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No.8604 (2003. 11. 6)
セサミンの脂質代謝・アルコール代謝促進作用を
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| 脂質代謝酵素の遺伝子発現に及ぼす影響の検証 |
栄養素としてからだに入った脂肪酸は、肝臓でβ酸化酵素とよばれる酵素により燃焼、分解されてエネルギーに変換されます。肝臓に脂肪が貯まる原因は、脂肪酸の燃焼が不十分であったり、脂肪酸の合成が高まったりするためと考えられます。そこで、脂肪酸を燃焼させるβ酸化酵素と脂肪酸を合成する酵素(脂肪酸合成酵素)が、セサミンによりどのように変化するかについて検証しました。
図1 セサミンの脂質代謝酵素遺伝子発現に及ぼす影響
※セサミンを投与したラットとオリーブ油のみを投与したコントロールラットと比較した倍率を示す。
※代表的な24種のβ酸化酵素と8種の脂肪酸合成酵素の遺伝子発現に及ぼすセサミンの影響について平均値を比較
<結果1>
セサミンを与えたラットは、オリーブ油のみを投与したラットに比べ(図1)、脂肪酸を分解する酸化酵素の遺伝子発現を2倍以上高めたことから、セサミンには脂肪酸を効率的にエネルギーに変換する作用があることが遺伝子発現レベルで確認できました。一方、脂肪酸合成酵素にはほとんど影響を与えませんでした。すなわち、セサミンには脂肪酸を燃焼させる作用が強く、からだに脂肪を貯めない作用があることが期待されます。
| アルコール代謝酵素の遺伝子発現に及ぼす影響の検証 |
アルコールであるエタノールは酵素により分解され、アセトアルデヒドに変わります。さらにアセトアルデヒドは、また別の酵素により酢酸へと分解されます。
エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素は、主にアルコール脱水素酵素(ADH)で、その他にも、図2に示したカタラーゼや肝ミクロソーム酸化系にある酵素(CYP2E1)がアルコールをアセトアルデヒドに代謝・分解することが知られています。アルコールから分解されたアセトアルデヒドには強い毒性があり、悪酔いや二日酔いの原因となることが知られています。このアセトアルデヒドを分解する酵素が、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)です(図2)。そこで、これらのアルコール代謝酵素遺伝子に対するセサミンの影響について検証しました。
図2 アルコール分解と分解酵素
表1 セサミンのアルコール代謝酵素遺伝子発現に及ぼす影響

※ADH、ALDHはどちらも単一の酵素でなく、ADH1,ADH4など、酵素ファミリーとして複数存在することがわかっています。そこで、ADH,ALDHに関しては代表的なものを複数とりあげました。
<結果2>
セサミンを与えたラットと、オリーブ油のみを投与したコントロールラットを比べ(表1)、それぞれのアルコール代謝酵素遺伝子の発現がどのように高まっているか調べました。その結果、セサミンを与えたラットは、アルコール脱水素酵素(ADH)の遺伝子発現を軽度高めましたが、カタラーゼや肝ミクロソーム酸化系にある酵素(CYP2E1)の遺伝子発現には影響を与えませんでした。一方、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)のうち、ALDH1クラスの遺伝子発現を3倍以上高めました。このことから、セサミンは、このアセトアルデヒドを分解する酵素の遺伝子発現を高めることがわかりました。
<結論>
セサミンの脂質代謝促進作用は、脂肪酸分解を促進して速やかにエネルギーに変換させること、また、セサミンのアルコール代謝促進作用はアセトアルデヒドの分解促進を介していることが遺伝子発現レベルで確認できました。これらの知見は、セサミンのメカニズム研究に留まらず、これからの新しい機能性食品の開発につながる成果になると期待されます。
※1 遺伝子発現
食品を摂取すると食品成分が体内に入ってきたことをセンサーが感知します。センサーは、摂取した食品を代謝、吸収してエネルギーとするために種々のタンパク質を合成する指令を出し、必要なタンパク質が作られます。タンパク質は、遺伝子(DNA、デオキシリボ核酸)からすぐにはできず、まず、遺伝子情報がRNA(リボ核酸)に読み取られます。これを遺伝子発現と言います。
※2 RNA
RNAは3種類に分類され、そのうち、メッセンジャーRNAと呼ばれるRNAの遺伝子情報が読み取られてタンパク質が合成されます。多くのメッセンジャーRNAが作られると多くのタンパク質が作られることか
ら、今回の実験では、RNAの量を測定することによりセサミンの効果を確認しています。
※3 DNAチップ
半導体技術を利用して遺伝子を高密度に貼り付けたもの。半導体をICチップと呼ぶのに対して、遺伝子を貼り付けたものはDNAチップと呼ばれる。今回は、1.5×1.5cmに約8,000個の遺伝子を貼り付けた
ラットDNAチップ(アフィメトリックス社製)を用いました。
▼本研究の一部は平成14年度農水省新事業創出等食品産業技術開発事業からの援助を受けて実施され、また、本研究の一部は平成15年度日本農芸化学会大会(3月31日〜4月3日、藤沢市)で発表しました。
▼国際ニュートリゲノミクス会議について
国際ニュートリゲノミクス会議は、ヨーロッパおよびアメリカの食品業界を含む産、官、学が一体となって2002年に設立されました。ニュートリゲノミクスという言葉は、栄養(ニュートリション)と遺伝子(ゲノム)を併せた造語で、栄養素が遺伝子発現に与える影響を研究することにより、栄養素の機能解明や機能性食品の開発について専門的にディスカッションするための会議です。今回で2回目となります。
以 上
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