿部 |
モテないですよ。 |
酒井 |
でも1年の時より練習を見学する人の数は増えていたと思う。 |
阿部 |
その頃のファンの方が今でも応援してくださっています。それはありがたいですね。だけど、ほんと、大学時代、モテるとか考えたことがなかった。 |
酒井 |
毎日、ジャージだもんね(笑)。 |
阿部 |
そう、大学時代、服なんて買ったことがないし! |
酒井 |
さすがに僕は買ったことあるし(笑)!だけど、私服で学校に行ったことないな。3年になったら、バレー部のジャージを着てもいいというルールがあって、それまでは、先輩にもらった古いスウェットとか、なんかよく分かんないジャージを着ていたよね。 |
阿部 |
みんな、ボロボロのジャージやスウェットを着ていたな(笑)。 |
酒井 |
そんなヤツらがモテるわけないよね(笑)。 |
大学時代は、常にジャージだったと。
阿部 |
そうですね。あ、だけど、僕、社会人になってからも、そんなに変わらないかも。出社する時はスーツだけど、体育館の往復はジャージだし、休みの日も家から出なければジャージ。服とか買わない。 |
ええ~っ!
酒井 |
阿部と違って、僕は私服も着るし、買うし(笑)。 |
大学時代から「お母さん」!?
普通はそうですよね(笑)。ところで、大学時代、お互いに関することで一番の思い出は?阿部選手は記憶がないかもしれないですが(笑)。
阿部 |
大丈夫です!大学時代はそこそこ覚えていますから(笑)。やっぱり大学4年のインカレ優勝ですね。酒井のディグから逆転したという伝説の一戦。それが一番印象に残っています。それと、プライベートでは、僕が大学を卒業できたのは、酒井のお陰。全日本の遠征や合宿で授業に出席できないことが多かったので、酒井がこういうのをやっておいた方がいいよと教えてくれたり、ノートを貸してくれたり、いろいろと協力してくれて。酒井には感謝しかない。酒井は同期の中で一番しっかりしていたんですよね。みんな、酒井に頼っていた。 |
酒井選手は、大学時代からチームの「お母さん」だったんですね(※2015年度全日本メンバーの中で、酒井選手は「お母さん」というニックネームがあったとか)。
阿部 |
そう。しっかりしていて、面倒見が良くて。 |
酒井 |
自覚はないけどね(笑)。 |
時には見つめ合ったり!
「俺について来い!」
では、酒井選手は大学時代の阿部選手の思い出は?
酒井 |
阿部はチームにいなかったからなー。でも、こいつ、やっぱりキャプテンだなと思ったのが、インカレで負けていた時に「俺について来い!」とひと言言ったんだよね。いいことを言うなーって。 |
うわー、かっこいい!
阿部 |
ちょっと待って!それだけを聞いたら、僕、めちゃめちゃキザなヤツじゃん。説明させて!相手にかなりリードをされていて、タイムアウトの時に、とりあえずコートを走り回ろう、俺が走るから、それについて走り回れ、ということを言ったんですよ。それをテレビの解説が「ついて来い!」と、その言葉だけを切り取って、阿部のキャプテンシーがどうのこうのと。もうめちゃめちゃ恥ずかしい! |
酒井 |
いやー、さすがでしたよ。ほとんどチームにいないのに、そういう言葉をかけて、鼓舞して。みんなも阿部の言うことをちゃんと聞くしね。 |
阿部 |
いやいやいや、若かったなー。 |
涙の2014/15V・プレミアリーグファイナル
大学卒業後は、阿部選手は東レアローズに、酒井選手はJTサンダーズに入団しました。敵になったわけですが、ライバル心はあったのでしょうか。
酒井 |
阿部には負けたくないとか、そういう気持ちは全くなかったですね。 |
阿部 |
僕も同じ。自分のチームでスタメンを取らないといけないので、それに必死でした。そして試合になったら、酒井がいるチームだから勝ちたいとかではなく、すべてのチームに対して勝ちたい。ただ、個人的には、酒井には頑張ってほしいとは思っていましたね。だから、僕がサンバーズに移籍してから対戦したJTとの決勝戦では、負けた相手が酒井のいるチームで良かったなと心から思った。 |
時には大爆笑したり!
2014/15V・プレミアリーグのファイナルですね。サンバーズはストレート負けを喫し、JTサンダーズが初優勝を飾りました。あの一戦を振り返っていただけますか?
酒井 |
ファイナル6で対戦した時に阿部がメンバーから外れていたので、「どうした?」と声をかけたんです。そうしたら「(足を)やっちゃったわ~」と。決勝はどうするんだろうと思っていたら、出てきて、だけどすぐに足を引きずっていたので、イテーだろうなと。どうしてもそう思っちゃうので、そこは見ないようにしていましたね。あの試合は、JTとしては、誤算が多かった。阿部のスタメンも誤算だったし、こいつがミドルブロッカーを多用したことも誤算だった。でも試合が終わった瞬間、こいつがネットをくぐって来て、僕のことを抱きしめてくれたんですよ。 |
阿部 |
JTに入ってからずっと成績が良かったわけではないし、そのままV・プレミアリーグで優勝を経験せずに現役生活を終える可能性だってある。リベロは強いチームを安定させることはできるけれど、酒井がどんなに良いリベロだからといって、チームを強くさせることは難しい。単純に得点を決めることができないですから。ずっと我慢の連続だったと思うんです。試合に負けたことは悔しかったですが、酒井のことを考えると、報われたなって。それが自然と行動に出てしまいましたね。 |
酒井 |
ぐっと胸に迫るものがありました。それに、こいつも先に泣いちゃってましたからね(※足の怪我が悪化し、第2セット途中で交替となり、阿部選手が悔し涙を流すシーンがありました)。 |
阿部 |
まあ、それはいいじゃないですか。 |
そして、再び同じチームに!
