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お酒をつくる技術で、木や草から石油に代わるエネルギーをつくる

私たちは、麦芽やブドウ、サツマイモなどの農産物から、ビールやウイスキー、ワイン、焼酎などのお酒をつくってきました。その成分であるアルコールは、酵母による発酵という過程で生み出されます。アルコールは、私たちの生活に潤いを与える嗜好品としてだけではなく、生活を快適にする燃料エネルギーとしても利用されています。現在の主要な燃料エネルギーは石油や天然ガスなどですが、埋蔵量には限りがあります。
また、これらを利用すると大気中の二酸化炭素が増加し続けますが、二酸化炭素は地球温暖化の原因物質の一つであるとして、現在問題視されています(温暖化の主な原因には諸説あります)。この二つの問題を解決する手段として、未利用の木や草からアルコールを生産する研究に取り組みました。
※この研究は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに参画して行いました。

廃棄物の木や草を原料に、CO2も増やさないエネルギーを作り出す

大量の農産物を原料として燃料アルコールの生産を行うと、人の食糧や家畜を育てる飼料が不足することが懸念されます。また、それが原因で農産物の価格が高くなって、確保が難しくなることも危惧されています。そこで、今まで廃棄物として捨てられていた木や草を新たな原料にしてエタノールを生産することで、燃料エネルギーの生産と、地球温暖化の抑制の両方を実現しようと考えました。木や草は、自身の成長に必要な光合成の過程で、大気中の二酸化炭素を吸収して酸素を作り出しています。したがって、アルコールをエネルギーとして燃やした際に生まれる二酸化炭素は、再び木や草が成長する過程で吸収するという循環が生まれます。つまり、石油エネルギーを使い続けることとは異なり、草や木など「バイオマス」と呼ばれる原料からつくられるエネルギーであれば、大気中の二酸化炭素の量は増加しないと考えられるのです。

二酸化炭素の循環イメージ
農産物とバイオマスのアルコール生成の違い
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「バイオマス」からもアルコールをつくるために酵母の働きに注目

麦芽やサツマイモといった農産物に含まれるデンプンは、ブドウ糖がたくさんつながってできています。このデンプンを麦芽やコウジカビが持つ酵素でブドウ糖に分解し、そのブドウ糖を酵母が食べることでアルコールがつくられます。一方、木や草などの「バイオマス」には、主にセルロース、ヘミセルロースやリグニンが含まれていて、とても堅い構造をしています。

セルロースはデンプンと同じブドウ糖でできているのですが、ブドウ糖の「つながり方」がデンプンと違っているため、お酒に用いられている酵素の働きではブドウ糖に分解することができません。さらに、セルロースを分解できる酵素群は、現状のままでは活性が不十分で、かつ生産コストが高いという問題があります。そこで、セルロースをブドウ糖に分解する酵素を生産する能力を、酵母自身に持たせることで、分解効率の向上とコスト低減を試みました。また、ヘミセルロースは、主に「キシロース」という別の糖でできていて、酵母がアルコールを生み出す原料には向いていません。そのため、酵母がキシロースを食べて、アルコールを効率よく生産ができるようにする工夫も必要でした。

そのために私たちが取り組んだのは、「糖化発酵同時進行型バイオプロセス(CBP)」というもので、酵母自身にバイオマス分解酵素を生産させ、同時にアルコールをつくらせるという方法です。酵母にセルロースとへミセルロース分解酵素を生産する能力と、キシロースを効率よく発酵する能力を与えるためには、遺伝子組換え技術を用いました。目的の多くの性質を付与した遺伝子組換え酵母の育種には、複数の遺伝子を導入する必要があります。私たちは、遺伝子組換え酵母を作るために欠かせない技術として、独自のマーカーリサイクリングシステムを開発しました。

廃棄物を活用する技術で可能性が生まれる

今回の研究では、木や草などの「バイオマス」から酵母を使ってアルコールをつくることにチャレンジしました。しかし、アルコールだけではなく、石油製品の代替となる基本の物質であったり、有用な酵素であったり、いろいろな物質を「バイオマス」から生産できる可能性があります。今後も、バイオ技術を生かして廃棄物だったものや未利用だったものを資源として活用し、再生可能な循環型社会の実現に生きる研究をすすめていきます。

大きな木
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