- 容器包装
「ボトルtoボトル」水平リサイクルでつなぐ循環の輪
──リサイクルの現場から学ぶ資源の価値
サントリーグループでは、清涼飲料やお酒などさまざまな事業の中で、缶・びん・ペットボトルなどの飲料容器を使用しています。特にペットボトルは、2030年までに“100%サステナブル化“を掲げ、「ボトルtoボトル」水平リサイクルをはじめとするさまざまな取り組みを通じて、循環型社会の実現を目指しています。その実現には皆さまの協力が欠かせません。そこで、今回はペットボトルの水平リサイクルに焦点をあて、皆さまにご協力いただきたいペットボトルの”きれいな分別“について、リサイクル・プラザJB 加藤由美子がご紹介します。

リサイクルボックスの投入口は“リサイクルの入口”
私が働いているリサイクル・プラザJBは、飲料空容器の再資源化をサントリーグループ自ら行うために設立された自社工場です。缶・びん・ペットボトルの飲料空容器の中間処理を行う業界初の工場として、2003年5月に稼働しました。リサイクル・プラザJBが所属するサントリーグループの自動販売機(以下、自販機)事業を行うサントリービバレッジソリューション(株)は、自販機を通じてお客さまのもとに商品をお届けするとともに、飲みきった缶・びん・ペットボトルの回収も重要な業務の一つです。
さて、皆さんは自販機の横にある“ボックス”の名称・役割をご存知でしょうか。あれは”ごみ箱”ではなく、飲みきった缶・びん・ペットボトルを回収するための“リサイクルボックス”なんです。リサイクルボックスから回収した空容器は、自販機の維持管理を行うルートセールスによって回収され、リサイクル・プラザJBに運ばれることで、リサイクルのプロセスが始まります。まさに、皆さんがリサイクルボックスへ飲みきったペットボトル等の飲料空容器を入れることこそがリサイクルの出発地点であり、リサイクルボックスの投入口は“リサイクルの入口”でもあるのです。

異物等を選別し圧縮した使用済みペットボトル。キャップやラベルが分別されていない状態のもの(手前左)とキャップ・ラベルがきれいに分別された状態のもの(手前右)。業界統一のオレンジ色のリサイクルボックスは、投入口を下向きにして空容器以外を入れにくくし、上部には傾斜をつけることで上に物を置けなくする工夫をしています(左奥)。新たな試みとしてペットボトル本体とキャップ・ラベルの分別を訴求するシールを貼付したサントリーのリサイクルボックス(右奥)。
私自身、2013年に(株)ジャパンビバレッジ(現 サントリービバレッジソリューション(株))に入社し、11年間ルートセールスとして働いてきました。自販機の維持管理や飲みきったペットボトル等の飲料空容器の回収に携わるなかで、リサイクルボックスをごみ箱と誤解し、空容器以外のさまざまな異物が入っている様子をたくさん目にしてきました。ルートセールスの経験を通じて、リサイクルボックスの存在・本来の役割や私たちが取り組んでいる水平リサイクルの仕組みをより多くの方に知ってほしいという気持ちが強まっていきました。
そして、2024年4月にかねてより希望していたリサイクル・プラザJBでの勤務となり、現在は工場見学の案内や小学校への出前授業を担当しながらリサイクル・プラザJBでのリサイクルフローやペットボトルの再資源化の仕組み、水平リサイクルの大切さを伝えています。私は学生時代から環境問題や海外の生活衛生関連に興味があり、専門の勉強をしたり、海外で活躍する青年海外協力隊の活動を実際に見学したりするなど、さまざまな経験をしてきました。環境問題や水平リサイクルの啓発活動に積極的に取り組んでいるこのリサイクル・プラザJBの存在そのものが入社のきっかけと言っても過言ではなく、今現在とてもやりがいをもって、楽しく働くことができています。
私たちは水平リサイクルの橋渡し役
ペットボトルは、「リサイクルの優等生」とも言われており、資源として衣類やトレーといったペットボトル以外の多くの用途にもリサイクルされていますが、衣類やトレーなどはペットボトルほど回収の仕組みが整っていないため、一度リサイクルされ使用された後は焼却されることが多く、そこでリサイクルの輪が途切れてしまいます。そのため、サントリーではペットボトルからペットボトルへ、何度も生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」水平リサイクルを推進しています。
サントリーが取り組む「ボトルtoボトル」水平リサイクル

水平リサイクルとは、使用済み製品を原料として用いて同一種類の製品につくりかえるリサイクルのことです。サントリーグループは、協栄産業(株)と協働し、使用済みペットボトルから新たなペットボトルをつくるメカニカルリサイクルによる「ボトルtoボトル」水平リサイクル技術を2011年に国内飲料業界で初めて確立、翌2012年に実用化しました。
皆さまに使用済みペットボトルを分別していただいた後、回収・選別後、粉砕・洗浄・除染して、ペットボトル用のPET樹脂に再生します。それを高温で溶かして、ペットボトルの原型となるプリフォームを製造し、これをふくらませて新しいペットボトルがつくられています。この水平リサイクル技術は、環境負荷が少ないリサイクル手法であり、新たな化石由来原料を使用する場合と比較してCO2排出量を約60%削減※できます。
サントリーグループでは、2030年までにグループで使用するすべてのペットボトルを、リサイクル素材や植物由来素材等100%に切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにする目標を掲げています。
- ※原料調達からプリフォーム製造までの工程における割合
リサイクル・プラザJBは、ペットボトルの水平リサイクルの妨げとなる異物や飲み残しなどを除去・選別し、次のプロセスへと送り届ける。まさに私たちは水平リサイクルの橋渡し役を担っていると感じています。

