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椎名誠写真椎名誠 シングルモルトウイスキーの旅

第2回 スペイサイド堪能編

 

新緑のスコットランドに降り立ったシーナは、シングルモルトウイスキーの蒸溜所が林立するスペイサイドに突き進んでいった。蒸溜所をめぐり、職人とふれあい、村の人々と飲み語りあった。そして、珠玉のシングルモルトに酔いしれていくのであった。

1400年代後半に建造された「オーティンドーン城」を背にして初夏の風に吹かれながらグレンフィディックを味わう筆者

立派な酒になるんだよ

これまで世界のいろんな国でビール、ワイン、テキーラ、ラム、泡盛などのサケづくりの現場を見てきた。「できるまで・・・」を実際に目のあたりにするとそのサケがどういうものであるのか、ということがよくわかってそれらを飲むのがさらに楽しくなってくる。

この旅ではスペイ川流域の蒸溜所をあちこち歩いたのでシングルモルトウイスキーがどうやってつくられるのか、ということもだいぶわかってきた。ではそれをオサライすると__。

仕込み。麦芽を粉砕し温水とまぜて麦芽のでんぷんを糖化させる。この水をマザーウォーターというバルヴェニー蒸溜所でフロアモルティングに挑む筆者。この伝統的手作業をいまも行う蒸溜所は数少ない

まず原料の麦を水に浸して発芽準備させる。巨大なタンクの中に水を充分吸ってふくらんだ麦がぎっしり大量に詰まっている。それを見ると「立派なおいしいウイスキーになってかえってくるんだよ!」とはげましてあげたくなる。ウイスキーとなって世に出るのは早くても10年後くらいだからなあ。次にこれを製麦室で発芽させる。蒸溜所によっては、旧来のフロアモルティングという牧歌的な方法で行っている。すなわちフロアにぎっしり20センチぐらいの厚みで敷きつめた麦を木のスコップのようなものでまんべんなくひっくりかえしていくのだ。

乾燥塔(キルン)でピートをくべる筆者。ピートとは数千年もの歳月をかけて植物が泥炭化したもの

発芽した麦はキルンといういぶし塔のような所に入れられ下からピート(泥炭)でたきながら乾燥させていく。この段階でウイスキー独特のスモーキーな香りや風味が仕込まれるのだ。

発酵樽から汲み上げた大麦の酒である、ストロングビール(もろみ)を試飲する筆者

続いて64度に温めた「その土地のいい水」にまぜる。これを麦汁という。まだアルコール度はゼロだが、ほんのり甘くコクがあってうまいのだ。この麦汁にイーストを加えて発酵させる。ここまではビールづくりの工程に似ている。この段階ですでにアルコール度8%ぐらいあり、酸味が強く、すっぱい味だ。「ストロングビール(もろみ)と呼ばれていて職人さんが時おりのんでいるんですよ」と案内人がおしえてくれた。

50時間ほど発酵させたものをポットスチルで蒸溜する。1回の蒸溜でアルコール度24度になる。2回目の蒸溜で65〜70度になりこれがすなわちウイスキーの原液である。味の不安定な蒸溜したてのものと最後のものを除いてまん中の「ミドルカット」されたものが貯蔵樽の中に入れられ長い眠りにつく。

いいウイスキーには原料の”いい麦と水”がきわめて重要、ということがよくわかってきた。

マッカラン蒸溜所でいい水を探すダウザーという珍しい仕事をしている老人を紹介された。ネルソン・ジョーブラック・マッチさん。70歳ぐらいだろうか。朴訥な農夫というかんじだがえらく話好きらしくすぐにその水脈捜しの技を解説つきで披露してくれた。