バーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえる

ニューオーリンズ・ジャズ

『聖者の行進』(“When The Saints Go Marching In”/邦題『聖者が街にやってくる』)は、とてもノリのいい軽快な曲である。スポーツをはじめさまざまなイベントによく使われている。

いつ頃この曲が誕生したかは定かではないが、アメリカの黒人霊歌のひとつだそうだ。しかも葬儀で演奏されていたものらしい。

現在でもルイジアナ州ニューオーリンズではブラスバンドをともなった伝統的パレードをおこなっている。埋葬に向かうときは静かな賛美歌や葬送曲を奏で、埋葬時には荘厳で悲哀に満ちた曲調、そして帰路は明るいマーチング・パレードへと曲想が変わっていく。墓地までの演奏は故人を悼む調べであり、帰りは神に召された祝福の曲調となる。このときに演奏される『聖者の行進』は、聖者が故人を迎えにやってきた、という意味になる。

『聖者の行進』はディキーランド・ジャズの代表的ナンバーであり、また19世紀後半にニューオーリンズでジャズの原型が生まれたといわれている。


ニューオーリンズはミシシッピ川の河口、メキシコ湾に面した場所にある。町はフランス人によって1718年に誕生した。1722年からはフランス領ルイジアナの首府となり、1763年にパリ条約によってスペイン領となる。1801年にはナポレオンがルイジアナをフランスに取り戻したが、財政的理由から1803年にアメリカ合衆国に売却するという特異な歴史を持つ。そしてミシシッピ川流域の農産物の集積地、輸出港としての重要な役目を担っていた。バーボンウイスキーもニューオーリンズへと運ばれた。

音楽の歴史としては、18世紀に黒人が市内のコンゴ広場(現ルイ・アームストロング・パークの一部)に集まり、パーカッション・ダンスに興じていたといわれている。19世紀になり、1817年ニューオーリンズ市は、アフリカ系奴隷が日曜日に集まり、ダンスに興じることを許可する法律を制定している。アフリカン・ビートはとても刺激的で、これを目当ての観光客もいたとほどだった。

コンゴ広場から発展していったのがヨーロッパ的なブラスバンドを取り入れた音楽であり、管弦を使ったダンスミュージックである。

*今回の連載内容は
第22回
「ジャーマン・アメリカン」
からのつづきです。

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