SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年1月26日

#520 松島 幸太朗 『チャンスメイクをしていく』

サンゴリアス4シーズン目の松島幸太朗選手。ぐっと大人になった印象を受けます。リーダーとしての自覚の芽生え、そして更なる成長へ向けての意気込みを聞くことが出来ました。(取材日:2017年1月10日)

◆率先してやるという意識

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—— 今シーズン、全体として調子が良さそうに見えます

練習などでも体の調子が良いと感じていますし、日本代表などを経験したことによって、周りが更に見えるようになって、余裕を持ったプレーが出来るようになっていると思います。試合中、何フェーズも重ねている時にも、周りとどんどんコミュニケーションを取るという能力が上がってきていると感じています。

—— 試合中にプレーをしていて動きやすいし、周りも動かしやすくなっているという感じですか?

自分のやりたいことをしっかりと伝えられれば、周りの選手も次に何をやりたいのかが分かると思いますし、そういった意味では動きやすくなるためのオーガナイズが出来るようになってきたと思います。

—— それが出来るようになった要因は何ですか?

日本代表の経験もあると思いますが、日々の練習から率先してやるという意識が強くなったので、それが試合でも発揮できるようになっているんだと思います。

—— きっかけはあったんですか?

ハッキリとしたものはありませんが、沢木さん(監督)や今の日本代表のコーチたちから、「もっとコミュニケーションを取って、リーダーとしてチームを引っ張れる存在になっていかなければいけない」と言われていたので、そういった部分で責任感が出てきたんだと思います。

—— 松島選手が考えるリーダーとは?

僕の場合は、言葉で何かを伝えるよりもプレーで示した方が相手に伝わりやすいので、プレーでチームを引っ張れるような存在になっていきたいと思います。

◆色々な選手と話をする

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—— コミュニケーションの話で言うと、東芝戦の最後のトライは、スミス選手から飛ばしパスをもらってトライに繋げましたが、あのような場面ではどうコミュニケーションを取っているんですか?

声を出したりしますが、観客の声援で声が届かない場合は、手などを出してジェスチャーで伝えたりしています。

—— チームとしては、今シーズンどこが一番変わったと思いますか?

選手1人1人がよく考えるようになって、自分の仕事は何かということが明確になっています。シーズン終盤では、密にコミュニケーションを取らなくても良いような状態まで持っていきたいので、今はそれが徐々に出来ている状態だと思います。

沢木さんが監督になり、選手1人1人に常に質問を投げかけているので、選手としてはどうすればいいのかを考えるようになっていると思います。答えを与えるのではなく、選手自身に考えさせることによって、色々なアイディアも生まれやすくなっていると思います。

—— 松島選手がより考えるようになった部分は?

僕は色々な選手と話をするんですが、例えばバックスリーであれば、ヅル(中靏隆彰)やケンタ(塚本健太)など同じポジションの中で、ヅルは「どういう形でボールをもらいたいのか」、江見ちゃんであれば「どういう形がいいのか」という細かい部分も、同じ考えを持てるようになってきていると思っています。

◆思い切って忘れる

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—— 今シーズンにはスピリッツ・オブ・サンゴリアスの特別編として「松島幸太朗を語る」(1)(2)という企画を行いました。そこでは「可愛いやつ」と「シャイ」という意見が印象的でしたが、それを読んでどう思いましたか?

最近はシャイという感じもなくなってきていると思いますよ。最初の頃は人見知りをするようなこともありましたが、日本代表や海外で経験したことによって、自分からどんどん話しかけるようになっていると思います。

—— あと松島選手は「精神的に安定している」という評価もありました

自分自身ではメンタルが強いとは思いませんが、周りを気にしないというところで、そういう印象を与えているのかもしれません。

—— どうすれば気にしないで臨めるようになるんですか?

例えば、ミスをした時に、大体自分の中でその原因が分かっているので、「次はこうすればいい」という考えになって、あまり引きずらないんです。ずっとそういう性格でやって来たので、自然と身についたんだと思います。

普通、ミスをするとそのことが気になってしまうと思うんですが、思い切って忘れることも必要だと思います。ただ、その中で大事なことは、修正ポイントを明確にして次にチャレンジしていくことだと思います。

◆みんながリーダーシップを持つ

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—— 将来的には海外での活躍もイメージしていますか?

僕としては今のサントリーというチームが好きなので、できる限り長くこのチームにいたいという思いはあります。そして、サントリーに所属しながら海外のチームでもプレーするチャンスがあるのであれば、チャレンジしてみたいという思いもあります。

—— 松島選手が考えるサントリーの良さはどこですか?

