SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2012年5月 9日

#277 佐々木 隆道 特別編"HISTORY OF SUNGOLIATH" 歴代キャプテンが語るサンゴリアス史 14代目キャプテン 『全員がラグビーに対して100%集中している』

2008年~2009年にかけて集中連載した「スピリッツ・オブ・サンゴリアス特別編"HISTORY OF SUNGOLIATH"歴代キャプテンが語るサンゴリアス史」の続編として、『14代目キャプテン 佐々木隆道選手』に登場してもらいます。キャプテンとして1年間務めた後、2010年~2011年の2シーズンに大きく成長してチームに貢献。エディー・ジョーンズ日本代表新ヘッドコーチのもと、久々に日本代表にも選出された佐々木選手が、この3年間を振り返り、そしてこれからに向けての目標を語ってくれました。

◆なんて下手くそ

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—— まずは日本代表の復帰、おめでとうございます

みんなで頑張って2冠を獲得した結果として、サンゴリアスからは7名という多くの選手が日本代表に選ばれました。その中の1人としてプレー出来ることは嬉しいことですし、それと同時にサンゴリアスに育ててもらったという想いがあるので、みんなに感謝をしていますし、その想いをプレーで返したいと思っています。そして、サンゴリアスに戻った時にはチームに貢献出来るように頑張りたいと思っています。

—— 日本代表に選ばれたと連絡があった時は、どう思いましたか?

坂田さん(正彰/チームディレクター)から電話をもらったんですが、同期のみんなと食事をしている時で、僕は日本代表メンバー発表の記者会見に出るために事前に連絡をもらっただけだったんですが、心の中では嬉しさを感じました。ただ、他の同期が選ばれるか分からない状況だったので、あまり表現は出来ませんでした。

—— 記者会見の雰囲気はどうでしたか?

記者会見の雰囲気は「さあ、これからやるぞ」という希望に満ちている感じでした。そして、記者の方、協会の方、選手、そしてチームスタッフも全てが「日本のラグビーがこれから変わるんだ」と思っていた時間だったと思います。

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—— この2年間で、チーム合宿でMVPを取ったり、エディーさんからは「いちばん成長した」とも言われていましたが、自身では成長していると感じていましたか?

ジョージ・スミスがチームに来て、そこで初めて自分の知らない世界を見せてくれて、「自分はなんて下手くそなんだ」と思いました。それからいろいろとみんなで教えてもらい、自分も変わっていけたと思います。

—— チームメイトでいるということが重要で、映像で見るのとは違うんですね

チームメイトでいると凄く勉強になります。もちろん元さんや西川などからも刺激を受けますし、凄くリスペクトしている存在ではあるんですが、ジョージは僕が今まで見ていたラグビーの視野ではなく、世界のトップのプレーを見せてくれるので、それによってサンゴリアスのバックローは力が上がっていると思います。

—— ジョージ・グレーガン選手がいた時は、日和佐選手に練習が終わった後も指導をしていましたが、ジョージ・スミス選手に関しても、教えようという意識は高いんですか?

自分からも教えてくれるようにお願いをしていますし、聞いたらいろいろと教えてくれます。だからグレーガンと日和佐の関係が、ジョージと僕との間でも出来ているんじゃないかと思います。

—— 佐々木選手から見て、ジョージ・スミス選手のいちばん凄いところはどこですか?

リアクションが速いところですね。相手チームからキックを蹴られた時も自分たちがキックを蹴った時も、ピンチの時もチャンスの時も、もの凄いスピードでプレーをしていて、一緒にプレーをしていて、いつも「凄い」と思います。だから、その試合で見たことを、「次の試合でやりたい」と思っているので、それの繰り返しですね。前の週のジョージのプレーを目標に、次の試合に向けて取り組んでいました。

◆ジョージ・スミスに近づきたい

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—— 去年1年間が、自分自身の中でいちばん変わった1年間でしたか?

2年前が、人として変わることが出来るチャンスだったと思います。そこで変わることが出来たから、ジョージ・スミスが来て成長することが出来たと思います。

—— 2年前に人として変わったとは、具体的にどういうことですか?

僕は前々監督の清宮監督(克幸/現ヤマハ発動機ジュビロ監督)の下、甘やかされていた部分もあったと思いますし、自分の中でもどこかで甘えていた部分もあったと思います。そこから自分だけでやっていかなければいけない世界に飛び込んで、チームメイトと争って試合に出られたので、自分の中でも自信になりました。そして、自分の中ではそこまで変わったつもりはなかったんですが、周りからも「お前は変わった」と言ってもらえました。あと「自分が試合に出ているのが不思議」と思うくらい仲間を認めている自分がいて、そこがいちばん変わったところだと思います。

—— 同期の選手の活躍も凄いですよね

竹本キャプテンを中心に、自分たちの代からキャプテン、バイスキャプテンが出ているということで、出来る限りタケや剛(有賀)の力になりたいと思ってやっています。

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—— 本当の意味で、チームの中心になってきたと感じます

同期全員が同時に試合に出た時もあり、嬉しさはありましたが、チーム全員が1つになっていかなければいけないと思っているので、自分たちの世代が引っ張るという感じではないですね。ただ、みんなで試合に出て、サンゴリアスのラグビーを表現しようという強い気持ちはいつも持っています。

—— 佐々木選手はいろいろな世代でキャプテンをやってきて、竹本キャプテンの大変さも分かりますか?

