「コーチングとは何か?」をじっくり学びたかった

— 今回、JOCのスポーツ指導者海外研修員としてイタリアのリヴォルノで研修をされていますが、海外で勉強しようと思ったのはどうしてですか?
もともとコーチングの勉強をしたいなと思っていたんです。僕は選手を終えてすぐにコーチになったのですが、指導について、じっくり勉強する期間があったほうがいいなと思っていました。『コーチング、指導とは何なんだろう?』と思うところがあって、それを学ぶには、海外に限らず、国内の例えば中学、高校、大学の経験豊富な指導者の方のもとだったり、バレーに限らず他の競技の指導も見てみたいという気持ちもあります。そういう選択肢の中から、今回は海外で学ぶチャンスをいただいて、チャレンジすることにしました
— 8月20日に日本を出発してから約1ヶ月が経ちました。リヴォルノはどんなところですか?
リヴォルノは地中海に面した港町で、僕が今住んでいる家の近くには海水浴場があり、休暇で訪れている人もたくさんいます。ものすごく長いビーチで……『どこまで続いてるんだろう?』と思って一度歩いてみたことがあるんですが、1時間歩いても端には到達できなかったので諦めました(苦笑)
— こちらの生活で、何か苦労していることや戸惑ったことはありますか?
それが、ないんですよね。全然困ってない(笑)。食事は、パスタをゆでたり、肉や野菜を炒めたり、簡単なものを作ってなんとかなっていますし、寝られるし、他になにかある? って感じです(笑)。あえて言えば、蚊が多いこと。それも別にどうにでもなることですしね
— 言葉の面は?
イタリア語でペラペラ話されたらまったくわかりませんが、こちらの人はジェスチャーが多いから、コートの中で話していることはだいたいわかります。ポーランドの選手がいるので、コーチが英語で訳しているのを聞いたりもしますし。英語も得意なわけではありませんが、結構何とかなっています
— リヴォルノのパオロ・モンタニャーニ監督は以前、サンバーズの監督を務めていました。当時はイタリア語ですべて指示されていましたから、バレーで使う単語はある程度覚えているのでは?
それはありますね。バレー用語は結構すんなりと入ってきますし、パオロが言っていることはサンバーズにいた頃とあまり変わっていないので、『あー、オレも同じこと言われてたな』と思い出しながらやっています
— サンバーズにいた時のパオロ監督と、今、リヴォルノで指揮を執っているパオロ監督は、違う部分もありますか?
あると思います。パオロにとっては日本が海外で、日本の文化はイタリアとは違う。日本人はどちらかというとおとなしくて、あまり思っていることを言いませんよね。こちらに来て感じているのは、選手が何でもすぐに監督に言うんだなということ。『え? これどういうこと?』と気軽に質問をするし、みんな、思ったことをすぐに口に出すから、コミュニケーションというのはこちらのほうが楽に取れているんじゃないでしょうか。こちらの人は陽気ですしね(笑)

電気屋、アイスクリーム屋…多彩な選手でチームをどう作るのかを学ぶ

— リヴォルノはどういうチームですか?
環境は日本とは随分違うなと感じています。リヴォルノはセリエA2のチームなんですが、ハンドメイド感というか、手作り感がすごい。最初、体育館にバレーボール用のポールを立てる穴がなかったので、体育館の床を切って、そこにセメントを流し込んで……というところから始めました。はじめは、『マジで? オレらがやるの?』という感じでしたね(苦笑)。空けた穴が深すぎて、ポールを立ててみたら243cmに届かなかったので、今度は少し埋めて調節して、『よし!』と。小規模なチームなので、日本のチームなら事務局の人たちがやってくれているようなことも、ここでは全部、現場のスタッフや選手が自分たちでやらなきゃいけない。ホームゲーム用のアイテムの搬入も僕らがやりますし。勉強になりますね。今まで当たり前のようにやってもらっていたことが、当たり前じゃないんだなと
— 所属する選手については?
選手それぞれに事情が異なっています。A2の選手のお給料というのは高くないので、他に仕事を持っている選手もたくさんいます。僕と同い年のリベロは電気屋さんも営んでいる。昨シーズン、A2でブロック賞を獲得したミドルブロッカーもこのチームにいるんですが、まだ練習には参加していません。彼の実家がアイスクリーム屋さんをしているから、その手伝いをしていて、その仕事が終わる10月末にならないとチームに合流できないと言うんですよ。それでもブロック賞を獲ってしまうような選手なので、パオロも『何も言えない』って(苦笑)。他には大学に通いながらプレーしている選手もいますしね。
ポーランドから来ている選手は、めちゃくちゃ上昇志向が強い。3年後にはレベルの高いポーランドのリーグで活躍したい、将来は日本でもやりたい、と言っています。そうやって人それぞれ事情は違うんですが、みんな、バレーへの取り組み方はすごいです。
若い選手が多く荒削りで、レベル的にはそれほど高くはなく、たぶんVリーグのチームの方が強いだろうと思うぐらい。でもこのチームをパオロがどうやって作っていくのか、選手の表情はどんな風に変わっていくのかが楽しみですし、戦術・戦略の部分でどのようにパオロが動いて、僕にどんなことを要求するのか、興味があります。学べることはたくさんあるので、充実しています
— 山村コーチのリヴォルノでの1日の過ごし方は?
ウエイトトレーニングが8時半から始まるので、だいたい6時半頃に起きて準備して、ジムに向かいます。一般の人たちも使うトレーニング施設を使っていて、一度に全員はできないので、選手たちはいくつかのグループに分かれてウエイトをやって、それが終わるのが12時ぐらい。それから一度家に帰ります。ロレンツォという若い選手は家が遠いので、車で僕の家に連れて帰って、昼食をとった後、練習中に撮ったビデオを一緒に見ながら、『ここはこうしたほうがいいんじゃないか』とか話しています。午後の練習は17時や18時開始なので、体育館で練習して、終わったら帰って、晩ご飯を食べて、寝る。その繰り返しです。休日は基本的に週1回、日曜日ですね。
休日は、午前中に1週間分の洗濯をするぐらいで、基本的に何もせずゆっくりしています。洗濯機を使うのに1回5ユーロもかかってしまうので、洗濯は週1回なんです(苦笑)。あとは、9月はイタリアで世界選手権が開催されていたので、車でフィレンツェまで行って見てきました。僕がイタリアに来ている時に、イタリアで世界選手権が開催されるなんて、タイミング的によかったですね。ちょうど今、毎日の練習などで自分が刺激を受けている部分が、試合を見ていると『あ、やっぱりそうなんだな』と、スーッとダイレクトに入ってきました
— 最後に、サンバーズのファンの皆さんに、イタリアからメッセージをお願いします。
今、イタリアで充実した生活を送らせてもらっているので、この経験をこの先、サンバーズのためにいかせるよう活動していきたいと思います。まもなくVリーグが開幕しますが、ファンの皆さんが楽しんでサンバーズの応援をしてくれることが、選手たちにとって大きな力になると思うので、皆さん、楽しんで応援してください!

山村 宏太

東京都出身。コーチ

コーチとして2年目。今年8月よりイタリアにてコーチングを学び成長してサンバーズへ貢献してくれる山村コーチ

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