相手から「こいつ面倒くさいな」と思われるセッターが理想

— 山本選手のバレー人生を振り返っていただきたいのですが、まずバレーを始めたきっかけは?
きっかけは4歳上の姉です。姉ちゃんは中学からバレーを始めて、東京選抜の最終選考に残ったんですが、それを見た中学の男子バレー部の監督が、「弟もうまくなるんじゃないか」と考えて、姉ちゃんに「弟呼んでこいよ」と声をかけてくれたんです。僕はまだ小学生だったんですけど、それから中学校の練習に参加させてもらうようになりました。「意外とできるな。楽しい!」となって、そこからもう抜けられなくなりましたね。
— セッターはいつからですか?
小学生の時は背が小さかったこともあってセッターをやっていて、中学でも最初はセッターでした。でも中学校に入ってから身長が伸びたし、中2の時にはアタッカーがあまりいなくなってしまったので、セッター兼アタッカーになってツーセッターでやっていました。マサ(柳田将洋)と知り合ったのはその頃ですね。試合で会って、「同い年でうまい子いるなー」と。僕もチームの中ではうまい方だったし、アタッカーだったので、「負けたくないな」と対抗心を燃やしてました。
東亜学園高では1年の時はアタッカーとして試合に出たこともあったんですが、最上級生が抜けた時に、どちらをやるか決めていいと言われました。華やかさではアタッカーですよね(笑)。でも「この先、上に行くんだったらセッターやった方がいいよ」とコーチにアドバイスされて、「好きなだけツーアタックやっていいから」と言われたこともあって、「よし、セッターやるか」と決めました。
— 高校時代はツーアタックやブロックで、自らも積極的に得点を奪うセッターでしたね。優勝した3年時の春の高校バレーでは、チーム最多得点を挙げた試合もあったのでは?
たしかブロックが9本で、スパイクも10何本決めて、総得点25点ぐらいの試合がありましたね。藤中(謙也)のいた宇部商戦だったかな。
— 大学時代も攻撃的なセッターでしたが、サンバーズではツーアタックは封印していますね。
それはやろうと思えばできるので、それよりも今は、自分に足りないトスの安定性という部分に力を入れてやりたいと思っています。
— それがクリアできたら、また攻撃的なスタイルに?
もしかしたら……。でもまだ戻るつもりはないです。とにかくまずトスがうまくなりたいので、そっちを頑張ります。バレーは本当に流れが大事じゃないですか。苦しい時にツーアタックをやって、もしも拾われて決められたら、完全に相手に流れが行ってしまう。そこまでのリスクを負って決まらなかったら、チームもイラッとしますしね。だから100%決まるという時しかやらない。ある意味ビビリかもしれないですね。でもサンバーズはアタッカーが強いので、ちゃんとトスが上がれば決めてくれますから。
— 山本選手が最終的に目指すセッター像は?
自分で打たなかったとしても、相手が「こいつめんどくせー」、「何やってくるかわからない」と思うような、相手に嫌がられるセッターですね。
— 具体的に理想とする選手はいますか?
今まで「こういうセッターになりたい」って思ったことがないんですよね。でもあえて挙げるとしたら、イランのセッターのマルーフ(ミルサイード・マルーフラクラニ)ですかね。あの人はうまいなと思いました。トスの上げ方がキレイだとか、そういうのは思わないんですけど、なんか相手をおちょくっている感じが好きですね。相手がビックリするようなことをするじゃないですか。ああいう「めんどくさい!」と思わせるセッターになりたいですね。

