SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年10月29日

#401 竹本 隼太郎 『試合に出てチームの勝利に貢献する』

ファーストステージ第6節でようやく今シーズンのトップリーグに初登場した竹本隼太郎選手。結婚して環境が変わって、竹本選手のラグビーも変わるのか。個人とチームの現状と展望を訊きました。

◆初めてのオフ3ヶ月

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—— 新婚の竹本選手ですが、奥さんの料理はおいしいですか?

一緒に住み始めて1年ちょっと経ったんですが、1年前よりも確実にレベルアップしていると思います(笑)。嫁から「ご飯は何が食べたい?」という問いに「タンパク質」と答えるやり取りを何回も繰り返して、最初はタンパク質とオーダーされて、何にタンパク質が含まれているのか、どんなメニューが良いのかなど分からず大変だったと思いますが、最近はメニューが豊富になったり、栄養の知識もついたり、味も良くなったので、レベルアップしていると思います。

—— 春には少し体重が重くなりすぎた時期もありましたよね

昨シーズンが終わってオフが3ヶ月間あり、目標が定まっていない時期がありました。8年間をサンゴリアスで頑張ってきて、今年で9年目になるんですが、これまで頑張ってきていた分、張り詰めた糸が切れた時に、再びスイッチを入れることが難しかったですね。

—— オフが3ヶ月もあったことは珍しいことですか?

初めてのことでした。オフが3ヶ月もあり、初めてのことでどうしたらいいのか分からない部分もありました。あと、新しいシーズンのテーマやスローガンが、若手中心の菅平合宿で発表されて、菅平合宿に参加していなかった選手に伝わるまでに少し時間がかかった部分もあり、目標と目的がはっきりと定まらず、スイッチが入りにくいことがありました。

—— 気分転換という意味ではどうでしたか?

良かったと思います。国内の色々なところに旅行し、歴史を学んだり、自然の素晴らしさを感じたり、日本の良さを改めて感じました。山梨であれば富士山周辺、長野は軽井沢、あと群馬の富岡製糸場、栃木の日光東照宮に行って、東京からそんなに時間がかからずに行けるところに、素晴らしいものがあるにもかかわらず、これまで触れていなかったのはもったいなかったと思いましたね。

◆目的や目標を共有する

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—— 今シーズンのスローガンが「We want it back!(なくした物を獲り返す)」ですが、竹本選手にとってなくした物とは何ですか?

ファイティングスピリッツとかコミュニケーションのスピード、フィットネスなど、色々あると思います。もちろん身体を大きくしたことで体重が増えているので、フィットネスを上げていくことが難しくはなってきます。あとはチームのまとまりもその中にあるかもしれません。

—— それは昨シーズンになくした物なんですか?

昨シーズンだけではないと思います。例えば、真壁がキャプテン1年目だった2012-2013シーズンの神戸製鋼との日本選手権決勝は、点差は広がりましたが、試合終盤に攻め込まれましたよね。その試合の神戸製鋼の最後のトライは、相手の自陣から持ち込まれてトライを獲られたプレーで、そういうプレーはそれまでされなかったプレーだと思います。

それが試合の途中で勝ったと思って気を抜いたのか、体力の限界だったのかは分かりませんが、ゲインされてみんなが全力で戻ってディフェンスをセットして、それでトライを獲られたのであればしょうがないと思いますが、しっかりとセットが出来ないままトライを獲られたと感じました。そのプレーに関しては、直弥さん(大久保/監督)や敬介さん(沢木/元ヘッドコーチ)も怒っていたんですが、優勝することが出来たので、丸く収まってしまったと思います。

昨シーズンで言えば、ファーストステージでNECに負けた時やセカンドステージでパナソニックに負けた時に、サントリーのコンディションがまあまあで、相手のコンディションが凄く良かっただけという考え方があったりして、ベクトルが自分たちに向いていないと感じたことがありました。

—— なくした物を獲り返すためには、何が必要だと思いますか?

やはり目的や目標を共有することが一番大事だと思います。それがないと何のためにやっているのかが分からなくなってしまいます。それがはっきりしていて、近づくために取り組んでいれば、1歩1歩踏みしめて行けると思うんですが、個人的にモチベーションに差があったと思います。目的を1つにして、自分たちが直近の目標を理解し、成長を感じることが出来れば、成長は加速すると思います。

—— 現時点では共有できていますか?

今のチーム状態は良いと思います。ファーストステージ第5節の神戸製鋼戦に負けた後にバラバラになるのではなくて、「もう1回自分たちのアタッキング・ラグビーをやろう」と全員がまとまったと思います。ただ、それは僕の感覚的な部分で、具体的な数値やはっきりとした見た目で分かれば良いんですが、練習試合に出場したことで、1人1人がしっかりとチャレンジしていると感じました。

まだ細かなところまで1つになれているとは言えませんが、「アタッキング・ラグビーをする」という大まかな部分で共通の意識を感じることが出来ます。

◆3ヶ月休むと3ヶ月以上かかる

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—— ファーストステージ第6節までを終えて、5勝1敗という成績ではありますが、競った試合ばかりだと思います。それについてはどう考えていますか?

自分たちのラグビーを信じる力は強いんですが、もちろん相手チームも必死に戦っていますし、サントリーがもう少し先を行かなければいけないのかなと感じています。

—— シーズンが深まるにつれチームの完成度が上がっていくと思うんですが、その感覚はありますか?

少しずつですが、神戸製鋼に負けたことで、歯車が噛み合い出した感じはしています。

—— 第6節の近鉄戦で今シーズン初出場となりましたが、それまでグラウンドの外から試合を見ていて、どう感じていましたか?

