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SPIRITS OF SUNGLIATH

#556 日和佐 篤 『体を叩いて恐怖心を払しょくする』

第5節のクボタスピアーズ戦で今シーズン初先発、自身初の3トライを前半だけで挙げた日和佐篤選手。益々高まる存在感はメンバー紹介時、そして登場時の観客の皆さんの声援の大きさにも反映されています。3トライ直後の日和佐選手に話を聞きました。(取材日:2017年9月23日)

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◆前に出て並行して走る

――第5節クボタ戦は久しぶりのスタメンで、しかも3トライと大活躍でしたね

これまではだいたい1シーズンに1トライするかしないかでしたからね。トライを取れたのは良いパスが回ってきたことと、良い形で外に回って速い選手が抜け出して、そこにチョロっとサポートに入っていただけなので、チームで取ったトライだったと思います。

――良いサポートがあったから取れたトライでしたよね

抜け出したところにはサポートにつくように心がけていて、そこで良いボールが回ってきただけと考えています。だいたいはヅル(中隆彰)とかがそのままトライを取ることが多いんですが、たまたま僕のところに回ってきましたね。

――前半32分までに3トライと立て続けでしたね

僕としては、僕がトライを取るよりウイングにトライを取って欲しいと思っています。味方が捕まったらサポートに入れるコース、抜け出したらサポートに入れるコースと、外に回す時は常に意識して走るようにしています。その中で、僕にボールが回ってきたというのはたまたまだと思います。

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――以前から意識してそのコースを走るようにしていたんですか?

以前までは走っていなくて、ずっと味方のお尻を追いかけながら走っていました。2016年シーズンのサンウルブズで、アシスタントコーチの田邉さんから「抜け出したコースを走れ」と言われたんです。その前から言われていて、それがなかなかできなかったんですが、それができるようになってきたと思います。

外に回った時には前を走るウイングの20mくらい後ろを走って、「抜けそうだな」と思った時に、そのまま後ろを走るのではなくて、前に出で並行して走るようにするようにしたんです。

――走るコースを変えたことによって良い感覚があるんですか?

良い感覚がありますね。単純に走る距離が短くなるので自分も楽ですし、パスをもらえる可能性もありますし、そこでウイングが捕まった時もすぐにサポートに入れます。今までは癖でずっとボールについて回っていたんですが、どのコースで走ればいいのかが、だんだん分かってきました。

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――新しい日和佐選手になったんですね

新しいというか、ここにきて要領をやっと得たかなという感じですかね(笑)。

――では、今後もトライの可能性がありますね

今までよりはあると思います。そこでウイングがそのままトライを取るのか、僕にボールが回ってくるのかだと思います。

――初先発で活躍できた要因は?

今回の活躍を当たり前とは思いませんが、せっかくチャンスをもらいましたし、自分の持ち味を出したいと思っていました。

――試合に臨むにあたって、集中力は高まっていましたか?

そこはいつも通りでしたね。野球でも先発投手とクローザーがいると思うんですが、たまたま先発投手になったという感じでした。ゲームを作るか、締めるかの違いだけで感覚は同じでしたし、集中もしていましたし、やるべきこともボールをキープしてしっかりとスペースを作るということだったので、それはできたと思います。

キックリターンでトライを取りましたし、キックオフからジョージ(スミス)が抜け出して江見がもらって、そこからトライを取れましたし、カウンターだけじゃなくセットピースからもトライを取れるようになったので、どこからでもトライが取れるようになってきたと思います。まだまだ成長段階ではありますが、チャンピオンになるためにどんどん成長していっている感じがあります。

――ディフェンスについてはどうですか?

NTTコム戦は最初の15分が淡白だったと思いますが、個人のタックルスキルであったり、組織的なディフェンスであったり、段々と良くなってきていると思います。僕個人としては、まぁいつも通りやっているという感じですね。

――過去のチームを見ても、ルーズボールなどの場面で淡白さを感じる時がありましたよね

良い試合をした後に淡白になりがちだと思いますね。そこの隙がまだあるとは思いますが、試合中に修正できたので、成長していると思います。

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◆痛いことを体に覚えさせる

――途中出場が多く、入替でグラウンドに入る時に体を叩くシーンをよく見ますが、あれはどういう気持ちなんですか?

見ている人からは「気合が入っているね」と言われるんですが、痛いことを先に体に覚えさせて、コンタクトで痛いと感じることを無くすためにやっています。だから、自分で自分の体を思いっ切り叩いています。

周りの選手の方が大きいので、やっぱり怖くないということはないんです。だから体を叩いて恐怖心を払しょくするという意味も込めています。

――体は大きくなりましたか?

体重も最近ちょっと増えたと思います。意識して体を大きくしたわけではなく、今シーズンに関してはいつも以上にウエイトトレーニングができていると思います。それは単純に、昨シーズンまでは痛いところがあって、重いウエイトを持てなかったりしたんですが、そういう個所が今シーズンはないからできているという感じですね。

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――体の大きさとスピードのバランスはどう考えていますか?

