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サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

大阪府 大阪市 2004年受賞

中之島まつり
中之島を市民に愛される場所にするため、30年にわたり手づくりのまつりを開催

代表:森 一貫 氏

2005年2月更新

活動紹介動画(01:50)
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写真
中之島まつりの風景

 大阪市の中心部にある中之島公園には、中之島公会堂(正式名・大阪市中央公会堂)、府立図書館、日本銀行大阪支店など、明治・大正期に建造された名建築が並び、「水の都」大阪の顔となっている。

 中でも、ネオ・ルネサンス様式の美しい外観を持つ公会堂はひときわ人々の目を引く存在である。この建物は、明治の富豪・岩本栄之助の寄付をもとに大阪市によって建設された。大正7年の完成当初から、内外の歌劇団によるオペラ公演が行われ、華やかな文化活動が繰り広げられた。また、戦後もヘレン・ケラーやガガーリンの講演会が開かれるなどして活用されてきた。しかし、築50年が過ぎて建物の老朽化が進み、1970年代には、市庁舎の建て替えにあわせ、公会堂を始め中之島一帯の建築群を取り壊し、鉄筋の高層ビルにするという計画が立てられた。

 そのような動きに対し、大阪の財産を守ろうと、建築家や学者を中心として、「中之島をまもる会」が発足。署名運動や大阪の歴史の勉強会などを行う中で、「単なる反対運動ではなく、市民に“川と水と赤レンガ”の魅力を再認識してもらおう」と、1973年5月に第1回「中之島まつり」を開催した。地元放送局も大きく取り上げ、200団体、3万人が参加するイベントとなった。同年10月に第2回、翌年5月に第3回と回を重ねるなかで、府立図書館が国の重要文化財に指定され、日銀大阪支店も外観を保存した上での改築へと設計が変更された。

 一方、中之島まつり自体も規模が拡大し、1975年からはボランティアメンバーが「中之島まつり実行委員会」を組織し、まつりの運営を行うようになった。その頃からゴールデンウィーク期間に3日間開催するのが定着し、多いときには50万人を集めるまでになった。まつりでは、企画、準備、運営をはじめ撤収から清掃まで市民自らの手で行い、おしきせでない市民による、市民のためのまつりという姿勢を貫いている。意欲のある者は誰でも参加でき、立候補すれば企画の責任者や、実行委員長にも就くことが出来る。未経験で運営に参加する者も、試行錯誤を繰り返しながら学び、成長して行く。まつりそのものが、自立した市民を生み出す母体となっているのである。

 このような活動を通じて、人々の認識も、「どうして使い勝手の悪い古い建物を残す必要があるのか」というものから「大阪の財産である名建築を残そう」と変わり始め、1988年には、当時の大阪市長によって公会堂の永久保存が決定されるに至った。

 公会堂は、3年半の工期をかけて修復され、免震工事、バリアフリー化が行われて、2002年11月にリニューアルオープンし、同時に国の重要文化財にも指定された。その上単なる保存ではなく、連日様々な催しが開かれ、立派に公会堂としての役目を果たしている。かつて一人の市民の善意から生まれた中之島公会堂が、中之島まつりに携わった多くの市民の活動を通じて蘇り、再び市民文化の舞台となっているのである。

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