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植物と水 植物は太古の昔、海で誕生し、なんと36億年もの長い間、海という水の中を生活の場としてきたと言われています。植物にとって水は、命の源であり、生活の場であり、子孫を残す場所であったのです。現在のように“上陸”をしてからも、やはり植物にとって水は欠かすことのできない存在であり、水なしでは命をつないでいくことはできません。

植物にはたくさんの水分が含まれている

植物の多くは、根、茎(幹や枝を含む)、葉という3つの部分からできています。もともと、海の中で長い期間、生活をしていた植物は単細胞か多細胞で、糸状あるいは葉状をしていますが、それらの細胞ひとつひとつは水で満たされていて、特に高等植物の葉などは、重量の約80~90パーセントを水が占めています。この水が少しでも減ってしまえば、植物は生命活動を維持することが困難となり、植物は萎れ、枯れてしまいます。例えばイネなどは、水分の10%が失われただけでも枯れてしまうと言われています。

植物の茎を伝って水分が細胞に行き渡る

植物の体の中には、根から吸収した水を高い梢にまで運ぶ専用の水路があり、これを道管(マツやスギでは仮道管)と呼んでいます。根から吸収された水は、この道管を通り、周囲の組織を潤しながら梢まで運ばれますが、この水を上昇させている原動力として、根圧、毛細管現象、凝集力、葉の気孔で行われている水の蒸発(蒸散と呼ぶ)が挙げられます。第一に、根の細胞は吸収された水で圧力が高まっているため、道管内の水を上に押し上げる力が生じます。第二に、水の表面張力によって管が細いほど水は上昇します。第三に、毛細管である道管内では水の凝集力(静電的な引力)が大きいため、大木でも水が上昇します。さらに、葉の部分で蒸散が行われ、水分が空中に発散されると、その水を補うために道管中の水は上へと引き上げられていくことになるのです。

また、葉では植物にとって欠かすことのできない光合成が行われていますが、ここでも水が使われます。光合成は、太陽などの光エネルギーを使って、二酸化炭素と水という2種類の無機物から有機物の糖を合成する反応のこと(光合成では、炭水化物と酸素が合成される)。この糖が根から吸収した無機養分と結合してさまざまな物質が作られ、植物の栄養の基本となります。ここで作られた栄養分は、師管と呼ばれる組織を通って、植物の体に行きわたり、最後は根まで届きます。このように、植物の体の中は、常に水分が無機物や有機物を載せて(溶かして)巡っていることになります。

植物の体と水
植物の体と水

発芽には水が必要

植物のほとんどは水でできていますが、多くの種子の水分量は約5~20パーセントしかありません。水分だけでなく、水溶性の栄養分や酸素の量も少なく、これは、一種の“休眠状態”と考えることができます。代謝や細胞分裂などが行われることなく、ただ休眠しているのには、もちろん理由があります。それは、通常なら植物が耐えられない悪条件下でも、生き抜くことができるからです。そして、いつか自然環境が整えば、発芽ができるように設計されているのです。

発芽の条件は、植物の種類によって異なります。例えば、春に芽生える種類は、ある一定の温度が続くことで休眠から覚め、活動を始めます。また、乾燥した地帯に生きる植物は、土壌の湿度によって覚醒します。光に当たることで発芽する光発芽種子というタイプも存在します。このように、発芽の条件はさまざまですが、共通して欠かせないものが、水なのです。種は休眠から目覚めると、まず吸水を行います。そして膨張し、貯蔵物質を代謝し、エネルギーを得て細胞分裂を始め、成長の扉をあけるのです。

水不足対策

砂漠などの乾燥地帯でも植物は生きています。雨がほとんど降らない乾いた土地で、植物はどのように生存しているのでしょう。
たとえばサボテンは、茎を発達させて中に水をたくわえます。また、昼に気孔を閉じ、夜に開いて光合成に必要な二酸化炭素を体内に蓄えることで、蒸散を防いでいます。また、ある植物は、根を発達させ、地下水まで到達させて水を吸い上げるといいます。雨季と乾季がある熱帯では、乾季を種子で過ごし、雨季に一斉に芽生え、実を結び、あわただしく一生を終えてしまう植物や、乾期に落葉させて蒸散を防ぐ植物もあります。

【参考文献】

  • 中村運/著 『生命にとって水とは何か』 講談社
  • 『岩波ジュニア科学講座4 生物の世界をさぐる』 岩波書店
  • 中村運/著 『水の生物学』 培風館
  • 日本植物生理学会 みんなのひろば(http://www.jspp.org/17hiroba/index.html)

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