店頭のすてきな花はだれが育てているの?見本鉢の秘密おしえます

※サントリーフラワーズ 国内事業部生産SCMグループ 筒井を交えてのインタビューとなります。

発売日に合わせて開花を調整

  • 【筒井】
    柳平園芸さんには、園芸店やホームセンターに展示するサントリーフラワーズ一押しの「花苗見本鉢」の委託生産をお願いしています。見本鉢は「こんな風に育てたい」というひとつのゴールを提示すること。小さな苗が大きく育ち、満開に咲いた姿は圧巻です。1鉢置くだけで苗の売れ行きがぜんぜん違います。たまに自社の通信販売で見本鉢と同じレベルの大鉢に仕立てたものを扱うことがあるのですが、自分で育ててらっしゃるガーデニング上級者の方がわざわざお求めになることもあるくらい。それだけ完成度が高いものをつくってもらっています。

    【柳平】
    でも、実際はお客さまのほうがすごいものをつくりますよ。
    自分の鉢だけに集中できるし、納期もない。


    【筒井】
    見本鉢は、3月の発売日に店頭に出すことが最重要課題ですからね。

    【柳平】
    シーズンがはじまると最初の1週間で一気に出荷します。前々日に水やりをして、荷づくり。難しいのは咲き始めを出荷時期にピッタリ合わせることですね。五分咲きくらいで出荷できれば店頭で満開になります。そのまま1か月くらい花が咲き続けてくれるのが理想です。出荷の数週間前には、天気をみながら最後に切り戻すタイミングをはかります。切り戻しが早過ぎるとつぼみが早くついてしまい、お店についたとたん咲き終わった花がらを摘むことになってしまいますから。出荷ギリギリになってくると、コントロールできるのは温度くらいしかありません。開花が早まりそうなら温度を下げ、遅いなら温度を上げる。これまでの積み重ねで、ようやく勘どころがつかめてきました。配送が終わったら、近隣のお店に様子を見に行きます。売り場でメインのところに飾っていただけると嬉しいですね。いいところに飾ってもらえるような見本鉢をつくるよう心がけています。


    【筒井】
    見本鉢は本来の時期よりずっと早くつくっているんですよね。

    【柳平】
    例えば苗の発売日が3月20日、4月1日と決まっていれば、見本鉢もそれに合わせて準備します。10月にプラグ苗がきて、シーズン前年の秋が作業のスタートです。

  • 柳平智博氏(柳平園芸)

初仕事で、なんと全滅!

【柳平】
サントリーさんとのお付き合いはもう20年。もともとわたしは農業資材の営業マンをしていて、花苗ではなく土やハウスなどを扱っていました。まだ「花事業部」だったころのサントリーさんに営業に行って、山梨の農場にハウスを建てさせていただいたのがきっかけでした。その後、花事業部の担当者から「委託生産をやってみないか」と声をかけられて独立。
最初の仕事はアメリカ向けのサフィニアの苗づくり。結果はなんと全滅でした。経験もないうえに、輸出苗のため特殊な用土を使ったことも原因だったようです。すぐにつくりなおし、1か月半遅れで送り出すことはできたのですが、いきなり強烈な洗礼でした。でも、不思議と辞めたいという気持ちはなく、とにかくものにしなければという思いで続けました。


【筒井】
柳平さんに見本鉢をお願いするようになったのは12、3年前ですね。最初は白州の自社農場でつくっていたのですが、数がどんどん多くなって間に合わなくなり、ベテランの柳平さんに委託でお願いしようということになったんです。

【柳平】
最初は手探りで、花が咲かなかったり、咲きすぎたり、株の真ん中が腐って花姿が乱れたりトラブルの連続でした。予備の苗を1000鉢近く用意し、とにかく大量につくって、そこからいいものを選んでいたんですね。今は100鉢程度の予備があれば事足ります。精度が上がった理由は、それぞれの苗の品種の質が向上してつくりやすくなったことと、われわれがサフィニアをはじめとするサントリーの苗に慣れてきたこと。


【筒井】
トラブルも貴重なデータなんですよね。毎年、同じ品種の見本鉢をつくっていただくのは、プロの方に栽培の経験を蓄積していただく狙いもあります。

【柳平】
特に出荷前は一番トラブルが出やすい。仕上がる直前は枝葉が茂っているので、株の内側がむれて灰色かび病などが発生しやすくなるのです。そこで株が小さいうちから、内側にのびて腐りそうな葉を取り除きます。6人のスタッフが2週間かけて5000鉢を一巡。株が大きくなり、枝が増えてくるとそれだけ時間がかかるようになります。どの葉をとるかが分かっていないとできない作業ですから、どんなに忙しくても短期のパートさんには任せられません。スタッフには、年間を通して9時〜15時の勤務体制をとってもらっています。このシフトなら小さいお子さんがいるお母さんでも働きやすい。納期が明確なメーカーの仕事だからこそ、計画的に体制を整えることができるんです。


【筒井】
柳平さんには、他にも展示会で使うような品種もお願いしていますし、新ブランドなど、サントリーの花はほぼ全部を育ててもらい、知見を共有しています。単なる委託生産をお願いしている生産者の方というより、ともにサントリーのブランドを育てる大切なパートナーなんです。

わたしの花語り…サフィニア※1

原点となっただけあって、やはりすばらしい花です。色も花の大きさも、一輪一輪の花弁の輝きも。じょうずにつくれば枝が1mでも1m50cmでも伸びます。もっとも、25年前のサフィニアはもうちょっと色が深かったような気がしますね。長年のあいだに少しずつ花形も葉も変わってきますし、つねに時代に合ったよりよいものを開発しているわけですから、変化するのは当然。同じ品目をずっとやっていると、品種をリニューアルしたときの違いがすぐわかるんです。

  • ※1・・・サフィニアの商品ページはこちら
  • ■取材日:2015年11月27日

ページの先頭へ

ページの先頭へ