客観的に見ていて、チームとしてのまとまりはある方だと思いましたが、グラウンドに出ている15人が全員同じことを考えているかというと、少し違うように感じました。意思決定の部分などで、試合経験が少ないメンバーも多いですし、今シーズンはコーチも変わっている上、相手のレベルも上がっているので、当たり前だと思います。だから、別に悲観はしていませんでした。

—— 試合のメンバーに選ばれるようになるのは、いつ頃だと思っていましたか?

ファーストステージの序盤には試合に出られると思っていたんですが、楽観視し過ぎていました。もっと早い段階で、体力や試合勘が戻ると思っていました。例えば、若手の頃は、1~2ヶ月休んだとしても、2~3週間で戻る感覚があったんですが、3ヶ月休むと、戻るまでに3ヶ月以上かかることが分かりました。それは新しい発見だったので、二度と同じことは繰り返しません。

◆まだ偉そうなことは言えない

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—— 現時点での調子は?

ある程度、良くなった部分もあれば、まだまだ足りない部分もあります。ただ、右肩上がりで、少しずつ良くなってきています。

—— 理想とする状態から考えると、どのくらいまで来ていますか?

80点くらいまでは来ていると思います。

—— チームとしての完成度は?

チームのポテンシャルは計り知れないので、何%かは言えないですね。まだまだ力は発揮出来ると思います。ただし、後半戦に向けて、そろそろ発揮していかなければいけないとも考えています。

—— 発揮するためのポイントは何だと思いますか?

選手全員の目標やモチベーションが全く同じになることは難しいと思いますが、出来る限り近づくことだと思います。例えば、次の試合が、相手に合わせた試合じゃなくて、自分たちのレベルアップになる試合であれば、更に次の試合に繋がっていくと思います。

—— 比較するのは難しいと思いますが、昨シーズンのチームと比べて、今シーズンのチームはどうですか?

新しいメンバーがいて、競争が激しくなったことで伸びている部分と、新しいチームなのでまだまだ足りない部分があります。神戸製鋼に負けたことで、チームが成長していく火種はついたと思いますが、あとは習慣であったり、継続性の部分で、目標やモチベーションを定期的に確認していくことが必要だと思います。

—— 一3年間で5つのタイトルを獲ってきた後、昨シーズンは無冠に終わりました。今シーズンの重要性は感じますか?

ずっと勝ち続けることやレベルアップし続けてすぐに海外チームのレベルに到達することはあり得ないと思いますし、昨シーズンの結果は必然的だったと思います。その中で大事なことは、ミスをした時に悪い方向に進むのではなくて、修正することだと思うので、今シーズンでまた上向きにすることが出来れば、来シーズンも上向きになっていくと思います。そこが右肩下がりになるのか、多少の上下はあっても右肩上がりになっていくかに繋がると思います。

—— 若手に対するアドバイスはありますか?

僕はまだ偉そうなことは言えないです(笑)。僕らが若手だった頃を考えると、当時は身体も細くて勢いしかなくて、スキルや判断も悪かったと思います。経験がなければ、判断も悪くなりますし、スキルにも経験が必要だと思います。その中でも成長を加速させる方法はあると思います。例えば、他の競技でも良い選手にはしっかりとしたルーティンがありますし、良いものを取り入れて、成長していってもらえればと思います。

◆勝負どころで力を発揮する

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—— 改めて、今シーズンの目標は?

チームの目標は2冠を獲ることです。個人としては、試合に出てチームの勝利に貢献することです。個人的な意見ですが、それぞれのチームには、それぞれの文化があって、一時は強くてもその後、低迷してしまうチームもあると思います。理想としてはずっと強いチームであり続けて、チームが存続し続けることだと思います。

それを考えると、例えば、今シーズンだけ経験ある良いメンバーを揃えて優勝したとしても、結果としての価値はあるかもしれませんが、継続的に優勝するという大義の前では薄くなってしまうかもしれません。そういう意味では、強い良い文化を継承することも価値のあることだと思います。

—— ファンにはどういうプレーを見て欲しいですか?

コミュニケーションと連携の部分ですね。例えば、シェイプを作っておとりになったり、仲間がおとりになってくれて僕が抜けたりするプレーであったり、あとは勝負どころで力を発揮するところです。ピンチやチャンスでしっかり動くことやしっかりと声を出して周りを動かすことを心掛けて取り組んでいます。

—— 話は変わりますが、トップリーグのキャプテン会議について、今シーズンは代表ではなくなりましたね

そうですね。2年やらせてもらい、若手に譲りました。

—— 2019年のワールドカップも踏まえて、キャプテン会議の代表を2年やってみてどうでしたか?

プレーするだけじゃなくて、外のことやラグビー協会のことも少しは分かることが出来たので、良い経験になりました。そして、ラグビーのことを考えるきっかけになったと思います。2年間で出来たことと、やりたかったけど出来なかったことがあるんですが、出来なかったことに関してはやり方によっては出来たかもしれませんが、僕がもう1年務めたとしても出来そうになかったので、まとまりのある下の世代に任せてやっていった方が良いと思ったので、変わることにしました。キャプテン会議のメンバーも前向きで、仲が良くまとまりがあるので、任せられると思います。

—— チーム間で横の繋がりが出来たということは、キャプテン会議を作った成果ですよね

大きなことは少ないかもしれませんが、選手である以上はプレーすることが責任だと思いますし、プレーのレベルを上げつつ、2019年ワールドカップやラグビーのことを考える習慣がつくので、良いことだと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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