SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年1月27日

#466 江見 翔太 『目指すところはもっと上、先は無限にある』

2年目の今シーズン、初キャップ、初トライを達成し、レギュラー定着まで一気に駆け上がった江見翔太選手。レギュラーシーズンの最多トライゲッターも獲得し来シーズンの更なる飛躍が期待されます。その大きな飛躍はどんな心構えから生まれたのでしょうか。充実のシーズンとなった江見選手に訊きました。 (取材日:2016年1月14日)

◆課題が明確に

スピリッツ画像

—— 今シーズンは短いシーズンとなりましたが、トップリーグの最多トライゲッターを獲得しましたね

まずは試合に出られたということが僕の中では一番大きくて、そこでウイングとしてトライを取れたということが、素直に嬉しかったですね。ただ、まだ課題が多いのは事実だと思います。ウイングはトライを取るポジションですが、ディフェンスもしっかりと出来なければいけないと思います。そこがまだ力不足なので、シーズンの終盤になってリザーブで出場することになっているんだと思います。最多トライゲッターを取れたことは嬉しい反面、課題が明確になったシーズンだったと思います。

—— 対面のウイングの選手に抜かれるという場面もあったんですか?

抜かれることもありましたし、僕がタックルミスをして、外で大きくゲインされ、結果的にトライに繋がった場面もありました。試合毎にそういう場面があったわけではありませんが、試合の中のポイントポイントでそういう場面があったので、そこは改善していかなければいけないと思っています。

—— 成長した部分はどこですか?

今シーズンのプレシーズンリーグから試合に出させてもらっている中で、トップリーグのフィジカルに合ってきたと思っています。

—— フィジカルの部分では、目指しているところのどこ辺りまで来ていますか?

目指すところはもっと上なので、まだまだですね。ただ、特にゴールを設けているわけではないので、現時点がどの辺りかという具体的なことは分かりませんが、先は無限にあると思います。

◆違うところが見えるようになってきた

スピリッツ画像

—— 昨シーズンと比べるとかなりの飛躍があったと思いますが、それについてはどうですか?

やはり努力をしましたし、自分がどうやってボールをもらえば強いかということも考えました。自分の持ち味はアタックだと思っているので、その持ち味を伸ばしていこうという思いで春から取り組んできて、通用する部分を見せることが出来たので、試合でも使ってもらえたんだと思います。

—— アタックに関しては、サンゴリアスに入った時から自信を持っていましたか?

アタックの部分を評価していただき、サントリーに入ることが出来たと思っています。ただ、昨シーズンはトップリーグでの強さに順応できず、怪我をしてしまいました。大学まではボールを持った時に外にスペースがあれば自分で切り開くことが出来ていたんですが、トップリーグのチームを相手にした時には、それが出来なくなっていました。だから、考え方やボールのもらい方から変えなきゃいけないというところから始めなければいけませんでした。

そこから自分の強さは相手に当たった時に、前に2、3歩出られるところと考えて、それがあるから外が空くというイメージを持って春から取り組みました。それが通用していったので、今回の最多トライゲッターに繋がったと思います。

—— アタックが通用しないと感じた時はショックでしたか?

ショックでしたね。ディフェンスの部分は力不足と認識していたんですが、アタックについてはある程度は通用するだろうと考えていました。それが実際にトップリーグのチームを相手にした時に、疲れてきた時にボールを前に運べなくなったりしていて、自分は全然ダメだと感じましたね。それがあって、昨シーズンに怪我をした時に自分を見つめ直しました。ラグビーは自分1人でやるものではありませんし、自分の中にある根本的な考え方を変えていくようにしました。

—— かなり頭を使っているように感じます

頭を使えるようになってきているとは思いますが、まだまだ使えるところはあると思います。

—— 大学時代はどうでしたか?

あまり頭を使っていませんでしたね(笑)。ここでこういうプレーをしたら相手が減るという、何となくのイメージは持っていましたが、理論的に考えてプレーしていたかと言えば、全く考えられていなかったと思います。

—— 考える楽しさはありますか?