リサイクル・プラザJBで配布しているパンフレット。缶・びん・ペットボトルのリサイクルフローやペットボトルの再資源化の仕組みを紹介しています。
目の当たりすることで“分ければ資源、混ぜればごみ”を実感
工場見学や出前授業の場で必ず皆さんにお伝えすることの一つに“分ければ資源、混ぜればごみ”があります。それは、水平リサイクルの工程における課題として、異物の混入や飲み残しのある容器があることを指しています。見学や授業では、リサイクルボックスから回収した袋の中から見つかったさまざまな異物を実際に見てもらっていますが、年齢を問わず「驚いた」という感想をとても多く聞きます。リサイクル・プラザJBで毎日のように見つかる異物としては、紙やプラのカップ、使い捨てマスクなど日常で多く使用されているものがあります。また、使用済みの医療用注射針が詰められたペットボトルのほか、包丁やフライパン、モバイルバッテリーといった危険性の高い異物が見つかったこともありました。水平リサイクルの妨げになるのはもちろんですが、異物の除去作業は手作業で行っているため、このような異物は私たち社員のけがや事故に直結します。特に、モバイルバッテリーは爆発する可能性がありますし、包丁は作業員がけがをする恐れがあり、どれも非常に危険なのです。

リサイクル・プラザJBで見つかった異物を紹介する加藤さん。煙草の吸い殻が入ったペットボトルのほかにも、家庭用ゲーム機のコントローラーやテレビリモコン、乾電池なども見つかったことがあるという。
私が初めて異物が混入されているのを目の当たりにしたときは、どの異物も衝撃的で、本当に驚きました。例えば、灰皿代わりに使われたペットボトルが混ざっていたことがあったのですが、これはもうリサイクルすることができず、焼却処分するしかないため資源循環の輪から外れることになります。少しでも多くの方に水平リサイクルの仕組みを知っていただき、このような“ごみ”としての扱いを減らし、貴重な“資源”であるという認識を広めていきたいです。
自販機横のリサイクルボックスに入れるときの2つのお願い
工場見学や出前授業では、リサイクルボックスに“異物”を入れないことに加え、ペットボトルについて、私たちから「ご協力いただきたい2つのこと」も伝えています。循環型社会・脱炭素社会の実現への貢献に向けて、皆さまにもぜひこの2つにご協力いただけるととても嬉しいです。
まずは“飲み残しをなくしペットボトルを空にしていただく”こと。大前提として飲み残しはもったいない!ですし、実は水平リサイクルの大きな妨げになってしまいます。ペットボトルの中に残っている液体が飲料とは限らないため、それだけで水平リサイクルの輪から外さなければならないこともありますし、選別工程が増えるということは、本来必要なかったエネルギーを使用するということ。皆さんの心がけ一つで、必要なエネルギーを最小限にし、CO2排出量も抑えることにつながります。
もう一つ大切なのは、“キャップとラベルを外し、軽くつぶしてリサイクルボックスに入れていただく”ことです。ペットボトルはすべてプラスチックからできていますが、ペットボトル本体、キャップ、ラベルのそれぞれで異なるプラスチック素材が使用されています。事前に3つに分別されていると、「ボトルtoボトル」水平リサイクルの原料となるペットボトル本体(PET)のみに選別する処理が短縮でき、次の工程へスムーズに進められるので、一つ目の理由と同じく、必要なエネルギーを少なくし、CO2排出量も抑えることができるのです。また、ちょっとした工夫ですが、リサイクルボックスに入れる際に、ペットボトルを軽くつぶして入れていただきたいです。つぶして入れることで、リサイクルボックスの中により多くのペットボトルを入れることができるため、一度に運べる資源の回収量も増やすことができますよね。これにより輸送にかかるCO2の削減にもつながります。ただし、学校や職場、家庭などでペットボトルをリサイクルに出す時は、地域や自治体の分別ルールに従ってくださいね。

リサイクルボックスに異物が入っていることについて、「極端かもしれませんが、郵便ポストにごみや異物は入れないですよね。リサイクルボックスも同じような感覚を持ってもらえるようにしていきたいです。」と語る加藤さん。
工場見学や出前授業に参加してくれた子どもたちは、「環境のためにも今日からやってみたい」「家族にも教えたい」と話してくれます。この感想を聞いて、ペットボトルは誰にとっても身近な存在だからこそ、水平リサイクルの推進やそのための「きれいな分別」は大人だけではなく、お子さんも参加できるアクションなのだと、日々改めて実感しています。できるだけ飲み残しをしない、ラベルとキャップを外すなど、皆さんのほんの少しの心づかいが資源の有効活用につながっています。これからも、一人でも多くの方々に水平リサイクルの意義や仕組みを伝え、「ペットボトルはごみではなく資源」や「外でもきれいな分別」ということについて考えるきっかけづくりをしていきたいと思っています。

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