体重を増やし過ぎると走れなくなりますし、体重を落とし過ぎると簡単に当たり負けをしてしまうので、そのバランスは重要ですね。今は4〜5年前より自分のベスト体重が1kgくらい増えています。

敬介さん(沢木監督)が考えてくれるトレーニングがすごく良いトレーニングで、そのお陰で体重を増やしてもスピードが変わらず走れているんだと思います。試合よりもインテンシティ(強度)の高いトレーニングをしていて、短い時間の中でも相当走っています。そして、考えながらプレーしなければゲームができないので、頭と体を使ってトレーニングしています。

――やはり疲れてくると考えられなくなるものですか?

考えられなくなりますし、喋れなくなって横との繋がりが弱くなってしまいますね。その部分は、いま良くなってきていると思います。練習で試合よりもしんどい状況を作り出されているので、意識や経験によって、しんどい時でも喋れるようになっていると思います。

◆チームのために仕事はある

――先発で試合に出たいという思いはありますか?

プレー時間ももっと欲しいですし、先発で出たいのは出たいですが、与えられた仕事があるので、先発やリザーブは関係なくチームを勝たせるという役割があります。

――職人的でプロフェッショナルだと思いますが、そういう思いに達したのはいつ頃ですか?

一番その影響を受けたのは、2015年ワールドカップだと思います。日本代表に選ばれながらも試合のメンバーに入れなかった廣瀬さん(俊朗/現東芝BKコーチ)と湯原さん(祐希/東芝)は、すごく試合に出たかったと思うんですが、ものすごい気遣いでチームをサポートしてくれて、それがとても印象に残っています。

メンバーに入れなかったからと言ってふて腐れるのではなく、ノンメンバーだとしても仕事があると考え、チームを勝たせるためにものすごくサポートしてくれていました。その姿を見て、もちろん試合に出るために努力をするんですが、試合に出る出ないに関係なく、チームのための仕事はあるという考えが自分の中にあります。

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――フィジカル、メンタル共に成長して、理想とする姿と比較するとどのくらいまで来ていますか?

具体的に何%ということは分かりませんが、昔であれば自分を前面に出して考えていたところが、歳を重ねてベテランと言われるポジションに片足を突っ込んでいる状況の中で、今はアッシー(芦田一顕)やゲンキ(大越元気)をどうチームにコミットさせるかということも考えています。違う視点が得られてきたのかなと思います。

僕がいま30歳で、チーム内ではアオさん(青木佑輔)やタケさん(竹本隼太郎)が最年長としていて、そういった年代の選手たちがチームを離れることになった時に、そのまま弱くなってしまうのではなく、より一層チームが強くなれるように後輩たちを育てていかなければいけないと思っています。最近、そういうことも考え始めるようになってきましたね。

今は2019年のワールドカップをターゲットにしていて、現在の自分の姿がそのターゲットを果たすための何%まで来ているのかは分かりませんが、とにかくそこに向けてチャレンジしたいと思っています。

――日和佐選手が若手だった頃と、今の時代の若手選手に違いを感じたりしますか?

僕ももともと上下関係をあまり気にしないタイプでしたが、最近の若手もすごく話しかけてくれますし、フランクという感じはしています。

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――これまでインタビューをしてきて、15のポジションの中で一番スクラムハーフが負けず嫌いだと感じています

アッシーもゲンキも負けず嫌いですね。大きい人に負けたくないと思うからですかね(笑)。そうしないと体格的に渡り合えないと思います。ユタカ(流大)を見ていても、負けず嫌いですよ。

――そうしなければ渡り合えないラグビーを選んだのはなぜですか?

5歳からラグビースクールに入って、引退した辻本と同じラグビースクールでラグビーを始めたんですが、気が付いたらラグビーしていましたね(笑)。

地元の友達はみんな野球をやっていて、僕も野球をやりたくなって小学1年の時に2週間だけ野球をやったんですが、守備をしていてもボールは飛んでこないし、バッターも順番がなかなか回ってこなくて、「何だ、これは」と思い、僕には合いませんでしたね(笑)。

――負けず嫌いであれば、絶対に先発で出たいと思いますよね

もしかしたら今はメンバーに選んでもらっているので、そういう視点が持てているのかもしれませんが、メンバーから外されるような状況になれば、もっと違う視点で取り組むかもしれないですね。

◆ワールドカップの試合を見返していない

――ワールドカップの魅力は何ですか?

魅力というか、プレーヤーとしてトップリーグで戦っている限りは、そこを目指したいと思っていますし、そこを目指さなければ右肩下がりになっていくと思います。

――2019年のワールドカップまで2年を切り、再びあの2015年南アフリカ戦での試合終了間際の逆転トライのシーンを何度も目にするようになりましたね

そうですね。けれど、僕はあの試合をいまだに見返していないですよ。もう過ぎ去ったことですし、あの試合だけじゃなく、ワールドカップでの試合すべてを見返していないですね。
トップリーグでは終わった試合も見ますが、僕が試合を見る時は基本的には先のことを考えて見るので、今で言えば、NTTドコモの試合を見ていますし、NTTドコモ戦が終わればサニックスの試合の映像を見ます。

終わった試合を見る時には、どこが良くてどこが悪かったのか、次はどういうことをしなければいけないかということを考えながら見ます。

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――実際にプレーしていた時と映像で見た時では違うところが見えたりするんですか?