違うチームの試合や僕が出ていない試合を見ていても、今までとは違うところが見えるようになってきていますし、パッと見た時の判断力もついてきてはいると思いますが、まだまだ伸ばさなければいけないところだと思います。

◆いかにボールタッチを増やせるか

スピリッツ画像

—— いま感じるラグビーの面白さはどこですか?

今まではスペースを作ってもらってそこにアタックをするという、周りに活かしてもらってプレーをしていましたが、今は外側からマネジメントするということを心掛けてプレーしています。そのためにはどういうコールを出した方が良いのかとか、早めにサインのコールを出す判断であったり、スペースを見つけることが必要で、若手選手たちはその部分を敬介さん(沢木/スペシャルスキルコーチ)から指導してもらっています。そこを考えながらラグビーが出来れば更に面白くなるんじゃないかと思っています。

あと、やっぱりボールを持ってアタックしている時が一番楽しいですよ。トライゲッターとして、スペースがあればボールを早めに呼んで、そこからゲインであったりトライが生まれると思うので、そういうところが楽しいですね。

—— ウイングまでボールがなかなか回ってこない時にはどうしているんですか?

ボールを触らなければ、僕のボールキャリアーとしての良さは出ないと思うので、どこにでも顔を出せるようなポジショニングと、いかにボールタッチを増やせるかということを考えて取り組んでいます。

◆いつか立ちたい舞台

スピリッツ画像

—— 試合中には声を出していますか?

声は出さなきゃいけないんですが、まだ足りないと思います。短い言葉で的確な指示を出さなければいけないんですが、まだ最善のコミュニケーションが取れているとは言えないと思います。言うタイミングも重要になるので、経験を積んでいくしかないと思います。

—— やらなければいけないことがたくさんありますね

やらなければいけないことは多いと思いますが、課題は1つ1つが明確なので、大変だと感じることはないですね。

—— バックスは若い選手が多くなっていますが、ベテラン選手から教わることもありますか?

ヤスさん(長友泰憲)から教えてもらうことが多いですね。同じポジションですし、ヤスさんはディフェンスが上手いので、どうコミュニケーションを取っているかとか、ポジショニングはどうしているかとかを、練習中からマメに聞いています。あと剛さん(有賀)にも聞いたりしていて、練習中だけじゃなくて練習が終わった後にも聞いたりしています。

—— ワールドカップなどでも同じポジションの選手には注目して見ていたんですか?

やっぱりマツ(松島幸太朗)はウイングでも出ていましたし、ディフェンスを評価されていましたよね。ディフェンスでしっかりと止められるような選手が評価されると思いますし、しかもマツはアタックでのスピードもあるので、凄いと思いますし、参考になると思っています。

—— ワールドカップでの日本代表の活躍はどう見えましたか?

凄いと思いましたし、いつか立ちたい舞台ですね。2019年に日本でワールドカップが開催されるので、そこをモチベーションにしています。もともとサントリーのバックスラインは日本代表のバックスラインと言われていたくらいのチームだったので、その威厳を取り戻さなければいけないと思います。

◆来シーズンは相手にデータがある

スピリッツ画像

—— 色々ともがきながら、トップリーグのリーグ戦の中では一番トライを取ったことになりますね

結果としては同数での一番でしたし、チームの成績を踏まえると、素直には喜べないですね。

—— 最多トライゲッターは続けていきたいですか?

トライを取り切らなければいけないポジションとしては続けたいと思いますが、最多トライゲッターを狙うということはないと思います。チームの勝利のためにトライを取ることが仕事なので、チームが勝利し、優勝した結果に最多トライゲッターがついて来ればいいかなと思います。

—— 話を聞いていると自信を持っているように感じますが、その元は何ですか?

他の選手がオフをどう過ごしているかは分かりませんが、それだけのトレーニングをしているという自負はあります。

—— 2年目でここまで活躍できるというイメージはありましたか?