みんながフレンドリーなんですが、練習では馴れ合いなどがなく取り組めていて、みんなが意見を言い合える関係を築けているので、選手だけじゃなく監督やコーチもやりやすい環境があると思っています。

—— 結果を残せないシーズンも経験しましたが、今シーズンに関しては現在の成績を残せる予感はありましたか?

全勝でここまで来られるというイメージはありませんでしたが、シーズン前半では好不調の波があって、その中でも上手く自分たちのラグビーが出来ない時でもちゃんと勝てるようになってきたということは、力がついて来ている証拠だと思っています。

—— その中で、松島選手のチームでの立ち位置はどう考えていますか?

もちろんキャプテンという存在は必要だと思いますが、リーダーを1人にするのではなくて、みんながリーダーシップを持てば、チームにとってもやりやすい環境になると思っています。みんながそれぞれ意見を言い出したらまとまらなくなりますが、選手同士が良い距離感を持ちつつリーダーシップを持って取り組むことが出来れば、試合でリードを許していたとしてもパニックに陥ることはないと思います。今のチームでは、そういう部分でも選手1人1人のメンタルが強くなってきていると思います。

—— それぞれの選手がリーダーシップを持って取り組めているんですね

そうですね。「何がいけないのか」ということが、1人1人分かってきているように感じています。

◆ステップワークからチャンスメイク

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—— 松島選手がいま感じている自分自身の課題は何ですか?

インターナショナルレベルで戦う上では、少しフィジカル面が劣っていると思うので、スピードを落とさずフィジカルが強く出来れば、もっと良いプレーが出来ると思っています。

—— そのための取り組みはすでに行っているんですか?

はい、取り組んでいます。まだ体が重いと感じる時はありますが、それは慣れていくしかないので、上手くコントロールしながらやっていければ、結果が出そうな感触はあります。

—— インターナショナルレベルで戦う上では、どこが強みだと思っていますか?

ステップワークが一番だと思っています。ステップワークからチャンスメイクして、トライに繋げることを考えています。フィニッシャーというよりもチャンスメイクをしていくという感じだと思います。

スピードに関しては日々トレーニングをしていますし、それが試合でも発揮できているので良いと思いますが、ディフェンス面、特にタックルについては気持ちが大事だと思います。タックルの技術も必要ですが、しっかりと相手を見て、「行くしかない」という思いで止めにいっています。

—— タックルについては、松島選手でも怖いと感じることはあるんですか?

いや、大きい相手の方が僕としてはタックルに行きやすいんですが、速い相手だと抜かれる危険性があるので、そういう部分を意識します。スピード系だと左なのか右なのかなど選択肢が増えて、そういう部分を考えてディフェンスをしなければいけなくなるんですよ。

◆トライを取れる自信がついてきた

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—— 理想とする姿には、いま現在ではどのくらい近づけていると思いますか?

70~80%くらいまでは来ていると思います。ただ、ここからの壁は高いと思っていて、出来れば2019年のワールドカップ前までには100%に持っていきたいと思っています。

—— 改めて感じるラグビーの面白さは?

サントリーのラグビーではスペースにボールを持って行くことにより、バックスリーの決定力が求められていて、以前はミスもありましたが、今は仕留めきれるようになってきているので、トライを取れる自信がついてきたことが面白いですね。

—— 先ほど出た中靏選手や江見選手、塚本選手にはライバルという意識はありますか?

すごく良いライバルだと思っています。ほとんど年齢も変わりませんし、みんなが良いパフォーマンスをしているので、負けられないと思っています。

—— チームメイトと切磋琢磨していきながら、2019年ワールドカップの時に迎えるであろうピークのイメージは、具体的にどういうイメージを持っていますか?

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今よりもダイナミックになっていると思います。速さでも負けず、コンタクトでも相手をずらして毎回ゲインラインを切れるようになっていきたいと思っています。

—— 日本代表としての自信は?

今の日本代表はエディー(ジョーンズ)の時とは全く違う取り組みになるので、選手1人1人が考えて行動しなければいけないと思います。試合中も選手1人1人のアイディアが求められてくると思いますし、日本代表に選ばれる選手はほとんどがスーパーラグビーを経験している選手になると思うので、そういう選手たちがいかに自分の引き出しを多く出来るかがキーポイントだと思います。

—— サンウルブズでスーパーラグビーを戦う上でのターゲットは?

サンウルブズはチャレンジャーの立場ですし、どん欲にプレーしていかなければいけないと思います。その中で南アフリカのチームに対しては、昨シーズンも接戦となった試合も多いですし、確実に勝てるようになっていかなければいけないと思っています。やるからには勝たなければ意味がないと思うので、チャレンジする戦術と確実に勝ちに行く戦術の2パターンがあっても良いかなと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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