豊かな社会は、若者の生き方を多様にした。いい学校、いい会社に行けば将来安泰という従来の価値観は崩れつつあり、「好きなことを仕事に」と仕事にやりがいや楽しさを求める傾向が強まり、職人や起業家を志向する若者が増えている。一方で、多様な選択肢は迷いを生み、フリーターやニートとよばれる若者が増加、就職しても早期離職する若者が目立つなど、働くことの意味に悩む若者は少なくない。
若者にとって仕事とは何か?夢や将来像はどのようなものなのか。若い世代の仕事や働き方に対する意識や彼らを取り巻く環境をとらえ、これからの時代の働き方、生き方を探り提案していく。
20代後半〜30代前半の男性社会人80名
・企業サラリーマン ・公務員 ・契約社員 ・派遣社員
・税理士、保育士等資格専門職 ・NPO職員 ・農業 ・林業 ・職人
・起業家 ・社会起業家
2003年〜2004年
定性調査(インタビュー調査)
仕事についた経緯やきっかけ、満足度、プライベートのバランス
会社(組織)との関係、夢や将来像等。
- 「好きを仕事に」を実現する若者
職人やクリエーターなど、自分の興味のある分野、好きなことを仕事にしている若者は、仕事そのものに対する満足度が高い。ものづくりは、アウトプットが具体的で手ごたえややりがいを感じる機会が多いというのも満足感につながっている。仕事が忙しく、休みがとれない状況でも「仕事は生きがい」と不満の声はあまりきかれない。起業家や社会起業家は、新規ビジネスの挑戦や社会貢献など夢や目標が明確、チャレンジ精神が旺盛、前向きに仕事に取り組んでいた。 - 漠然とした不安を抱える若いサラリーマン層
一方、サラリーマン層は二極化。一部エリートと専門職以外のサラリーマン層の仕事の満足度は高いとはいえない。就職氷河期といわれる時代に就職したこともあり、「希望した会社や職種とちがうけれどとりあえず就職した」という思いをもつ若者も少なくない。「もっと自分に合う仕事があるはず」という思いを抱きながら、日々の仕事に疲れ、一歩が踏み出せずにいる。多くは「転職するなら30歳までに」と30歳を区切りに猶予期間と言うスタンスでいる。 - 出世よりスペシャリスト
一般職のサラリーマンの間でも、スペシャリスト志向が強まっている。「役職についたけれどスキルがないのはいや。社内職人を目指し専門性を高めたい」というように、ジェネラリストとして管理職を目指すよりも、経理や人事、総務など特定の分野でその道を目指す若いサラリーマンが増えている。ただしあくまでもサラリーマンが前提で会社の中である分野に精通している“企業内職人”。中には仕事への思い入れというよりは、リストラのリスクヘッジ的な意味合いが感じられる人もいる。 - 成長実感を求めて
多数派ではないが「社内職人」という枠にとどまらず、どこの会社にいっても通用するようなスキルや能力を身につけたいという成長願望の強い若いサラリーマンもいる。彼等は、出世を目標とはせず、会社は自分自身の能力を高め、スキルアップしていくための舞台という考えをもつ。会社への愛着がないわけではないが、滅私奉公的に働いてきた上の世代とは違い、自分自身が成長する場として会社をとらえている。

編著 サントリー次世代研究所
発行 日本経済新聞社
定価 1575円(税込み)