今季はもう一度“強いサンバーズ”の印象を復活させたい

— サンバーズにはどんな印象を持っていましたか?
大学時代に合宿に来た時の印象は、明るいし、楽しそうだし、体育館もすごくやりやすい。バレーに打ち込むにはサンバーズだなって、憧れていました。それに僕、中学生の時に山村(宏太)さんにサインをもらったことがあるんです。僕の家が山村さんの実家のすぐ近くだったので、僕の地区の大会に山村さんが来てくれて、その時にもらいました。その選手と今一緒にプレーしているなんて面白いですよね。歳はちょうど一回り違うんです。そんな年上の人とやったことがなかったので、最初はものすごく気を使いました(苦笑)。ただ年齢が上なだけで怖いと思っちゃって。でも実際はむっちゃ!優しい。今は一緒に飲みに行ってもちゃんと話せるようになりました。いろいろと相談に乗ってくれますし、ぐいぐい仲良くさせてもらっています。
— どんなことを相談するんですか?
試合では思い切りできるのに、練習だと、「丁寧に上げなきゃ」とか「うまく上げなきゃ」と意識しすぎて、いいトスが行かない。そういうことですね。
— 試合でできるのに練習でできない?
そうなんです。自分は、練習だからミスしてもいいとは考えられなくて、丁寧に上げようとか、コンビが合っていないから合わせようとか、自分の中でテーマを持ってやるんですけど、そうすると度胸がなくなるんですよね。「トスが短い!」と言われたりすると、それでビビッたり。意外と気にしいなんです(苦笑)。でも山村さんは「どんどん練習でミスしろ」と言ってくれるので助かっています。
— 練習でできるのに試合でできないということはあると思うのですが、逆なんですね。試合中に「ミスしたらどうしよう」とは考えない?
考えないですね。モチベーション(の違い)なんですかね……。練習でモチベーションが上がっていないわけじゃないし、やる気は満ちているんです。でも試合の時って特別なんですよね。応援もあるし、楽しい(笑)。テンションが上がります。でもそれではダメなんです。だから僕のテーマは“安定”なんです。練習から安定してできれば試合でもっとよくなるかもしれないし、練習でできないのに、試合でスパイカーが信頼して入れるかといったら、そうじゃないですから。
— 自ら選んで進んだセッターの道ですが、セッターは楽しいですか?
うまくいったら楽しい。でもうまくいかない時は全部セッターのせいなので、たまにつらい時もありますね。うまくいく時は、どこに上げても決まる。自分に余裕があって、落ち着いて緊張もしなくて楽しくて、周りが見えているみたいな状態ですね。
— それができていた試合は?
昨シーズンのリーグの終盤はできていました。でも黒鷲旗では、相手に逆の逆を突かれた感じでした。リーグでは塩田(達也)さんのクイックを多く使ったので、(黒鷲旗では)塩田さんにマークが行くから、サイドのブロックが手薄になるんじゃないかなと思ってサイドに上げたら、2枚来ていたとか。僕自身がちゃんとブロックが見えていなかった。データだけじゃなくしっかりと目で見ないといけないと思いましたし、クイックのパターンが少ないので、もっといろんな攻撃を使えるように今やっています。
— 昨シーズンはV・プレミアリーグ7位という悔しい結果に終わりました。今シーズンの目標は?
もちろん1位、優勝することです。圧倒的に勝って、もう一度“強いサンバーズ”の印象を復活させたい。個人としては、昨季はリーグ終盤にチャンスが回ってきて、そこでアピールできたのはよかったんですが、もっと早くチャンスをつかめていたら、(チームも)変わったかもしれないという悔しさがあります。終盤までにも何度かチャンスがあったのに、自分の力不足で、練習でアピールしきれなくて出番がなかったので。今季は上げ続けます!
— 「上を目指すならセッター」という話もありましたが、Vリーグだけでなく、全日本も視野に入れていますか?
行きたいですね。Vリーグで活躍すればちゃんと目にとまると思うので、今季が勝負ですね。今季、いっぱい試合に出て、勝って、優勝して、「こんなセッターいるぞ!」と思わせたいです。
— 最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
いつもサンバーズに熱い応援ありがとうございます。すごく力になるし、ファンの皆さんがいるからバレーができているので、これからも喜んでもらえるように努力していきます。昨シーズンはすごくファンの人が増えたし、勝ったら喜んでくれたり、負けたら本当に落ち込んでくれたり、サンバーズの試合や練習を観にいくことが生活の糧になっている人がたくさんいると聞くんですが、昨季は勝てなくて申し訳なかったという思いがあります。今季はそういう人たちにいい思いをしてもらえるように頑張ります。期待してください!

山本 湧

東京都東大和市出身。セッター。

攻撃的な組み立てと、強気なスタイルのサンバーズの若き司令塔。
持ち前のポテンシャルの高さを武器に、勝利に導きます。

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