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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

山形県 山形市 2007年受賞

山形国際ドキュメンタリー映画祭
世界的な評価を受けるドキュメンタリー映画祭

代表:田中 哲 氏

2007年3月更新

活動紹介動画(1:47)
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写真
映画祭につめかける観客

 1989年、人口およそ25万人の山形市の市制100周年記念事業として、アジアで初めての国際ドキュメンタリー映画祭がスタートした。その後隔年で開催され、2007年10月には第10回を迎える。今では、アムステルダムやスイスのニヨンに並び、世界でも代表的なドキュメンタリー映画祭に成長している。

 実は、山形市は以前から映画が盛んで、映画ファンによる自主上映活動も活発であった。そうした土壌のうえに種が蒔かれたこの映画祭は、第1回目から、映画ファンだけではなく、300人近い一般市民がボランティアとして運営に参加している。国内外から集まった映画監督らをアテンドし、観光に案内したり、川原での芋煮会でもてなす。また、わざわざ遠方から訪れた観客にも親切に対応する、スタッフの素朴なホスピタリティが好評を博している。

 何よりもこの映画祭の評価を高めたのは、上映される映画の質の高さである。
山形国際ドキュメンタリー映画祭では、コンペティション形式で、公募により世界各国から集まった作品に賞と賞金を出している。近年の応募数は1500本以上になるが、プロの映画関係者、事務局、一般の山形市民からなる選考委員が、連日連夜、休日も返上して、まだ原語のままの作品を見続け、すべてに眼を通す。数度にわたる選考委員会での大激論の末に、賞の審査対象として映画祭で上映するにふさわしい作品を絞りこんでいく。このような選考作業を経て、高い作品レベルを維持しているのである。

 もうひとつの特徴は、アジアのドキュメンタリー映画に力を入れてきたことである。第1回目の映画祭開催当時は、アジアではまだ自由な映像表現が難しい地域が多かったこともあり、応募作はあまりなかった。アジア部門を設け、新進作家の紹介、顕彰による支援を続けた結果、近年では600本近い作品がアジア各国から寄せられ、大賞受賞作も生まれている。山形市はアジアのドキュメンタリー映画の中心地となっていると言っても過言ではない。

 約1週間にわたる映画祭の期間中、応募作の中から選ばれた作品が市内数ヶ所の映画館や公共施設で上映される。作品の監督も招聘し、ワークショップや討論会、シンポジウムなども開催される。また、コンペ以外に、「大東亜共栄圏と映画」「日本に生きるということ」など、この映画祭ならではの企画の特集映画も上映され、映画祭で上映される映画は150本近い。観客はおよそ2万人。日本全国、遠く海外からも観客や多くの映画関係者が集まり、山形市は国際色豊かな映画の街になる。

 2007年4月、映画祭の実行委員会がNPO法人として行政から独立した。今後は、映画祭期間中だけではなく、日常的なレベルでも、より多くの地域住民に幅広くドキュメンタリー映画を浸透させることで、映画の街・山形の地域文化として育てていくことが期待される。

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