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WHiSKY on the Web ウイスキーミュージアムウイスキーに懸ける人たち > 職人の肖像
職人を毎月ひとりご紹介しながら、全5回シリーズでお届けします。
竹内義人
新しい香味をつくる人
奥出健治
樽熟成を見守る人
松田憲二
原酒の骨格をつくる人
米澤岳志
ウイスキーを研究する人
仲沢一郎
モルト原酒を厳選する人
「職人の肖像」 文・達磨信 山崎蒸溜所の職人の素顔とスピリット
第5回 新しい香味をつくる人 山崎蒸溜所ブレンダー室 竹内義人
官能の鋭さが生む美しい香味。
テイスティングの心地よい時間。
多様な香味のモルト原酒が並ぶ人間は香りや味わいを一体どれぐらい記憶できるのだろうか。ブレンダーという特異な仕事に就いている人と会話する度にそう思う。またちょっとした異臭を鋭敏に感じ取る官能能力の高さにも驚かされる。
以前、輿水精一チーフブレンダーがモルト原酒をテイスティング・グラスに注ごうとして、その前にグラスをちょっとだけ嗅いだ。すると「グラス臭があるな」と近くにあったミネラルウォーターでグラスの中をゆすいで、それからはじめた。
たしかにグラスを洗浄後、布巾の上に逆さまに被せて置くとムレたような匂いを感じることがある。だがそのテイスティング・グラスはよく磨き清められていて、一般の人ならばグラス臭といった感じ方を決してしないだろう。この官能の鋭さが、美しいウイスキーの香味を演出するのだと感心した。
特長的な香味の原酒サンプル「人間のテイスティングの力量は訓練しだいで高まるものなんです。もちろん特性がありますが、敏感な人はどんどんスキルが上がる。分析機器でも検出できないような異臭も嗅ぎ分けられるようになります」
ブレンダーの竹内義人はこう言う。彼は1969年入社で、瓶詰工場の中味部門や白州蒸溜所でモルト原酒をヴァッティング(混和)する仕事に長く携わっていた。その後、研究所と技術開発センターに移る。研究所では蒸溜所や瓶詰工場で働く社員の官能統一訓練の事務局に籍を置いた。
この訓練とは原酒の仕込水をはじめウイスキー、スピリッツ、ワインなどにわずかな異臭を入れ込み、テイスティングさせるというものだ。もちろん蒸溜所や瓶詰工場など、異臭が入り込まないよう環境整備に万全を尽くし、従業員全員が最善の努力をつづけている。だが万が一入り込んだら大変なことになる。入り込む余地が有り得ないと思われる臭い、たとえばカビ臭、生臭さを連想するアミン臭といったものまでをも潜ませる。
「はじめての時は嗅いでもなかなかわからない。ほんとに微量しか含んでいませんから。ところが何回か官能訓練をつづけていくうちに、感度が高まっていくものです」
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