ニュースリリース

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ニュースリリース

2008年9月

<ご参考資料>

サントリー株式会社

日本独自のミズナラ樽がもつ
香り成分の一部を解明
― 国際蒸溜酒会議で発表 ―


サントリー(株)と※1ICBD(The International Centre for Brewing and Distilling)、※2SWRI(The Scotch Whisky Research Institute)は、ミズナラ樽で熟成されたウイスキーが持つ特有の香り成分の一部を解明し、Worldwide Distilled Spirits Conference 2008(国際蒸溜酒会議2008年9月8日〜10日 開催地:イギリス)において発表しました。

今回の発表骨子は以下の通りです。

<発表演題>
共同研究
「樽材種のウイスキー熟成香に与える影響〜ミズナラ樽によって付与される特有香の同定〜」
(The Influence of Wood Species of Cask on Matured Whisky Aroma-The Identification of a Unique Character Imparted by Casks of Japanese Oak-)

発表者:サントリー(株)野口 雄志

<研究の背景>
ウイスキーは、様々な個性を持った数多くの原酒をブレンドすることにより、味わいに深みが増し、香りの幅が広がります。このため当社は、ウイスキー原酒をそれぞれ異なる香味を持った原酒につくり分ける技術開発を行い、世界でも類をみないほど多彩なウイスキー原酒を有しています。

ウイスキーは、通常オーク(楢)の木でつくられた樽に詰められ、数年〜数十年熟成します。樽の材質として、ホワイトオーク、ヨーロピアンオークなど、欧米産のオークが多く使われていますが、当社はこれらの樽材に加えて、日本に生息するミズナラ(英語名ジャパニーズオーク)を用いています。このミズナラの樽で熟成させたウイスキーは、年数が20年を超えると、独特の香りを持つと言われています。この香味は、伽羅香、またビャクダンを想わせるオリエンタルな香りのほか、近年ではココナッツ様の香りとも表現されており、海外のブレンダーや鑑定家からも一目置かれ、高い評価を得ています。そこで、本研究ではこのミズナラ樽熟成のウイスキーの香りのうち、ココナッツ様の香りに着目し、その成分の解明を目指しました。

<研究の概要>
ミズナラ樽、ホワイトホーク樽熟成ウイスキーのココナッツ様の香りの強さを比較しました。その結果、ミズナラ樽熟成ウイスキーのほうが、ココナッツ様の香りが強く感じられることが明らかになりました。(図1)

【図1】SWRIにおけるウイスキーのココナッツ様の香りの強さ(官能評価結果)

さらに、成分分析を行い、樽材から溶け出しココナッツ様の香りを持つことで知られているウイスキーラクトンの量、およびこのウイスキーラクトンのシス体とトランス体という二つのタイプの量をそれぞれ測定したところ、欧米産のオーク樽(ホワイトオーク・ヨーロピアンオーク)で熟成されたウイスキーではシス体の割合が高く、逆にミズナラ樽で熟成させたウイスキーではトランス体の割合が高いという結果が得られました。(図2)

【図2】樽材種の異なるウイスキー中のウイスキーラクトン量

シス体とトランス体は、どちらもココナッツ様の香りを持っていますが、一般的には、シス体のほうが香りが強く、その香りの強さはトランス体の約10倍と報告されています。
そこで、なぜ、トランス体を多く含むミズナラ樽熟成ウイスキーのほうが強いココナッツ様の香りを示すのか、添加試験※3により調べたところ、トランス体そのものの香りは弱いものの、ウイスキーに含まれる成分と相互に作用することで、単体で存在するよりも香りの総量が大きくなり、強いココナッツ様の香りを示すことが分かりました。

これらの結果から、ミズナラ樽熟成ウイスキーはウイスキーラクトンのトランス体を多く含むことにより、強いココナッツ様の香りを示していることが明らかになりました。

<結論>
ミズナラ樽熟成ウイスキーの主要な香りの一つであるココナッツ様の香りは、樽材から熟成中に溶け出すウイスキーラクトンのうち、シス体とトランス体のバランスに因るものであるということが分かりました。当社は、今回の結果を今後の樽材選別・調達に活用するとともに、製樽条件や貯蔵環境の因果関係を詳細に調査研究し、さらなる多彩な原酒づくりを目指します。

※1 ICBD(The International Centre for Brewing and Distilling)はスコットランドのHeriot-Watt大学にある醸造・蒸溜研究所で1988年に設立。ビールやウイスキーを中心とした研究に加えて、醸造技師、蒸溜技師などのコースもあり、酒類業界への教育的役割を担っています。
※2 SWRI(The Scotch Whisky Research Institute)とはスコッチウイスキー業界で唯一の研究所で、製品の安全性や製造技術に関する研究を行っています。多くのウイスキー会社と提携して情報交流を行っており、業界の中心的研究所として位置づけられています。
※3 シス体、トランス体それぞれ1ppmを、20%エタノール水溶液または、ウイスキーへ添加し、13〜15人のパネル検査による官能評価。

▼Worldwide Distilled Spirits Conference(国際蒸溜酒会議)について
国際蒸溜酒会議は、英国ビール醸造学会(I.O.B)スコットランド分科会において4年に一度開催されていたウイスキーの国際会議であるアヴィモア会議(Aviemore Conference)が前身で、2002年から全世界の蒸溜酒を対象とした会議として新たに設立されました。
ウイスキーをはじめラム、ジン、ウオツカ、テキーラ、焼酎など蒸溜酒の生産者、技術者および学術研究者による研究発表の場として3年に1回開催されています。



以上

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