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サントリー学芸賞

選評

政治・経済 1979年受賞

大嶽 秀夫(おおたけ ひでお)

『現代日本の政治権力経済権力』

(三一書房)

1943年、岐阜県生まれ。
京都大学法学部卒業。
東京大学大学院法学部政治学研究科在学中、フルブライト奨学生としてシカゴ大学政治学部に留学。専修大学講師、同助教授などを経て、現在、東北大学法学部教授。

『現代日本の政治権力経済権力』

 この書物は日本の政治のなかで、ビジネスと政治との関連の側面についてケース・スタディを試みた業績である。現在の日本政治に関する学術的な研究業績があまり多くないのがわが政治学会の実情であるが、この書物は、そのなかで日本の政治の新しい分野を対象にとりあげた新進研究者の業績として高く評価された。
 日本の政治を研究する場合、伝統的な、古い要素の側面に注目してきたのが、これまでの業績にみられる大きな傾向である。これに対して、この書物の著者はシカゴ大学留学の成果を活用し、新しい着眼のもとに、市場原理のなかで活動する自由企業が政治と関連する側面を正面から対象に取りあげた。この書物の分析は、ビジネスについては企業、業界、財界の三レベルにわたり、ビジネスと政治が関連した具体例としては、欠陥自動車問題、日米繊維交渉、新日鉄合併問題の三ケースを取りあげている。圧力政治の複雑な過程の追跡は丹念であり、官庁と企業との機能的協力関係の記述も興味深い。
 難をいえば、この書物の著者が政治学系統の出身であるためか、経済関係の参照文献には玉石混淆の欠点がある。この書物の標題も内容を適当に表現しているとはいいがたく、たとえば『圧力政治のケース・スタディ』といった標題のほうがより適当であったろう。
 しかし、新しい領域に正面から取りくんだ努力は高く評価されるべきものであり、著者が若くその将来性が期待されることもあわせ考えて、授賞することとした。

京極 純一(東京大学教授)評

(所属・役職等は受賞時のもの、敬称略)

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