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SPIRITS OF SUNGLIATH

#526 有賀 剛 『怪我に負けないという思いと親孝行』

11年の現役生活にピリオドを打った有賀剛選手。クレバーな印象が強かった有賀選手は何を考えてプレーし、どうラグビーに取り組み、そしてこれからどうして行こうとしているのでしょうか。選手として最後のロングインタビューです。(取材日:2017年2月20日)

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◆ラグビーは1人ではできない

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—— 体が大きい方ではない有賀選手が、社会人で11年という長い間、ラグビーを続けられたのは、なぜだと思いますか

「怪我に負けたくない」という思いがもの凄く強くて、それは日本代表でも活躍した父親が言っていた言葉でもありました。僕は初めて親子2代で日本代表に選ばれて、そのプレッシャーもありましたし、怪我に泣かされてプレーができなくなった選手をたくさん見てきました。僕もこれまで手術を12回やりましたが、そこで負けずにもう一度復活してやろうという強い信念があり、その繰り返しで体にガタが来てしまいましたが、そういう思いでやって来たという自負はあります。

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あとは、親孝行ですかね。僕は末っ子長男で、姉たちは山梨から出ていたので、母は僕の試合を見ることをとても楽しみにしていました。その母親が、僕が中学の時に脳梗塞になって、2回ほどそういう状況になったんですが、今でも片手片足が不自由な状況で生活をしています。そこまで回復したことが奇跡的なのかもしれませんが、そういう母親の姿を見ていたら、自分の怪我なんて大したことはないという思いがありました。それと父親の言葉も重なって、「怪我には負けたくない、もう一度復帰してやる」という思いが強かったですね。

—— そういう思いに加えて、相当頭を使って考えて取り組んでいたんじゃないですか?

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そこは自負もありますが、相当考えて取り組んだからこそ、この体でここまでプレーを続けることができたんだと思っています。後輩からも「剛さんは何を考えてプレーしているんですか?」と聞かれるんですが、そこはもの凄くシンプルで、「相手をどうやって止めてやろう」とか「どうやって相手を抜いてやろう」ということしか考えていないんです。プレーしながら、それを常に考えていました。

終盤ではノンメンバーと一緒に練習をすることが多くなっていましたが、そういうメンバーと一緒に練習をしていると、何となくプレーしていたり、言われたことしかやらないような選手もいました。ラグビーというスポーツは絶対に1人ではできないんです。ひとつひとつのプレーを見ていくと、何人かのユニットが連動し、みんなが良い動きをして初めて抜けるんです。だから仲間に要求をしなければいけませんし、コミュニケーションを豊かにしなければいけないんです。

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今の若手選手の全般的な特徴かもしれませんが、個人に課せられたウエイトトレーニングであったりフィットネストレーニングでは、みんなターゲットをクリアすると思うんですよ。ただ、それはベースの部分であって、グラウンドでは違って、仲間と一緒に動かなければいけないんです。僕は仲間に対しては多くの要求をしてきましたし、それがあったから成長して来られたと思っています。

—— 逆に相手チームが上手くコミュニケーションを取れていない時には気づいたりするんですか?

そこはあまり気にならないですね。「静か」とか「疲れている」ということは感じますが、それ以上細かいところまでは気にしなくて、それよりも自分たちにフォーカスを置いています。その中で、相手の傾向などはプレーをしていて分からなければいけませんし、プレーが続けば状況はどんどん変わっていって、前半で通用していたことが後半では通用しなくなっていることもあります。だから仲間に要求して、一緒に良いものを作っていくという気持ちでプレーしていました。

◆もっと勝ちたかった

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—— 他に頭を使った部分はどこになりますか?