上からの映像で見ると、「あそこが空いていたのか」と気づいたりしますね。キックすることに関しては、自分から見える景色とウイングが見える景色は違うので、4つの目と13番など外側にいる人たちの目を借りながらやっていくしかないと思っています。

自分の位置では空いているのか分からない状況でも、ウイングから「空いているから蹴れ」と声を掛けてくれれば自信を持って蹴ることができます。だからコミュニケーションが大事になります。

――自分だけじゃなく周りを使ってプレーしていくということは、例えば、大きなロボットの中で操縦しているようなイメージなのでしょうか?

アタックに関してはそういうイメージですね(笑)。バックスは10番、12番に任せているので、どれだけフォワードを使えるかということを考えています。フォワードで1mゲインできれば、次のアタックでバックスは更にゲインできると思うので、その1mをどう勝ち取るかを考えてコントロールしています。

そこには自分の判断もありますし、フォワードが走り込んでくる判断もあります。フォワードが走り込んでくるタイミングやコースについては日常的に練習中から話をしているので、それが試合で上手く出せていると思います。

◆ウイングにトライを取って欲しい

――いまラグビーをしていて面白いと感じるところはどこですか?

昔は決められたプレーを決められた通りにやっていましたが、今は空いているところにボールを運んでいくので、より一層考えなければいけませんし、運ぶ過程でどういうプレーを選択するのかも考えなければいけません。より良い判断をしなければいけなくて、そのためには理解力が必要になるので、そこが面白いですね。

――沢木監督の言う「色々な戦い方ができるチーム」(イヤーブックのインタビューにて)に近づいていますか?

そういうチームになれれば強いですよ。ボールキープしても勝てるようになりましたし、キッキングゲームでも勝てるようになってきているので、徐々に近づいているとは思います。

――日和佐選手の中にはどういうラグビーをやりたいという考えは?

僕としてはウイングにトライを取って欲しいと思っています。今そういうチームに近づいてきているので、プレーしていて楽しいですよ。

――今シーズンの目標は?

まず個人としては日本代表に復帰したいと思っているので、そのためにはサントリーで良いパフォーマンスを出さなければいけないと思っています。ユタカ(流)にチャレンジしつつ、しっかりと自分のパフォーマンスを上げていきたいと思います。チームとしては、もう一度2冠を取りたい、どうしても取りたいと思っています。

――パフォーマンスを上げるためのポイントは何ですか?

練習だと思います。練習でパフォーマンスが上がらない人が試合でいきなりパフォーマンスが上がるかと言えば、そんなことはないと思うので、しっかりと次の試合に向けての準備をしていけば、自ずとパフォーマンスが上がっていくかなと思っています。

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ポイントになる部分としては、ゲームの理解と自分の体が動くかというところだと思います。体が動く状態にするためには疲れを残さないことが大切になります。23歳のリカバリーパターンと30歳を迎えた選手のリカバリーパターンはかなり違うと思うので、自分の体と相談をしつつやっていきたいと思います。

サントリーに入った当初は、特にリカバリーのことを気にしていませんでしたが、今は次の試合に向けた準備をより一層しっかりできるようになったと思います。

――食事であったりオフの過ごし方なども気をつけていると思いますが、その辺りはどう変わりましたか?

昔は自分の中にルールがありませんでしたが、ここ2年くらいで細かなこともサボらずにできるようになったと思います。練習後にアイスバスに入るとか、寝る前に10分間ストレッチをするとか、当たり前かもしれませんが、そういう細かなことができるようになりました。

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――2冠へのこだわりについては、どんな思いですか?

それは負けたくないということです。勝てなかった4シーズンは辛かったですよ。

――勝てなかったシーズンと一度も負けないシーズンとの違いは何だと思いますか?

負け出したら自信がなくなっていきますが、勝ち続けたら自信がついてきますし、勝つ文化ができてきます。ただ、勝ち続けるということは難しいことです。

――2年連続2冠を取った後4シーズン勝てなくて、また勝ち続けることができていますが、その経験から学んだことは何ですか?

過去に勝ち続けていた時にはチームのマインドとして、「このくらいで勝てるか」「これでいいっか」という思いが出てきてしまっていたと思います。ハングリーであり続けることは大変なことなんですが、どこかハングリーさが無くなってしまっていたと思います。今はみんながすごくハングリーですし、そこが勝ち続けられている理由なのかなと思います。

――ハングリーのもとは何ですか?

勝ちたいという欲求だと思います。いま「これぐらいやれば勝てるだろう」と思っている人は誰もいません。次の試合に向けてしっかりと準備して、1つずつ1つずつ勝ちを重ねていっている感じです。

あと敬介さんのコントロールも上手いと思います。練習から試合以上のプレッシャーがありますし、より難しいことを選択し、それに向けてチャレンジしています。新しいことにも取り組んでいるので、みんながハングリーでいられるんだと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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