イメージはなかったですね。ウイングには他にもたくさん選手がいるので、試合には出たいと思っていましたが、ここまで出られるとは思っていませんでした。

—— 3年目のシーズンでの活躍についてはどう考えていますか?

今シーズンから試合に出始めた関係で、対戦相手としては僕のデータがなかった故に抜けることが出来た部分もあったと思います。来シーズンは相手にデータがある中でも抜けるような選手にならなければいけないと思います。特にネガティブに捉えているわけではなく、虎視眈々と自分のプレーを磨いていくと共にディフェンスを成長させることが出来れば、試合にでも出続けられると思っています。

◆信じたものに対しては継続力がある

スピリッツ画像

—— 今シーズンはなぜこれだけトライが取れたと思いますか?

自分がトライを取ったシーンを思い返してみると、自分で切り開いて取ったトライはあまり多くはありません。ただ、その中でもプレーをする上で気を付けたことは、トレーニング以外で言えば、食事には気を付けていました。

—— 食事はどの辺に気を付けていたんですか?

1年目の後半くらいから気を付け始めたんですが、出来る限り脂質を摂らないようにしたり、シーズン中はタンパク質や野菜を多くして、プレー時間や練習量によって炭水化物の量を変えたり、朝の食事や練習前の食事に気を付けていました。タンパク質は出来る限り摂りウエイトトレーニングで筋量を落とさないようにして、フィジカルが下がらないようにしていました。

—— 自分自身に継続力があると思いますか?

自分が信じたものに対しては、継続力があると思います。やり始める前にはあまり深くまで考えないようにして、実際にやってみて自分に合っているかどうかで続けるかを決めています。

—— 自分に合うものが見つかるまで、色々なことにチャレンジするんですか?

割と試してみる方だと思います。例えば、エゴマ油が良いとニュースなどで聞いた時には、栄養士の金剛地さんに相談してみて、実際に摂ってみたりしてみました。

◆選手によってチームは変わる

スピリッツ画像

—— ラグビー選手としての当面の目標は?

サントリーはもう一度トップ4に入るようなチームに返り咲いて、優勝に関われるようなチームでなければいけないと思いますし、そのために自分は何が出来るかを考え取り組まなければいけないと思います。そして、試合に出続けて、チームを支えていけるような選手になりたいと思います。

—— チームを引っ張るリーダーシップはあると思いますか?

リーダーシップはないと思いますが(笑)、現在のチーム状況を考えると責任を感じています。「ウイングが抜かれてトライを取られた試合が多いんじゃないか」と見ている人たちに思われていても仕方がない状況だと思います。

—— 2年目のシーズンを終え、改めてラグビーの面白さは?

状況が変わっていく中で正確な判断をしていかなければいけない部分です。もちろん理不尽なこともあると思いますが、しっかりと状況判断をして、他の選手に正確に伝えられる選手になっていきたいと思います。 ラグビーは面白さがいっぱいあって、選手によってチームは変わりますし、同じポジションの選手が同じプレーをするわけではないので、人によって変えられるところは面白いと思います。例えば、トゥシ(ピシ)であれば、自分で勝負して裏に抜けられる力があるので、内側でオフロードでもらうイメージでプレーしたり、ヒロキさん(宮本啓希)であれば、上手くスペースを作ってくれて、僕を上手くそこに入れてくれたりするので、同じサインプレーでもタイミングなどはその時その時で変えていかなければいけないんです。状況によってプレーを変えていかなければいけない面白さがあります。

—— 状況を客観的に見ているんですか?

常に出来ているわけではなくて、それがディフェンスの時にも出来るようにならなければいけないと思います。まだ考え過ぎてしまい、判断が鈍ってしまうこともあるので、意識の世界の中でどう無意識で動けるまでになれるかだと思います。そのためには経験を積んでいくしかなくて、道は険しいですけど、1つ1つは分かりやすい課題なので、悩んでいるという状態ではなく、そこまで悲観はしていません。課題をクリアする毎に楽しみが増えていくと思っています。

スピリッツ画像 スピリッツ画像

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