やっぱり大変だと思います。ただ、みんな個性的ではありますけど、タケをサポートする体制は出来ていて、タケを支えるのは周りの選手であり、同期だと思っているので、タケはタケらしくやればいいと思っています。

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—— 佐々木選手がキャプテンをやっていた当時、会見やチーム内での発言を聞いた時には「さすが」と感じていました

どうですかね。自分の中だけで完結していたような気もしていて、ちゃんとみんなのことを見て、雰囲気を作ってこその言葉だと思うんですよ。あの頃の僕は、言葉だけが先に立って、プレーや態度が追いついていない未熟な人間だったと思うので、今またリーダーをすることになれば、また違ったことも出来ると思いますし、いろいろな経験をしたからこそ、新しいチームの引っ張り方も出来るとは思います。今、僕が求めていることはジョージ・スミスに近づきたいということだけです。

—— キャプテンをやっていた3年前は、プレーに関して葛藤があったんですか?

今思えば、全然ダメでしたけど、当時はあまり分かっていませんでした。

—— このままではダメだと気付いたきっかけは?

きっかけなんてないですね。先ほども言いましたが、2年前に1からやると決めて、自分の中でも苦しい世界と分かって契約をして、必死になってサンゴリアスが求める選手になるようにやっていくということが全てでした。だから、日本代表だとか、試合に出るとかではなく、とにかくみんなから信頼されるような選手になりたいという想いだけでした。

◆言い訳をしない

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—— 今のサンゴリアスの良さは何だと思いますか?

やっぱり全員がラグビーに対して100%集中していることだと思います。その中で、チームワークも大事だし、自分たちのスタイルをやりきることも大事で、それを果たすためには練習が全てということを、みんなが理解して、1つのチームとして動けていることだと思います。

—— チームの中にはプロ選手と社員選手がいる中、それぞれが背負っているものが違うと思いますが、佐々木選手はこれからどういうことをしていきたいと思いますか?

チームに対する役割は、「ラグビーに対する態度と結果」と思っているので、その2つだけを考えて、ラグビー選手としてやっていくしかないと思っています。このチームの一員として、しっかりやっていくだけです。

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—— プロ選手としての喜びはどこにありますか?

自分が好きなことを仕事にして、それでご飯を食べていけて、その結果で自分の奥さんや家族、その周りのみんながハッピーになってくれることが、いちばん嬉しいことですね。

—— 1年前、2年前と比べて、選手としていちばん良くなったところはどこですか?

人間として芯の部分が違うと思います。やることをやって、出た結果に対しては言い訳をしないことですね。それまでのプロセスで、しっかりやっているという自信があるから、もしダメだったとしてもネガティブにはならないですし、自分に出来ることを確実に準備していくスタイルになってこられているので、人として図太くなったと思います。

—— これからの目標は何ですか?

サンゴリアスとしては、もう一度2冠を獲るために、チームに貢献出来るようにやっていきたいと思っています。日本代表については、1つ1つの練習で、しっかりと準備をして、試合に出る出ないに関わらず、ブレずにやっていきたいと思います。

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—— 日本代表の練習はどうでしたか?

若い選手もたくさんいて、スキルフルではありますけど、全員が成長していかなければいけない部分はあります。その中でもチームの雰囲気は良いですし、楽しみですね。

—— サンゴリアスの2年間を見ても、4つのタイトルのうち、3つのタイトルを獲得していますが、そこに満足する部分はありませんか?

これからもチームは続いていくので、歴史に残るような時期に自分の名前も残したいですし、それが出来る環境で、チャンスがあると思うので、そのチャンスをものにしたいという気持ちです。

—— 試合としては日本代表の試合がいちばん近くにありますが、どういうところを見て欲しいという気持ちがありますか?

ないですね(笑)。まず出られるかも分からないですし、出られるとも思っていなくて、出るチャンスがあるというだけなので、そのチャンスを掴むために頑張らなければいけないと思っています。その中でも、出ることになった時には、こういうプレーをしたいという考えはあります。ジョージがいない中でも、ジョージに近づける準備をしたいと思います。

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(インタビュー&構成&写真:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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