サントリー(株)健康科学研究所(所長:木曽良信、大阪府三島郡島本町)は、名古屋大学医学部水谷栄彦教授と共同で女性ホルモンを補う働きをする植物成分「亜麻(あま)リグナン」の効能について研究を進めてきました。その結果、亜麻リグナンを摂取することによって更年期障害に特有のほてりなどの症状が軽減し、閉経後の骨粗鬆症の予防に効果があることが明らかとなりましたので、日本更年期医学会(10月26日〜27日、鹿児島)で発表します。
今回の発表骨子は、以下のとおりです。
▼発表演題
更年期障害モデル動物に対する亜麻リグナンおよび大豆イソフラボンの影響
発表者 サントリー(株)健康科学研究所 飯野妙子 ほか
名古屋大学産婦人科 水谷栄彦教授
研究の背景
閉経を迎える50歳前後の女性は、女性ホルモン量の低下によって、ほてり、鬱(うつ)、イライラなどの更年期障害が生じやすくなります。症状が重い人に対しては、産婦人科医によってホルモン補充療法(HRT)が施されます。アメリカでは更年期女性の30〜40%がHRTを受けているのに対して、日本では2〜4%程度しか普及していません。そこで今回は手軽に摂取可能で、更年期障害の諸症状を軽減することのできる安全な食品素材を探索し、亜麻の実(種子)に注目しました。
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世界的に、日本と北欧が更年期障害に悩む人が少ないと言われています。日本は大豆を食べていることがその一因とされ、現在大豆イソフラボンが注目を浴びています。一方、北欧では日本で大豆が食されているのと同じように、亜麻種子が、パンの材料やデザートのトッピングなどとして日常食べられている素材です。亜麻種子には、セコイソラリシネシロールジグリコシド(SDG)と呼ばれるリグナンが含まれています。SDGは閉経期に低下する女性ホルモンの働きを補い、更年期障害の諸症状を軽減する、新しいタイプの植物エストロゲンとして期待されています。サントリーでは、この亜麻リグナン(SDG)に注目し、亜麻種子より高濃度に抽出する技術を確立しました。 |
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植物の中には、女性ホルモンと同様の働きをする物質(植物エストロゲン)を含むものがあります。植物エストロゲンを含む食品を摂取することによって、更年期に乱れがちなホルモンのバランスを調整し、更年期障害の症状を緩和することができると考えられています。例えば、大豆に含まれるイソフラボンは、植物エストロゲンの代表として最もよく知られています。 |
実験1
更年期障害の動物モデルとして卵巣摘出マウス(33匹)を用いて亜麻リグナン摂取群、エストロゲン投与群、無投与群の3群(各群11匹)に分けました。亜麻リグナン摂取群には亜麻リグナンを0.08%含有する飲料水を自由に摂取させ、エストロゲン投与群には女性ホルモンの一種の17βエストラジオール*を毎日0.1μg皮下投与し、無投与群は通常の水を摂取させて、それぞれ5週間飼育し、各群の尾部皮膚温と大腿骨重量を正常マウスと比較しました。
*17β−エストラジオール(E2)はヒトと動物の共通女性ホルモンであり、エストロゲン投与はホルモン補充療法に相当します。
結果1
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無投与群のマウスでは、正常マウスと比較すると尾部の皮膚温度が上昇し、更年期障害のほてりに相当する症状が見られました。一方、エストロゲン投与群は、皮膚温度の上昇が抑制され、摂取開始後2週間目には有意な効果が認められました。亜麻リグナン摂取群でもエストロゲン投与群と同様に皮膚温度の上昇が抑制され、摂取開始後3週間目には有意な効果が認められました。 |
| (2) |
無投与群マウスでは正常のマウスと比較して、一定体重あたりの大腿骨重量が低下し、閉経後に起こりやすくなる骨粗鬆症の症状が認められました。一方、亜麻リグナン摂取群では、エストロゲン投与群ほどの顕著な効果は見られなかったものの、卵巣摘出による大腿骨重量の低下を抑制する傾向がみられました。 |
卵巣摘出マウスの尾部皮膚温に対する
亜麻リグナンの影響 |
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卵巣摘出マウスの大腿骨に対する
亜麻リグナンの影響 |
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実験2
更年期障害の動物モデルとして卵巣摘出マウス(41匹)を用いて亜麻リグナン摂取群(a)、イソフラボン摂取群(b)、亜麻リグナン+イソフラボン摂取群(c)、無投与群(d)の4群(各群7−9匹)に分けました。(a群)は亜麻リグナンを0.1%、(b群)はイソフラボンを0.1%、(c群)は亜麻リグナンとイソフラボンを0.1%ずつ含有する飼料を4週間、自由に摂取させました。(d群)は通常の飼料で飼育し、各群の尾部皮膚温と大腿骨重量を正常マウスと比較しました。
結果2
| (1) |
無投与群(d)は、正常マウスと比較して、2週間目から尾部皮膚温度の上昇がみられました。亜麻リグナン投与群(a)および大豆イソフラボン投与群(b)はそれぞれ摂取2週間目から皮膚温度の上昇が抑えられ、亜麻リグナンと大豆イソフラボン併用投与群(c)では、3週間目に有意な効果が認められました。 |
| (2) |
無投与群(d)は正常マウスと比較して大腿骨重量が著しく低下しました。亜麻リグナン投与群(a)および大豆イソフラボン投与群(b)では骨重量の低下がわずかに抑制され、亜麻リグナンと大豆イソフラボン併用投与群(c)ではそれぞれの単独摂取群よりも骨重量の低下が抑制される傾向が見られました。 |
卵巣摘出マウスの尾部皮膚温に対する
亜麻リグナンとイソフラボンの影響 |
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卵巣摘出マウスの大腿骨に対する
亜麻リグナンとイソフラボンの影響 |
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結論
亜麻リグナンは更年期障害の主症状の1つであるほてりを改善する効果があり、閉経後に起こりやすくなる骨粗鬆症の予防に効果的であることが示唆されました。さらにこの効果は亜麻リグナンとイソフラボンを併用することによって、より効果的になることが示唆されました。
日本では大豆食品が豊富でイソフラボンの摂取量が多く、日本人の女性は更年期障害の発症率が低いといわれています。今回の研究結果により、大豆イソフラボンとは異なる新しいタイプの植物エストロゲンである亜麻リグナンの効果が確認され、これら2種類の植物エストロゲンを組み合わせることで、女性の健康維持に役立つということがわかりました。
▼日本更年期医学会について
日本更年期医学会は、更年期・老年期の生理、病理や臨床に関する研究を推進し、社会の福祉に貢献することを目的とする学術団体です。主な活動として、学術集会の開催、学会誌の刊行、各種学術研究調査などを実施しています。会員は医師、栄養士、各種研究機関の研究員をはじめ、約1,600名です。今回は、第17回
日本更年期医学会学術集会となります。
※ 尚、本件は、10月24日(木)11:30に発表されたものです。
以 上