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SPIRITS OF SUNGLIATH

#525 篠塚 公史 『二度とあのようなプレーはしないと思い続けてきた』

社会人になっての11シーズンをほぼレギュラーでプレーした篠塚公史選手が引退します。大きくて安定感あふれる篠塚選手が積み上げてきたものを、そしてこれからのラグビーとの関わりを語ってもらいました。(取材日:2017年2月15日)

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◆101%くらいの力は出ていた

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—— 日本選手権決勝の試合後に、「僕が出るイメージがなかった」という話をしていましたね。あの時の心境は?

僕が監督だったとしても、あの状況で選手を変えることは考えなかったと思います。チームがよく機能していましたし、怪我でもなく選手を入れ替えるというのはリスクだと思いました。ベンチから試合を見ていても、「試合に出るチャンスはないな」と思っていました。

どの試合でも同じですがリザーブの時には、ベンチから相手がどういうことをしてくるのかを見ながら、自分が出場した時にはどういうことをしようとイメージし、それを他のメンバーと共有しながら準備をするんです。だから、決勝でも自分が出たらどういうことをしようとイメージしながら準備をしていましたが、試合の状況を考えたら、交替はないだろうと思っていましたね。

決勝は本当に良い試合でした。あのような試合は、日本ではほとんど見られないんじゃないかと思うようなレベルの高い試合だったと思います。

—— あのような良い試合で、自分がグラウンドに立ちたかったという思いはありましたか?

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もちろん出たかったですし、決勝に限らずどの試合でもグラウンドに立ちたいと思っていました。

—— とくに気合が入るという東芝戦もリザーブでしたが、前半30分からの早い出場となりましたね

前半の最初の方で、ジョー(ウィーラー)が足に違和感を覚えたという情報が入っていたので、「早いタイミングで変わるかもしれない」というイメージは持っていました。ただ、それまでは出場時間が長くても20分ということが多く、長い時間出場することが少なくなっていたので、体力が持つかどうかの心配がありました。

試合中はがむしゃらにプレーしていたので、細かなところまでは覚えていませんが、東芝には1年目からライバル視をしていて、絶対に負けたくない相手です。この歳になると、120%の力は出ませんが、101%くらいの力は出ていたと思います(笑)。

—— 2008-2009シーズンには東芝に味の素スタジアムで、5-61で敗れたということもありましたが、2016-2017シーズンは48-0という結果でした

2008-2009シーズンには東芝に味の素スタジアムで、5-61で敗れたということもありましたが、2016-2017シーズンは48-0という結果でした

◆あのプレーがあったから、ここまでプレーを続けられた

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—— これまでの11年間の中で、勝った試合で印象に残っている試合は何ですか?

勝った試合はあまり印象に残っていないんですよね。負けた試合で言えば、2010-2011シーズンのプレーオフトーナメント決勝の三洋電機(現パナソニック)との試合で、23-28の5点差で負けた試合です。

後半20分頃に自陣ゴール前5m付近で相手ボールのラックから、確かジャスティン・アイブスが持ち出して、それに対して自分がタックルしたんですが、倒しきれなくてモールになって、そのまま押し込まれてトライを取られました。コンバージョンも決められたので、それが無ければ勝つことができた上、2冠を取れ、更に言えば3年連続2冠を取っていたと思います。

あのタックルが未だに忘れられなくて、絶対にあのようなプレーはしてはいけないと思っています。逆に言えば、あのプレーがあったからこそ、ここまでプレーを続けられたのかもしれません。

—— そこまで悔いが残る原因は何ですか?

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簡単に言えば、楽をしてしまったんです。もっと激しくタックルに行っていれば倒せたと思いますし、モールを組まれなかったと思います。あの1プレーでチームの優勝を奪ってしまったので、あのシーンはずっと頭から離れないんです。

タックルだからということではなくて、疲れていたから楽なプレーをしてしまったんです。チームを代表してグラウンドに立った選手としては、一番やってはいけないことをやってしまったんです。たぶんそのプレーを覚えている人はいないと思いますし、ラックの上だったのでゴチャとしていて、誰がタックルに行ったのかも、映像をよく見なければ分からないことだと思うんですが、「もう二度とあのようなプレーはしてはいけない」とずっと自分の中で思い続けてきました。

—— そこからは変わりましたか?