それから約半年後に、酒井選手はサンバーズへ移籍を果たしました。実際に同じチームになってどうですか?
酒井 |
サンバーズに入る前、全日本で阿部と一緒だったので、そこでチームのことを聞いたりしていました。移籍後は、新人のような感じだったのですが、阿部を通じて、みんなと食事に行ったり、話したりすることも多くて、助けられましたね。コートの中では、面と向かって「お前、頼むぞ」と恥ずかしくて言えないですけど、間違いなく自分にとって大きな存在です。 |
阿部 |
最初は「緊張する」とよく言っていたよね。でも大学時代も自分から発信して、みんなをまとめていたので、サンバーズでも同じように動いて、あっという間にチームにとけ込んだ。若い子の話を聞いてあげたり、自分からミーティングをやろうと言ったり、チームに良い影響を与えるところはすごいなと感心しますね。 |
頼りにしています!
大学時代からこいつ変わったなと思うところはありますか?
酒井 |
昔に比べると、随分、お酒を飲めるようになったよな(笑)。 |
阿部 |
大学時代はまったく飲めなかったからねー。ビール1杯でべろべろに酔っぱらっていたもん(笑)。 |
バレーボールに対しては?
酒井 |
まったく変わらない。熱いものを持っていますよね。常に「俺について来い!」ですよ! |
プライベートも?
酒井 |
そう、奥さんにも、子供にも「俺について来い!」。 |
阿部 |
子供には違いますねー。 |
酒井 |
子供にはデレデレ(笑)。 |
酒井選手は?
阿部 |
酒井は変わらない。しっかりものです。何か分からないことがあったら、調べるより、酒井に聞く方が早いですもん。大学時代と同じように頼りにしています! |
大学時代の写真を見ながら、
「これ、4年のインカレの時だよね?」
と仲良く話し込む。
黒鷲旗は気持ちを出して戦う!
いいコンビですよね(笑)。ところで、ベテランの2人から見た今シーズンのV・プレミアリーグはどうでしたか?
酒井 |
最後の最後で、失敗したなと。若手を伸び伸びとプレーさせてあげられるように、何かできたんじゃないかと反省しています。それと、チームとして戦う準備が足りなかったのかなと。一人一人の力では勝つことが難しくても、チームとして戦うことができれば勝てたかもしれない。そこが足りなかったのかなと。チーム力が4位だったと思います。 |
阿部 |
ファイナル6の最後の2試合に、今のチームの課題が集約されていたように思います。シーズン序盤は別にして、どのチームでも終盤になると、プレーのことを意識しなくても、ある程度できるはずなんです。そこで重要になってくるのは、気持ちの部分。気持ちのスイッチを入れて、戦わないと。若いチームということもあり、自分のプレーに意識がいってしまって、そういうところがおろそかになってしまったのかなと感じましたね。 |
黒鷲旗でリベンジですね。
酒井 |
とりあえず勝つしかない!阿部が言ったように、気持ちの部分。そこを全面に出して戦っていきます。 |
阿部 |
短期決戦なので、1試合目から全員が気持ちの入ったプレーをして、勢いに乗っていきたい。相手を気持ちで圧倒するような試合を最初から最後までやれば、いいところまで必ずいくはずです。チームに貢献できるよう頑張ります! |
2人の活躍を期待していますね。では最後に普段は言えないお互いへの思いを言葉にしてください!
酒井 |
そんなのないですよ。恥ずかしい(笑)。 |
阿部 |
僕はこれからも頼りにしています! |
酒井選手、阿部選手のお世話(?)をよろしくお願いします(笑)!
2013年春に発行された阿部選手が
表紙のファンクラブ会報誌『COURTSIDE!』を見て、
「お前、白髪が増えたなあ」と
指摘する酒井選手に対し、
阿部選手は「白髪は嫌いじゃない。
真っ白にしたいんだよね」と反論。
現在、“ニュー阿部ちゃん”へと進化の途中だそう。
方向音痴で、記憶力に若干(?)難あり、でもコートに入れば、魂の言葉とプレーでチームを勝利へと導く阿部選手。しっかりもので、面倒見が良くて、昔からチームのお母さんキャラだった酒井選手。まったく違う性格の二人の共通点は、とにかくバレーボールが好きだということ。2人は「バレーボールに育ててもらったので、バレーボールに恩返しがしたい」と将来の夢を語っていました。バレーボールを心の底から愛する同級生コンビにこれからもご注目ください!
(取材:2017年4月6日)