頭はそんなに良くないんですが、記憶力は良い方だと思います。ラグビーに関して、「あの時のあのプレー」とか、「あの監督はこの時にあんなことを言った」とかは、結構覚えていますね。もちろん「そんなことがあったっけ?」ということもありますが、数年前に、「僕が4年目で啓希(宮本)が1年目の時に、ああいうプレーがあったな」と啓希に言って、「よく覚えていますね」という会話をしてこともありました。

—— そういう力が身についたのはなぜだと思いますか?

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高校、大学時代の監督の影響だと思います。考えて取り組んだことに対してダメと言われず、それが上手くいったかどうかは分かりませんが、考えを尊重してやらせてくれたことが活きていると思います。

—— 先ほどの「どうやって相手を抜くか」に関して、自分自身がそういうプレーをすることと、仲間を動かしてそういう状況になるのとは、どちらが嬉しいですか?

選手としてはパフォーマンスが全てですし、その先にあるのがチームの勝利になるんです。チームが勝つことが一番だと思ってプレーしていたので、どちらでも良いですね。

—— これまでサンゴリアスで多くの勝利を経験したと思いますが、もっと勝ちたかったという思いはありますか?

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もっと勝ちたかったですよ。優勝した回数の倍近くは決勝に進んでいるので、半分は負けているということです。負けた時は悔しさが残りますが、「負けた相手に同じ状況でもう一度試合をしたら勝てるか?」と聞かれたら、不思議なことで、そういう気持ちは出てこなかったと思います。

—— 2015-2016シーズンの9位という結果は、相当悔しかったんでしょうか?

悔しかったですし、なぜあのような状況になったのかは、はっきりとした理由が分かりませんが、誰かのせいというよりは、チームとしての問題だったと思います。

◆キツい中にも楽しさはある

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—— 社会人でプロとしてラグビーをやっていて、改めて面白さを感じた部分はどこですか?

僕の場合は、基本的にはいつも楽しいですよ。やはり楽しくラグビーをやりたいというのがモットーにあるので、キツい中にも楽しさはあると思いますし、どうせやるなら楽しくやろうよという感覚でやっていました。

だから、厳しい中でふざけたことを言ったこともありましたし、そこで周りに変な思いをさせてしまったこともあったかもしれませんが、僕は“やらされている”ということが嫌いなので、ラグビーが楽しい、だからやりたいという感覚で常にいたいと思っていました。

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自分がやるべきことが分かっているつもりでしたし、コーチなどからそういう評価を受けていると感じていました。サントリーにはジョージ・グレーガンやジョージ・スミスなど世界的にも素晴らしい多くの経験ある選手たちがいましたが、経験があるからベテランに任せておくということでは自分自身の成長は止まってしまうと思っていました。

怪我が多かったですし、歳を重ねるたびに「もっとこういうトレーニングをしなければいけないんじゃないか」と自分でずっと考えて取り組んでいたんですが、それだとどうしても限界があったんじゃないかなと思います。

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ただ、将来指導者になった時には、その時の経験は語れると思いますし、これからは更に知識を豊かにしていかなければいけないと考えています。シーズン中にスポットコーチとしてJP(ジョン・プライヤー/元サンゴリアスS&Cコーチ)が来てくれて、僕がこれからやろうとしている全てを整理して、プログラムの見直しをしてくれて、新しい方法を提示してくれたので、それをやり切ろうと思って取り組んでいましたし、それが2016-2017シーズンでの3試合の出場に繋がったと思っています。

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—— これまで有賀選手が取り組んできたこととは、どう違ったんですか?

「ベーシックなウエイトトレーニングは週1回にして、もっと瞬発系のトレーニングにしよう」とか、「ランニングフォームを直すドリルをジムで頑張りなさい」ということも言われました。そして、「怪我が多い個所があるのであれば、そこを鍛えるトレーニングを定期的にやろう」と言われ、そのメニューにしっかりと取り組んだことで、グラウンドでのパフォーマンスが上がっていったと思います。この年齢でもう一度花開きたいという思いがあったんですが、それができなかったことが悔しいですね。

◆常にチームが良くなることを考える

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—— 選手を長く続ける上で、何が大切だと思いますか?