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意識は変わりました。練習中からキツい時に楽なプレーをしないことを自分に言い聞かせましたし、試合中のスクラムでは、隣に真壁という妥協を知らないプレーヤーがいたので(笑)、キツい時に真壁を見て、「自分ももっとやらなければ」と思ってプレーしていました。

—— 真壁選手は1年目の時に「シノさん(篠塚)を倒してでも試合に出る」と言っていたそうですが、それを聞いた当時はどう思ったんですか?

その時は僕は4年目で、ずっと試合に出ていましたし、「ま、頑張ってくださいよ」という感じでした(笑)。ただ、その年の確かトヨタ自動車戦に、僕が先発で真壁はリザーブだったと思いますが、僕が当日風邪をひいてしまって、代わりに真壁が先発で出場して、大爆発したんです。

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「倒してでも試合に出る」と言われた時には何も感じませんでしたが、あの試合の後からは、ライバルになるという思いが出てきました。これまで自分はライバルを感じるタイプではなかったんですが、ラグビー人生の中で唯一、真壁にはそういう思いが出てきましたね。今ではプレースタイルが全く違いますが、個人的にはライバルと思っていたので、これまで頑張って来られたんだと思います。

—— チーム内にライバルはいた方が良いと思いますか?

必ずいた方が良いと思います。ライバルがいなくて試合に出られれば、それはそれでいいと思いますが、どこかで現状維持していれば試合に出られるという気持ちが出てきてしまうと思います。そこにライバルがいれば、その相手よりも上にいなければ試合に出られないという状況になるので、常にレベルアップをする努力をすると思いますし、僕はライバルがいなければ成長できないと思っています。

◆困ったらお前が取れ

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—— 入社前は自信がなかったと言っていましたが、自信を持ち始めたのはいつ頃ですか?

ラインアウトでのディフェンスなどでチームへの貢献ができていたと思うので、1年目から自信を持っていたと思います。その他の部分では、そこまで足が速くなく、パワーもなかったので、とにかくサポートプレーを意識して取り組んでいました。

—— ラグビーをやる上で大事なことは何だと思いますか?

ラグビーはポジション毎に特徴があるように、万遍なくスキルを高めるのではなく、何かひとつ飛び抜けているものを身につけた方が良いと思います。ヅル(中)はフォワードに比べパワーはないですが、足が凄く速くて、俊敏な動きで相手を抜くことが出来ますし、真壁は足は速くないですが、突破する力はチームで一番だと思います。どの能力も誰よりも高ければ、それに越したことはありませんが、どの能力も平均的というよりは、ここだけは誰にも負けないという突出した部分があった方が、個人的には良いと思います。

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それを踏まえて4番に必要なことは、個人的な意見を言えば、ラインアウトのコーラーとメインジャンパーになるので、ラインアウトの知識が必要です。あと相手のアタックを読む力とジャンプスキルが高い方が良いと思います。

コーラーをやっていて悩んだり迷ったりすると、他の人が飛ぶサインを出したくなるんですが、そこで逃げずに自信を持って自分が飛ぶサインを出せるかどうかが大事になります。立ち位置や動くスピード、動く幅などを常に同じにして、リフターが毎回同じ精度で上げられ、スロワーが毎回同じ感覚で良いボールを投げられるように、練習中から心がけて取り組まなければいけません。それを積み重ね、周りの選手から「あいつが飛べば取れる」と信用され、周りに自信を持たせるような選手でなければいけないと思います。

誰でもミスをするのは怖いですし、ミスが続くと迷いが出てきます。僕も若い頃は、迷った時には他の人に飛んでもらうサインを出していたんですが、直弥さん(大久保)が監督をやっていた時に「困ったらお前が取れ」と怒られたんです。そこからは迷った時には自分が飛ぶようにして、それを繰り返すことによって、取れなかった時にも次で取り返そうと思えるようになっていきました。

◆どれだけ自分を犠牲にできるか

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—— 篠塚選手の印象は、我慢強くコツコツと積み上げていくタイプのように感じます

高校時代の監督の口癖で「耐えて勝つ」とずっと言われてきました。そこから耐えることの重要性を感じていましたし、365日キツい同じ練習を3年間、文句も言えず続けてきて結果も出ていたので、それで忍耐力はついたと思います。

中学まではやりたいことをやらせてもらえる環境で育ててもらっていたので、もともとマイペースだったと思います。団体競技をやってきましたが、団体行動はあまり好きではなかったんです。

—— 選手にラグビーの良さを聞くと、「みんなで1つのことを成し遂げること」という話が出てきますが、篠塚選手はどうですか?

