「スモーキーな香りがする」、「ピート香が効いている」など、ウイスキー特有の香味表現を見聞きしたことはありませんか?
今回のフライトでは、主にスコッチウイスキーに突出して見られることのある独特の香味“スモーキー”の正体に迫ります。
まず試していただきたいのは、潮の香りを抱いた強烈なピート香をもつ『ラフロイグ セレクト』。惚れ込むか、嫌いになるかのどちらかと称される個性派の筆頭です。比べてお愉しみいただきたいのが、アイリッシュウイスキーの異端児ともいわれる『カネマラ』。しなやかな口当たりで、爽やかさを兼ね備えた“スモーキー”を感じていただけることでしょう。
そもそも“スモーキー”ってなに?
スモーキーやピーティー(ピート様)という言葉を日本語に言い換えると、「燻香(くんこう)」。煙で燻したような香りのことを表します。そうした香りは、モルトウイスキーの原料である「大麦麦芽」を乾燥させる際に、ピートと呼ばれる泥炭(でいたん)を焚いていることから得られるもの。生産地の多くがピートを豊富に採掘できることから生まれた、伝統的なスコッチウイスキーの製法です。そしてピートとは、約1000年の年月をかけて堆積した腐植土のこと。採掘された土地の自然環境によって、さまざまな特長のあるフレーバーが現れます。
ラフロイグ蒸溜所があるアイラ島は、日本の淡路島と同程度の小さな島。全島の1/4が厚いピート層に覆われており、島民たちは古くから暖炉の燃料として採掘したピートを使用してきました。周囲を海に囲まれているため、アイラ島のピートには海藻が含まれています。このことが、『ラフロイグ セレクト』の香味が磯や潮を感じさせる所以となっています。
1815年創業のラフロイグ蒸溜所。“ピート”を効かせた個性派として、スコッチウイスキーの発展に大きく貢献してきました。「ラフロイグ」は、シングルモルトウイスキーで初めて、英国王室御用達ブランドに認定されていることでも知られます。ラベル上部を飾るのは、“平和の楯”と呼ばれるプリンス・オブ・ウェールズの紋章です。
アイルランドの首都ダブリンから北へ約67マイル。北アイルランドとの国境間近に位置するクーリー蒸溜所は、1989年からウイスキー製造をはじめた新進気鋭の蒸溜所です。一般的にアイリッシュウイスキーは、ピートを使わないスムースな飲み口が特長ですが、『カネマラ』はピートを使用し、スコッチウイスキーにならった2回蒸溜を採用しています。
緑の大地が広がり、エメラルド島とも呼ばれるアイルランド。『カネマラ』は、しっかりとしたスモーキーさを感じさせながらも、緑の大地を想わせるしなやかでスムースな香味がユニークです。クーリー蒸溜所では、他にもさまざまなウイスキーを発表しており、歴史は浅くとも、国際的に注目を浴びる存在となっています。
ウイスキーは、つくられる土地の気候風土を色濃く宿すもの。
“スモーキー”の奥に潜む個性を存分に味わいましょう!
“スモーキー”に注目した今回のフライトはいかがでしたか?親しみのない銘柄を試すときは、多彩なウイスキーが揃うバーを訪れるのもいいですよ。ストレートで飲みきれないと思ったら、バーテンダーに声を掛けて、水や氷を足したり炭酸を加えたりしてもらいましょう。
『ラフロイグ セレクト』と『カネマラ』を飲み比べることで、ウイスキー特有の香味、“スモーキー”の魅力を体感していただけたのではないでしょうか。飲み方によってガラリと印象が変わる点も面白いですね。魚介類の燻製は、スーパーや酒販店で手に入るものもたくさんあります。気軽にアレンジして、あなた好みの組み合わせを試してみてください。