DRINK&FOOD
23.08.10
様々なフィールドで活躍するサントリーの社員=サントリアンにスポットを当て、「挑戦」をテーマにインタビューしていく特集企画。第5回目は、様々な新規事業を開拓しているサントリー食品インターナショナル株式会社 SBFジャパン イノベーション開発部の高橋大樹さん。新規事業ならではのユニークな着眼点とトライ&エラーの連続で、サントリーの飲料事業をさらに盛り上げています。
イノベーション開発部で新規事業に携わっている高橋さん。ドリンクとラベルをカスタマイズできるコーヒーサービス「TAG COFFEE STAN(D)(タグコーヒースタンド)」や、水道水をミネラル入りの水に変えるペットボトルキャップ「minel(ミネル)」など、これまでにないユニークな商品やサービスを次々と世に送り出してきました
高橋さん:私が所属しているイノベーション開発部のミッションは、既存のビジネスの枠を取り払い、新たな価値を創造していくこと。2018年の秋に部署が立ち上げられてからこれまで新規事業に携わってきました。
複数の新規プロジェクトを同時並行で進める毎日に、忙しいながらも大きなやりがいを感じています。たとえ壁に直面したときでも、進行中の別事業での気づきが突破口になったり、まったく毛色の異なるプロジェクトを進めることが気分転換になったりすることもあります。
もともと、飽きっぽい性格でもあるので、新しいものをどんどん仕掛けていく業務は、実は性に合っているのかもしれませんね。
サントリーの既存事業とはまったく異なる、「新しい価値」の提供がプロジェクトのミッション。未知の世界を手探りで進んでいくため、ときには行き詰まったり、想定外のミスが起こってしまうこともあるそうです。
高橋さん:今でも覚えている大失敗は、オンライン上でドリンクとボトルのラベルを決めて店舗で受け取れる「TOUCH-AND-GO COFFEE」の事業を手がけていたときのこと。
その日は店舗が定休日にもかかわらず、手違いでモバイルオーダーのシステム上では注文を受けられる設定になっていました。気づいたときにはもうオーダーが続々と入っていて、閉店している店舗にコーヒーを受け取りにいらっしゃったお客様には大変なご迷惑をおかけしてしまいました。あのときばかりは、さすがに血の気が引きましたね……。
もちろん、順風満帆に成功するプロジェクトなんてほとんどありません。進めていくなかで、当初の予定から大きく方向転換していくこともありますし、前例がないことにチャレンジする度胸も大切です。心配性な人にとってはストレスが多い仕事かもしれませんが、私はどちらかというと楽観的なタイプなので、毎日楽しみながら仕事をやれています。
新宿・東急歌舞伎町タワーの「namco Tokyo」で行われたイベント「白金煌 BIRTH DAY 2023」の様子
そんな高橋さんがこの4月から新しくスタートさせたのが、「TAG LIVE LABEL」。導入企業のコンテンツを盛り込んだオリジナルラベルのドリンクをその場で作成・販売できる、新しいサービスです。
高橋さん:前身となる「TOUCH-AND-GO COFFEE」というサービスには、イノベーション開発部ができる以前から携わっていました。事業内容としては、お客様がモバイル上でドリンクとラベルをカスタマイズして注文し、店舗でスムーズにオリジナルペットボトルドリンクを受け取れるというもの。当初は忙しいビジネスパーソンをメイン顧客層に想定していました。
ところが、実際にスタートしてみると「ラベルのカスタマイズがおもしろい!」という女性からの反応が想定以上にあり大変驚きました。ラベル上の自分の名前を入れる部分に、好きなアイドルの名前を入れたりして、いわゆる「推し活」アイテムのひとつとして受け入れられたんです。
「TAG LIVE LABEL」ではカードを選んでレジでドリンクと合わせて注文
購入した商品をSNSにアップして、さらにそれを見た方が「私もやってみたい」と注文してくれるようになりました。プロジェクトは想定していなかった方向で盛り上がり、ユーザーの反響はだんだん大きくなっていきました。
思いがけない形で反響を得ることにはなりましたが、だったらそういう体験や満足感の部分をもっと尖らせたサービスにしていったほうがいいんじゃないかという可能性の発見に繋がり、今回の「TAG LIVE LABEL」が生まれるきっかけになりました。
