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「都市の居間」としての美術館をめざして

美術館の設計を手がけたのは建築家・隈研吾(くまけんご)氏。めざしたのは「都市の居間」としての居心地の良い美術館です。日本の伝統と現代を融合させた「和のモダン」を基調に、安らぎと優しさに溢れた空間が実現しました。外観は白磁のルーバー(縦格子)に覆われ、透明感すら感じさせます。館内には、木と和紙を意匠に用い、和の素材ならではの自然のぬくもりと、柔らかい光を表現しています。また、館内の随所で床材にウイスキーの樽材を再生利用しています。

展示室は3階と4階の2層からなり、3階には天井高9.3mの吹き抜け空間を設けました。隣の展示室との間は可動壁で隔てられ、襖や障子のように開け閉めすることで、多目的な空間利用が可能になっています。また、反対側の巨大なガラス面には、2枚の格子をスライドさせて光を調節する「無双格子(むそうごうし)」を設置。外光を遮断した展示空間から、緑溢れる外景を楽しむ憩いの空間まで、さまざまな演出が可能です。6階には、さまざまなイベントに使用できるホールや、旧美術館から一部を移築した茶室「玄鳥庵(げんちょうあん)」を備えています。3階にはミュージアムショップとカフェが一体化したshop×cafe(ショップバイカフェ)も併設、観覧後に余韻を楽しんでいただく施設の充実も図っています。

サントリー美術館 ヴァーチャルウォークスルー

「サントリー美術館 ヴァーチャルウォークスルー」では、美術館建物を3DCGで再現しており、建物内部を自分の足で歩いた時と同じ視点でご覧になる事ができます。サントリー美術館の空間の魅力をお楽しみください。

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施設概要

1F:エントランス
3F:エントランス、総合受付、展示室、shop × cafe
4F:展示室

6F:ホール、茶室「玄鳥庵」、メンバーズ・サロン

【設計】
隈研吾建築都市設計事務所+株式会社 日建設計
【建築・設備工事・空気環境評価】
株式会社竹中工務店
【全体面積】
約4,700m2
【展示室面積】
約1,000m2
【付帯設備】
収蔵庫、ショップ、カフェ、茶室、ホール、会員専用サロン等

3階展示室 吹き抜けスペース

4階展示室

フロアガイド

都市の中の「居間」としての美術館 ― 隈 研吾

都市の中の「居間」として、この美術館建築を構想した。背景には、都市の室内化という現象がある。通信と移動のテクノロジーが、かつて物と物との間に存在していたすべての距離を消滅させ、都市全体を一つの大きな家の「室内」へと変貌させつつある。その大きな家の中には廊下はたくさんあるし、食堂もたくさんあるが、ゆったりとくつろげる「居間」はない。時間がゆっくりと流れ、親しい人と人、人と物との間で、くつろいだ会話が成立するような「居間」は見つからない。サントリー美術館が東京というノイジーな都市の中で、そんな静かな「居間」となって欲しいという想いで、図面をひいた。

二十世紀の人々が美術館に求めていたのは、大げさな「都市のモニュメント」であったが、二十一世紀の人々が求めるのは、安らげる「居間」である。そして実は、早くから「生活の中の美」をテーマとして活動してきたサントリー美術館ほど、「居間」に相応しい美術館はない。この美術館は、世界の新しい潮流の先端にあって、あるべき姿を示すだろう。

「居間」の建築は、大げさなこけおどしであってはならないと考えた。生活で慣れ親しんできた、人に優しい素材―例えば肌に優しい白磁、湿度を保つ桐、樽に使われるホワイトオーク―を用いて、この「居間」は構成されている。日本の伝統的な窓の意匠である「無双格子」にヒントを得た光の調整装置を公園の緑の前面に設けた。この装置が外の光と風景を和らげて、「居間」の室内へと運んでくる。日本人は、こんな装置をうまく使って、四季の流れ、時の流れを楽しんできた。

美しいアートと、優しい素材と、柔らかな光に包まれて、ゆっくりと時間が流れ出す。それは、アートと人間との間の新しい関係性を人々にじっくりと味わってもらうための場所となるであろう。

隈 研吾(建築家)

1954年横浜生まれ。1979年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所主宰。自然と技術と人間との新しい関係を切り開く建築を提案。主な作品に「亀老山展望台」(公共建築賞優秀賞、「JCDデザイン賞'95」文化・公共施設部門最優秀賞受賞)「高知県梼原町地域交流施設」(通産省選定グッドデザイン賞施設部門・新いなかデザイン賞大賞受賞)「水/ガラス」(アメリカ建築家協会ベネディクタス賞受賞)「森舞台/宮城県登米町伝統芸能伝承館」(日本建築学会賞受賞)「馬頭町広重美術館」(村野藤吾賞、林野庁長官賞受賞)「石の美術館」(インターナショナル・ストーン・アキテクチャー・アワード受賞)、「長崎県美術館」(マーブルアーキテクチャーアワード2005)。2002年にはフィンランドよりスピリット・オブ・ネーチャー_ 国際木の建築賞を受賞。また、和紙や石、竹や土、プラスティックの水ブロックから、形状記憶合金まで、あらゆる素材での常識の枠に収まらない独創的な仕事を展開している。著書に「反オブジェクト」(筑摩書房)「新・建築入門」(ちくま新書)「建築的欲望の終焉」(新曜社)「負ける建築」(岩波書店)等。

→隈研吾建築都市設計事務所 公式サイト