サントリー ワイン スクエア

登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

世界との交流

造り手たちのワイン談義 Vol.2「味わいの原点は風土の力」

【特別対談】

椎名敬一(シャトー・ラグランジュ 副会長)

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渡辺直樹(サントリー登美の丘ワイナリー ワイナリー長)

 

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左:シャトー・ラグランジュ副会長 椎名敬一

右:登美の丘ワイナリー所長 渡辺直樹

 

 

登美の丘ワイナリーとボルドーのシャトー・ラグランジュはサントリーのワインづくりの二大拠点です。

その土地ならではの人と風土と向き合いながら、日々、その土地ならではのワインを目指す椎名氏と渡辺氏。

前回に引き続き、日本とフランスのワインづくりを巡る対話をお届けします。

 

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シャトー・ラグランジュ シャトー・ラグランジュぶどう畑

 

 

●フランスと日本、それぞれの個性とやり方と

 

渡辺:フランスではワインをつくる時、まず何を目指すか掲げてから、そこに向けて取り組みますよね。実は、そこにフランスのワインづくりの強みがあるように思えます。とにかく、構成力がすごい。 

 

椎名:フランスの場合、事がうまく運ぶかどうかはトップの力にかかっています。ワイン造りに限りませんが、トップがどれだけビジョンを持って組み立てをして、いかに上手に下の人たちに伝えていくかなんですね。その時、特に重要なのが構想力です。たとえばラグランジュには大変能力が高い素晴らしいNo.1とNo.2のテクニカル・ディレクターがいて、彼らが物事を的確に、しかもエネルギッシュに進めてくれています。

 

渡辺:あちらでは「こんなワインをつくりたい」と思ったら、「ならばどうするか」と考えますよね。どんな土地でどう栽培して何を引き出して育てるのか、醸造はどうするかと考える。だから力を抜くところ、一気に集中するところがメリハリがある。

 

椎名:そうですね、余裕があるというのか、遊びがあるというのか。「ケ・セラ・セラ」という感じでフレキシブルに対応しながらも、いざという時にはものすごく集中力を発揮して、最後はちゃんと造りあげるんですよね。

 

渡辺:その構想力を登美の丘で取り入れました。構想を立ててチームで取り組むという形で甲州やマスカット・ベーリーAの展開を実践したんです。

 

椎名:チームワークでうまく改善していくのは日本ならではの資質ですね。

 

渡辺:たしかに日本人の本質的な強みの一つかもしれません。登美の丘では味わいを決めるチームと実際に動くチームとに分かれて共同しながらつくっています。

 

椎名:ほお、それはちょっと面白いやり方ですね。

 

渡辺:下手すると伝わりきらずにバラバラになってしまう恐れもあるのですが、うまく機能すると細部まで心が行き届いたワインができます。その裏には、一つひとつを丁寧にこなす日本人ならではの特長が生きている。

 

椎名:日本人は仕事が丁寧ですからね。たとえばドイツの人たちは決めた通りにとことんやって、見事にビシッと仕上げていきますが、日本はそれともまた違うイメージですね。枠にはまった感じはしない。

 

渡辺:そうですね、必ずしも決めた通りにするわけじゃないし、必要に応じて臨機応変なのに折り目正しいというか。きめ細やかさがある。それが味わいの端々にいい形で出てきている。そんな手応えを感じています。フランス人の構想力と、日本人の折り目正しさ。どちらもワインづくりの強みになります。お互いの強みをこうして情報交換するのも、きっといい影響をもたらしてくれる気がします。

 

椎名:それが可能なのはともにサントリーの傘の下にあるからで、こうやって連携もできる。それこそが我々の強みなのでは?

 

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登美の丘ワイナリー 登美の丘ワイナリーぶどう畑 垣根栽培の甲州

 

 

●日本の白ワインの夢を甲州に託して

 

渡辺:ここ10年近く、登美の丘では構想を立てながらステージを重ねています。2009年までは赤を中心にこの土地を生かす品種や栽培方法、醸造を実践し、2010年からは白に取り組んでいます。そうして廻り廻って行き着いたのが甲州でした。

 

椎名:<登美>の活路を甲州に見出したというわけですね。

 

渡辺:登美の丘の気候で葡萄の力を十分に引き出して収穫するには、10月に熟す品種がいい。甲州は山梨の気候で自然に育ちますし、雨除けの傘も必要ない。まさにこの土地に合う品種だと考え、畑の拡大にも取りかかっています。

 

椎名:山梨のワインづくりについての構想から発想したのが甲州というわけですね。選択肢の一つではある。

 

渡辺:しかも今、世界のトレンドとしてヘルシーという切り口があるし、糖度が比較的上がらずアルコールが低めであることも決してネガティブ要素ではないし。

 

椎名:大事なのは「なぜ甲州なのか」という位置づけをどう確立するかでしょうね。赤を含めた<登美>ブランドとして考えた場合は長熟というスタイルになるけれど、それをどう考えるかですね。

 

渡辺:そこで凝縮した葡萄を得るために、今、いろいろと工夫をし始めています。甲州はタンニンや渋みが持ち味でフィニッシュが強くなる傾向がある品種です。それをいかにフレッシュに、活き活きとさせられるか、どう魅力を引き出していくか。面白いチャレンジになっています。それに、甲州は山梨でオリジナリティが出せるユニークな品種ですからね。なんと言っても夢がある。これから明確なビジョンを描いて走りますよ。

 

椎名:落しどころが見出せれば十分可能性はありますね。まずは走って、評価して、積みあげていくことですよね。

 

渡辺:今の甲州の評価はぜひ、この後のテイスティングで。

 

 

(つづく)

【近日公開】造り手たちのワイン談義 Vol.3「ラグランジュと登美の丘、味わいの裏側を語る。」

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