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個人的な考えを言うと、ラグビーは自己犠牲のスポーツだと思っています。勝利という目標に対して、ボールを持って相手にぶつかる人もいれば、それをサポートする人もいて、その結果、トライが生まれ、勝つことができるんです。そこで自分のことだけを考えている選手がいれば、トライが取れず、勝つこともできないんです。どれだけ自分を犠牲にできるかが大事になると思います。

足が速くなく、パワーも強い方ではないという自分の特徴が分かっていたので、その中でチームに貢献できる場所はサポートプレーだったんです。だから、目立たないけれども、サポートプレーをしていこうと思って取り組んでいました。

—— 自己犠牲の美学はどこにありますか?

分かる人には分かるということですね。松島や中の凄さは、誰が見ても分かると思うんですが、サポートプレーが凄いと思える人は、あまりいないと思います。たまに「シノのプレーは凄いね」と言われたことがあったんですが、そう言われた時は嬉しかったですね。

—— どういうところを見ると、サポートプレーの凄さに気付けますか?

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ボールに注目するのではなく、その周りを見ることだと思います。普通であれば、ラグビーを見に来ているのでボールを見ると思うんですが、ボールではないところを見るというのは、新しい見方で、面白いかもしれないですよ。

僕が試合を見ているとサポートプレーを中心に見ているので、周りのお客さんが盛り上がっていることで、アタック側が抜け出したことに気づき、他の人よりも盛り上がるタイミングが遅くなったりします(笑)。テレビだとボールを中心に映すので、僕の見方は試合会場向きかもしれません。

—— 相手チームの分析をする時も、そういうところを見たりするんですか?

そうですね。ラックからボールが出た後、ラック周辺にいた選手たちはどこを見ているか、どう動くかというところを見ています。そこにはチームや選手の色が出ていて、チームとして動き方を決めているところもあれば、カッチリ決めずに選手の色が出ているチームもあります。注目していると、選手の癖を見つけることもできます。

—— 篠塚選手の癖は何でしたか?

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自分では分からないですね(笑)。以前までだったら、ラインアウトで自分が飛ぶサインを出す時には胸の前に手を上げる癖がありましたね。自分が飛ぶ時にはキャッチする準備をしたいので、そういうポーズをしていて、飛ばない時には気が抜けて手が下がっていたりしていたんだと思います。

他のチームの選手を見ていても、コーラーの選手で自分が飛ぶサインを出す時には、無意識のうちに癖が出てしまっている時があります。だから、相手のラインアウトを分析する時には、そういう癖を見つけることを考えていました。

◆ラグビーへの恩返し

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—— 今後については?

2019年までは現役でいたかったんですが、それが果たせなかったので、ワールドカップを盛り上げるために何らかの形でラグビーに関わり、少しでも力になりたいと思っています。2019年に日本でラグビーワールドカップが開催されるという認知度も、まだまだ低いと思うので、それを広める活動であったり、ワールドカップを成功させるために、微力ながら力になりたいと思っています。

もうひとつは、母校である法政大学や正智深谷高校の復活ですね。特に高校は、県でもベスト4に残れるかどうかの力になってしまっています。自分の原点でもありますし、このまま更に下がっていってしまえば、チームが無くなってしまうことにもなり兼ねないと思うので、復活のためにサポートしたいと思っています。

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どちらもまだ具体的に何をやるかは決まっていませんが、まだラグビーを知らない友人もたくさんいますし、一番簡単な方法はSNSなどでラグビーの情報を発信していくことだと思うので、ラグビーを広めていくことが、これまでやって来たラグビーへの恩返しになるかなと思っています。

—— 改めて、サンゴリアスでラグビーを11年間やった感想は?

もう11年が経ったのかと、あっという間でしたね。毎日、レギュラーになるためにがむしゃらに頑張って、それを積み重ねてきた結果、11年が経ちました。

—— 同期が9名いて、チームに大きく貢献してくれていた同期が徐々に少なくなって、ついには篠塚選手の番が来てしまいました

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選手をやっている限り引退はつきもので、それが早いか遅いかは人それぞれです。同期の中では、僕が最後まで残るんじゃないかという話をしていたので、それを実現できなかったのは残念です。

—— サンゴリアスの良さはどこですか?

ずっとチームの中にいると良さが分からなくなって、外に出てみて、その良さに気付くんだと思います。サンゴリアスは、引退した選手だけじゃなく、その家族であったり、チームを離れ違うチームに行った選手、スタッフ、そしてその家族に対してもいつまでも温かいですし、サンゴリアスにいたことがある人はその誇りを持っていると思います。


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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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