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コーヒーの生豆から「美味しさ」を予測できる成分指標を発見

世界にはさまざまなコーヒー豆がありますが、その美味しさは、焙煎した豆から淹れたコーヒーを飲んでみなければ判断できません。もしも、ただ豆を見るだけでその美味しさがわかれば、私たちはいつでも美味しいコーヒー豆を選べるようになるはずです。そこで、私たちは焙煎前の生豆に含まれる成分に着目し、その含有量から美味しさを予測する方法を開発しました。
コーヒーは収穫時の実の熟度が高いほど美味しいと言われます。私たちは、生豆の数ある成分からアミノ酸のトリプトファンの量をもとに収穫時の実の熟度を予測できることを明らかにしました。また、生豆から新規のイソ吉草酸配糖体を発見し、風味の豊かなコーヒーほどその成分量が多いことを見出しました。これらの研究成果はコーヒーの美味しさを紐解く点からも重要な発見であり、世界に先駆けて明らかにしたものです。

ぶどうみたいなコーヒーの生豆

コーヒーの美味しさを生豆から客観的に判断したい

コーヒー豆が持つ美味しさは、官能評価という手法によって香りや味わいのバランスによって評価してきました。しかし、嗅覚や味覚の感度は人それぞれ異なり、一定の尺度で評価するためには、評価者の訓練や評価の際の環境設計など綿密な準備が必要となります。そこで私たちは、人の感覚に左右されない客観的な美味しさの尺度をつくりたいと考えました。コーヒーの香りや味は、生豆に無数に含まれる天然の成分が焙煎によって変化することで生じます。私たちは生豆に含まれる成分の種類と量のバランスがコーヒーの美味しさを決めると考え、生豆から美味しさの鍵となる成分の探索を行いました。

焙煎前の生豆は白っぽい色
焙煎したコーヒー豆(左)と焙煎前の生豆(右)

生豆に含まれる数千種類の成分を網羅的に解析

生豆にはたくさんの種類の成分がありますが、その中には極わずかしか含まれないものもあります。種類によっては含有量に寄らずコーヒーの風味に大きく影響する成分があるため、美味しさの鍵となる成分の探索に向けて微量な成分も検出できる解析技術が必要とされました。そこで、私たちは医療分野で微量の血液や唾液から病気の診断を行う際に使われるメタボロミクスという方法を新たに導入しました。この手法を使えば、極わずかな量の成分も含め、数千種類の成分について含有量の変化を網羅的に解析できます。

熟度によって増減する成分を発見コーヒーの風味との関係を解明

コーヒーは収穫時の実の熟度が高いほど美味しい豆であると言われています。そこで私たちは、コーヒーの実の熟度に応じて変化する代謝物の中に、美味しさに関わる成分があると予測しました。共同研究先であるハワイ農業研究センターのコーヒー畑で管理されている9つの品種から熟度の異なる実を収穫し、生豆の成分をメタボロミクスで解析しました。その結果、未成熟な実から得た生豆には、トリプトファンというアミノ酸が多く含まれ、その量は実が成熟するにつれて減少することを発見しました。

トリプトファンはイネやトウモロコシにおいて、オーキシンという成長ホルモンの前駆物質であることが知られていましたが、研究を通じてコーヒーの実の成熟過程においても重要な成分であることを世界で初めて解明しました。さらに焙煎の影響を検証した結果、トリプトファンは不快な未熟臭のもととなるインドール類を生成することがわかり、熟度とコーヒーの風味の関係が明らかとなったのです。

丸いシルエットのコーヒーノキ
ハワイ農業研究センターのコーヒーノキ
コーヒー果実はオリーブの実みたいにいろいろな色
収穫した熟度4段階のコーヒー果実9種

生豆からコーヒーの豊かな風味に関わる未知の新規成分を発見

さらに、メタボロミクスによって成分の探索を進め、生豆の中から新規成分「イソ吉草酸配糖体」を世界で初めて発見しました。
検証の結果、この「イソ吉草酸配糖体」の多い生豆を焙煎して淹れたコーヒーは風味が豊かになることが明らかとなり、トリプトファンとイソ吉草酸配糖体を独自の「指標」として美味しいコーヒー豆を見分ける方法を確立しています。

白衣を着て分析中の男性
高精度な分析装置を駆使し、微量な成分まで分析
コーヒー豆を手ですくい取っている

つくりたい美味しさを実現できる豆選びも可能に

今回の知見を用いることで、たとえば美味しい生豆だけを選り分けて使う技術を開発できる可能性があります。さらには美味しさに関わる成分の量を増減する技術の開発につなげることも可能です。一般に、コーヒー豆の品質は、市場での流通価格や産地でつけられた等級など、売り手側によって設定された基準を目安に判断されています。原料の買い手側である私たちが美味しさを判断できる独自の「指標」を持つことで、豆それぞれの特性を生かした商品開発が可能となるでしょう。私たちは、今後もさらに研究を進めて「指標」を軸に独自の美味しいコーヒー豆をつくり出すことを目指しています。よりいっそう美味しいと思えるコーヒーを実現するため、これからも研究を続けていきます。

関連リンク
ニュースリリース「コーヒー生豆の成分情報から焙煎・抽出後のコーヒーの美味しさを予測できることを確認」(2015.04.16)
ニュースリリース「コーヒーの香味に影響するコーヒー果実の熟度と生豆に含まれる「トリプトファン」が、高い相関性をもつことを世界で初めて解明」(2014.09.11)
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