試合に出ることが、やはり選手としては評価されるポイントだと思いますが、試合に出られなかった時にどれだけチームに貢献できるかということだと思います。ただ、だからと言って、僕がそれをできていたとは思いませんが、やはりシニアになれば、自分のことだけをやっていれば良いという状況にはならないので、常にチームが良くなることを考え取り組まなければいけないと思います。それは人それぞれの部分もありますし、色々な要因が絡んでくることなので、一概には言えませんし、難しいことだと思います。

—— 今後、日本のラグビー界が良くなるためには何が必要だと思いますか?

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サントリーの場合は、社員選手が“ラ業(ラグビーと業務)両立”という会社が掲げたテーマに対して、ラグビーも仕事も頑張り、その中で優勝という結果を残すことができたので、それは決してネガティブなことではないと思います。ただ、そこで国内だけに目を向けていたのではダメだと思いますし、サンゴリアスとしても“インターナショナル・スタンダード”というテーマを掲げているだけに、世界的な選手を目指すためには何が良いのかなという考えはあります。

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プロ選手になったからと言って、数年後に何をしているのかが分からない状況ですし、色々な面で環境が整っていないと思います。多くのお客さんが会場に足を運ばなければ、チケット収入が増えませんし、そうなれば興行としても成り立たなくなり、結果として今よりも悪い状況になり兼ねないと思います。

ただ、その中で、「昔はこうだった」という固定概念は捨てなければいけないと思います。今のように企業スポーツであれば、その企業の方針によってチームが無くなってしまう可能性があり、プロ化にした方が良いんじゃないかという声もあると思うので、本当に難しい問題ですよね。

◆良いチームをつくる

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—— 今後については、どう考えていますか?

ラグビーからは色々なことを教えてもらいましたし、多くの経験をさせてもらったので、何らかの形で恩返しをしていきたいと思います。やはり将来は指導者になりたいと思っていますし、指導したチームを良いチームにしたいと思います。

ある人から「もし将来指導者になった時に、監督を見据えてコーチをやることと、コーチしか見ずにコーチをすることでは、大きな違いがあるからね」と言われました。僕はまだその器ではないと思いますが、先を見据えて取り組むことが大事で、それをひとつひとつ積み重ねていくことで、もし将来監督をやった時に大きな違いになると思います。文句を言うことは簡単なことなので、自分がやる時にはどうすれば良いのかということを常に考えて生きていきたいと思います。

—— 有賀選手が考える、良いチームとはどんなチームですか?

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やっぱり勝つことは大事で、その上で、試合を見ていて面白いと思ってもらえるチームですね。先ほどのラグビー界の話になりますが、勝った負けたということも大事ですが、なぜ会場にこれだけしかお客さんが来ないのかということにも目を向けなければいけないと思います。

指導者という立場では、魅力あるチームを作ることでしかお客さんを呼べないと思いますが、やはり今後の日本のラグビー界のことを考えると、問題点にしっかりと目を向けて考えなければ、小さい世界でやっているだけになってしまうと思います。

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他の競技で言えば、Jリーグはトップリーグよりも多くのお客さんが入りますし、多くの客さんの前で試合をするのは、選手として気持ちのいいことです。あれだけのお客さんが来るということは、それだけ魅力があるということだと思いますし、それがラグビーにはまだないんだと思います。

2015年のワールドカップでの日本代表の活躍で一気に人気が上がりましたが、その時の人気はもうないと思います。ただ、ラグビーのレベルで言えば、確実に上がっていると思います。パナソニックとの日本選手権決勝には出場できませんでしたが、スタンドから見ていてレベルが高いと感じましたし、サンウルブズとトップリーグ選抜との試合を見ても、レベルが上がったと感じました。レベルが上がっている日本のラグビーの中で、良いチームを作ることであったり、ラグビーを追求していくことが、これからの僕の仕事だと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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