バーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえる

エリス・アイランド

舞台は20世紀の幕が開けた1901年。イタリア、シチリアのマフィアから逃れたひとりの少年が船でニューヨークへ着く。入国管理官が少年に名前を尋ねるが、言葉が通じないため何も答えることができない。名札には「ヴィトー・アンドリーニ。コルネオーネ村」と記されていた。そのため管理官は少年の名をヴィトー・コルネオーネとして登録する。

これは映画『ゴッドファーザー PartⅡ』で、後年にコルネオーネ・ファミリーを築き、ゴッドファーザーとなるヴィトー少年がエリス島のアメリカ合衆国移民局に抑留された1シーンである。

エリス島。アッパー・ニューヨーク湾内にある、ほとんどを埋め立てで造成された小さな島。面積は約11ヘクタール、東京ドーム2.5個分しかない。

1892年から1954年の62年間、この島に移民局がおかれた。ヨーロッパからの移民は必ずこの島で入国審査され、アメリカへ入国した。その数1700万人。船はニューヨーク湾に入ると、左手にリバティ島の自由の女神像を望みながらエリス島に到着する。

移民にとってこの島は、新天地アメリカの“希望の島”であった。入国を認められると、出迎えの親族や友人と抱擁やキスで喜び合い、“キッシング・ポイント”とも呼ばれた。一方、感染症の疑い、身元不十分の場合は長期間抑留され、最悪は本国へ送還されることもあり、“嘆きの島”との呼び名もあった。


さて、ついに20世紀へ突入する。今回はその序章として語ってみる。

20世紀は“アメリカの世紀”となった。歴史の流れを見ると、17世紀後半から18世紀にかけては“フランスの世紀”といえよう。太陽王、ルイ14世はヨーロッパに大きな影響を与えて君臨し、フランス語が国際公用語であった。

しかしながら1789年のフランス革命が打撃となり、その座がイギリスへと次第に移っていく。

それまではヨーロッパの島国、フランスにしてみれば強さもあるが田舎の王国的存在であったイギリスだが、産業革命によって繁栄するとともに、1803年から1815年にかけてのナポレオン戦争でフランスを打ち破り飛躍する。そして海洋国家として“太陽の沈むことのない大帝国”を築き上げ、19世紀は“イギリスの世紀”となる。また、イギリスから独立したアメリカが次第に力をつけていくことも手伝い、国際公用語は次第に英語へとシフトする。

*今回の連載内容は
第22回
「ジャーマン・アメリカン」
からのつづきです。

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