サントリー ワイン スクエア

登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ワインづくり

アッサンブラージュ(assemblage)

登美の丘ワイナリーの品質設計において、最も重要な部分とも言える「アッサンブラージュ」について、今回はレポートさせていただきます。

 

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先日、前年の2015年に仕込んだワインの全てを評価する評価会のレポートをさせていただきましたが、今回のアッサンブラージュとは、それらのそれぞれのワインを用いて、製品としての中味を組み立てていく作業になります。

この日、「登美」の2015年の中味設計を行ないました。

 

まず、「登美(白)」は、現在はシャルドネの単一品種で設計していますが、登美の丘ワイナリーの約25haのぶどう畑の中でもシャルドネだけでも9つの区画で栽培し、発酵方法・熟成方法も様々に駆使しているので、アッサンブラージュに供するシャルドネのワインは数多くあります。

それぞれのワインをまず評価し、その中でも選りすぐりのものを選び、最高峰の「登美(白)」の中味として設計をしていくのです。

味わいの骨格となるボディ感のあるワイン。生き生きとした果実味をもたらしてくれるワイン。複雑味とふくよかさを持つワイン。アクセントを感じさせるワイン。・・・それぞれの特徴を生かし、それぞれをバランスよく配置するには、その設計図のようなものが必要になってきます。

品質設計担当の吉野が考える「登美(白)」の味わいとして描くイメージをいくつかのパターンとして描き、それぞれを具現化するためのアッサンブラージュを何度も繰り返していきます。

そして、その試作を所長の渡辺と技師長の近保、醸造スタッフとも確認して、この年の「登美(白)」として表現する味わいの方向性を議論します。

それぞれのワインの味わいの感じ方の違い、ポジティブな側面とそうでない部分、その特徴をもたらす元のワインの特定や配合比率、もちろん、それに伴なう生産本数の情報などなど全ての情報を加味して、最終的には登美の丘ワイナリー所長の渡辺が「登美(白)2015」の品質を決定します。

 

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登美の丘の赤ワインの全てを動員してつくり込む「登美(赤)」のアッサンブラージュは、もっと複雑です。

アッサンブラージュで対象とするワインの品種もカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、プティ・ヴェルド、カベルネ・フラン、ビジュノワールなどなど・・前年2015年の登美の丘ワイナリーの自家ぶどう園で自らの手で育て収穫したそれぞれのぶどうを醸造部門と連携してワインに仕込んで、現在樽に入っていたりタンクにある様々な状態にある数多くのワインをまず全てもう一度評価します。

そして、その中から、登美の丘ワイナリーの最高峰「登美(赤)」にアッサンブラージュするべきワインをセレクションして、持ちうる最高の味わい品質として造りこむ設計となります。

 

セレクションしたワインのそれぞれの量もマチマチです。

また、アッサンブラージュすることによって、求むべき味わいのイメージと異なる印象を受けることもあります。

そういう場合には、セレクションしたワインに戻って、何がアッサンブラージュで起こっているのか、何を変数として変えてあげれば、求める味わいになるのか議論します。

ひとつひとつのワインに真摯に向き合い、時には思い切ってセレクションしたワインの配合をやめて、我々が提供できるこの年の最高品質を味わいを求めるために何度も何度も実際にアッサンブラージュして味わいを確認して、そのたびに気になるところをディスカッションして、新しい配合案の仮説をもと、アッサンブラージュして・・・そのやり取りを繰り返していくごとに、味わいにどんどん磨きがかかっていくのがよくわかります。

 

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アッサンブラージュは、非常に難しい世界です。

例えばたった2つのワインをアッサンブラージュするにもそれぞれの香味の特徴をとらえて、望むべき香味の方向にしようと配合比率を考えてやってみると、机上での計算とおりに(1+1)÷2とは単純には行かないのが普通です。

片方の特徴がそのまま残ってたり、反対にお互いに消しあったかのようにそれぞれの特長がなくなったり、逆に別の香りや味わいを感じるようになったり、時には味わいのバランスが崩れたりも・・・いろいろな成分が複合的に構成されているワインの香りと味わいは非常に複雑です。

ウイスキーではブレンドという表現をしますが、ワインの場合はアッサンブラージュという表現を用います。

単に、英語とフランス語の違いなのかも知れませんが、アッサンブラージュというフランス語の言葉には「立体的に組み立てる」という意味が第1義として示されていて、なるほどと思う次第です。

ましてや、数種類のワインを用いて、最高の品質になるように探索するのは砂漠を旅してる中でダイヤモンドを探すようなものだと格好よく例えてみるのは簡単ですが、実際にやってみるほうはたいへんです。

それは論理的な思考のベースに一種のひらめきみたいなものが要求される世界でもあります。

逆に言うと、品質設計のおもしろさはそこにあると言っても過言ではないと思います。

さらには、アッサンブラージュした後に、さらに樽熟成を行なっていきますので、その過程での変化の要素もあり、それを予見することも求められます。

 

所長の渡辺は「ワインづくりは構想力だ」と言うことがしばしばあります。

求めるワインの味わいのためには、どういうワインを用意しなければならないのか、そのためにはどういう仕込みが必要なのか、どういう品質のぶどうが必要なのか、それはこの登美の丘の土地の風土の中でどういう品種をどう育てたらできるのだろうか・・・そのような、とてつもなく広がる様々な要素をそれぞれに把握して、思い描いたものを各現場での取り組みとして、ぶどうとワインに働きかけて・・・その結果のワインがアッサンブラージュによって立体的に組み上げられていくのです。

求めるワインのイメージと現実との差異に対しては、どのポイントが違っていたのか、天候の要素も大きいですが、現場改善でできることはなかったのかを常に問い続け、常に品質を磨いていくことができるのは、自らの手でぶどう畑の土づくりからぶどうの栽培・醸造・熟成まで一貫したワインづくりを行なうことのできるこの登美の丘ワイナリーのひとつの大きな強みだと思っています。

この登美の丘という土地の風土と寄り添い、生かし、品種通して、土地の特徴を表現していく、そんなワインづくりを私たちは目指しています。

そして、この登美の丘の持つ土地の個性を最大限引き出した「緻密で、凝縮感のある、しなやかな強さ、やさしく、繊細で、やわらかさがある味わい」を目指して取り組んでいます。

この後、アッサンブラージュした「登美(赤)2015」は、さらに樽熟成で育成を行ない、瓶に詰めた後もワイナリーの瓶熟庫で瓶熟成を経たうえで、皆さんのもとにお届けすることになりますので、もうしばらくの時が必要となりますので、現在、販売させていただいている「登美」を飲みながら、今しばし、お待ちくださいませ。

 

 

 

サントリー登美の丘ワイナリーの最高峰「登美」

 

 

サントリー登美の丘ワイナリー 登美(赤)2009 サントリー登美の丘ワイナリー 登美(赤)2011
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サントリー登美の丘ワイナリー 登美(白)2010 サントリー登美の丘ワイナリー 登美(白)2011 サントリー登美の丘ワイナリー 登美(白)2012 サントリー登美の丘ワイナリー 登美(白)2013
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