イベントで用意された限定ラベル。この日のイベントでしか手に入らないラベルを求めて多くのお客さんが来店
こうして生まれた「TAG LIVE LABEL」は、都内のアミューズメント・コンプレックスや映画館などに導入されはじめました。映画作品やアニメ、ゲームなどのキャラクターラベルなど、その日・その場所でしか購入できない「推し活」文脈での公式ドリンクという形で、ファンの間で「特別な一本」として人気を博しています。
高橋さん:チームのみんなでとことん準備をしてきたものが、いよいよ世間にお披露目できる瞬間は、なんだか文化祭みたいでプロジェクトを推進していくなかので一番のハイライトです。これまでなかったものを世に送り出す新規事業は、お客様の反応もストレートに返ってくるので、毎回ドキドキしますし、そこが一番の魅力でもありますね。
つい先日も、新宿にある東急歌舞伎町タワーの「namco Tokyo」で行われた二次元キャラクターのバースデーイベントで「TAG LIVE LABEL」を販売させていただきました。イベントの主役であるDJキャラクターのラベルドリンクを、ファンの皆さんが嬉しそうに購入されている姿を実際に見て、そういった「熱」を共有できる商品になっているなと再確認できました。
「TAG LIVE LABEL」が売り出しているのは、あくまでもサントリーの商品である飲料。そこに特別な思い出や体験をプラスして、新しい価値を生み出すことができたのは、飲料メーカーであるサントリーならではなのかもしれません。
高橋さん:たとえば、同じ「推し活」アイテムでもクリアファイルやマグカップなどは「欲しいけど、買っても使わないかな…」と購入をためらってしまう方もいるようです。
ところが、ドリンクならイベント中に必ずと言っていいほど飲むものなので手に取りやすい。まさにサントリー商品の価値と「推し活」における希少価値が結びついた特別なサービスだと確信しています。
もちろん、「推し活」アイテムとしても、いろんな訴求ポイントを盛り込みました。ラベルのシールは二重にしていて、剥がしてステッカーとしてコレクションできるようにというアイデアです。さらに、ラベルには日付や場所が入るという点も、その場限りというプレミアム感があってすごく好評いただいていますね。
まだ世の中にないモノやサービスの創出――社内からの期待も肩に重くのしかかりますが、高橋さんはポジティブに挑戦を続けていきたいと語ります。
高橋さん:サントリーの「やってみなはれ」という企業風土は有名ですが、実は「やってみなはれ」には“対になる言葉”があるんです。それは、「みとくんなはれ」。「やってみなはれ」が上司からメンバーへチャレンジ精神を鼓舞する言葉だとしたら、「みとくんなはれ」はメンバーから上司に対する決意の表明といえるかもしれません。
サントリーでは社員ひとりひとりの挑戦を見守ってくれるからこそ、その思いを託された社員もオーナーシップマインドを持ってしっかりやっていこうという、気概を表す言葉なのかなと思います。
プライベートでは、「挑戦」というほどではないですが、子育てに悪戦苦闘する毎日です。4歳と2歳の子どもたちが家で待っているので、毎日朝早く出勤して必ず定時で帰り、家族との時間を大切に過ごすというミッションを自分に課しています。その実現のために、朝型の生活にシフトしたり、やることが多いときは早朝出勤をしたりして、働き方の面でも意識が大きく変わりました。
商品やサービスだけでなく、ワークライフバランスの面でもイノベーションを起こしていくことがとても大事だと思っています。自ら率先して理想の働き方を実践していくので、その部分でも「みとくんなはれ」という気持ちですね(笑)。
▼関連リンク
サントリー食品インターナショナル株式会社
SBFジャパン イノベーション開発部
高橋大樹┃たかはし・だいき
1987年生まれ、埼玉県出身。早稲田大学理工学部卒業後、2010年にサントリーホールディングス株式会社。宣伝部で「ザ・プレミアム・モルツ」の広告宣伝を担当。トレーニー制度による海外赴任を経て、飲料事業に携わる。2018年に発足したイノベーション開発部に立ち上げから参画し、「TAG LIVE LABEL」をはじめとした複数のプロジェクトを担当。
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cMIRAIKOMACHI PROJECT