連載企画

Our Passion

-挑戦に懸けるアスリートたちの想いー

編集協力:朝日新聞デジタル編集部

PASSION FOR CHALLENGE
UP DATE 2017.07.24
#34

「戦略を練る頭脳プレーの競技。世界を広げてくれる私のパートナー」

ボッチャ

遠藤 裕美選手

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1期~第3期対象

  • .競技との出会いは?

     私は先天性の脳性まひのため手足が不自由で、小さい頃から車いすで生活しています。2002年、地元・福島県郡山市の養護学校高等部に入学し、体育の授業で初めてボッチャに出会いました。授業で練習や試合を重ね、放課後は遊び感覚で遠投の練習をしていましたが、卒業後は関わる機会も少なくなりました。
     本格的に取り組むようになったのは24歳になってからです。以前お世話になっていた理学療法士の先生に再会し、先生がコーチを務める郡山市のボッチャチーム「ウルトラボッチャマンズ」に加入しました。その後、県ボッチャ協会のボッチャ教室にも月1回通い始め、そこで戦術や技術について詳しく教えてもらったことで奥深さを知りました。以来約7年、ボッチャの魅力にどっぷりとはまっています。

  • .ボッチャの魅力とは?

     ボッチャは重度障がい者のために考案されたヨーロッパ生まれのスポーツです。障がいの有無や程度に関わらず、同じルールでプレーできるのが魅力です。
     ルールは赤や青のボールを投げ、白色のジャックボール(目標球)により近付けた方が勝ち、という至ってシンプルなものですが、戦略を練って挑む頭脳プレーの競技であることも魅力です。ボールは天然皮革、合成皮革といった素材の違いや使い込み具合で転がり方などが違います。そうした特性が異なるボールを使い分けたり、相手の苦手なエリアを読んでジャックボールの位置をコントロールしたりして戦います。
     私はマイボールに番号をふり、状況によって使い分けます。例えば、おろしたばかりの新しいボールは硬いので、遠投をする時や相手のボールをはじく時に使います。使い込んで柔らかくなったボールは、目標にしっかり寄せにいくときに使います。1投目がジャックボールに吸い込まれるようにピッタリと寄った時は、とても気持ちがいいですね。
     重度の障がいがある人もルールや道具を工夫することでいろんなスポーツに挑戦できるということを、ボッチャを通じて学びました。この競技は私にとって、不可能を可能にし、世界を広げてくれるパートナーのような存在です。

  • .東日本大震災の時はどうしていましたか?

     ボッチャを本格的に始めて間もない頃でした。一人で自宅の留守番をしていた時、突然地鳴りとともに揺れが襲ってきて、家じゅうのものが倒れました。私はコタツなどの間に挟まれて身動きがとれない状態で、帰って来た家族に助けられるまでそのまま過ごしました。あの時の恐怖は今でも忘れられません。
     震災の影響で体育館が使えなくなり、競技生活にも大きく影響しました。練習場所がないため、家の廊下でボールを投げ込む練習などをしましたが、なかなかコントロールがつかず落ち込みました。家族や友達、サポートしてくれるたくさんの人たちが励ましてくれたことで、多くの人に支えられて競技が続けられていることを改めて実感することができました。

  • .夢、目標は?

     今年の日本選手権で上位選手と肩を並べて戦うことが当面の目標です。
     そして、その先の、東京パラリンピック出場を目指したい。パラリンピックの舞台で最高のパフォーマンスを発揮して、今まで私に関わってくれた人たちに恩返しをすることが夢です。どんな大会でも、場面場面で落ち着いて対応できる選手になることが目標です。

  • .Q.読者の皆さんへメッセージをお願いします。

     リオパラリンピックで日本が銀メダルをとって注目されるようになりましたが、今でも「ポッチャ」とか「ボッチャン」など、競技の名前すら正しく認識されていなくてがっかりすることがあります。まずは「ボッチャ」という名前を覚えてほしい。そして実際に試合を見て、どんな競技かを知ってほしいですね。
     ボッチャの魅力が広まって、競技人口が増えることを願っています。男女関係ないスポーツですが、なぜか女性の数が少ないので、特に女子選手が増えることを期待しています。
     私の座右の銘は「万里一空」。目標を見失わずがんばり続けるという意味です。つらいことやうまくいかないことがあっても、やけになってすぐやめてしまうのではなく、自分で決めたことは最後まで諦めずに続けていくことが、大切だと思います。

プロフィール

Profile

遠藤 裕美選手HIROMI ENDO

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1期~第3期対象

  • 1986年7月14日生
  • 福島県福島市出身・在住
  • 先天性脳性麻痺
  • 在学中に体育の授業の中でボッチャを始め、卒業後、お世話になった理学療法士の先生と再会したことをきっかけに本格的に取り組む
  • 2016年度日本ボッチャ協会強化育成選手
    BISFed2016World open Montreal Team2位
    BISFed 2016 Fazza World Open –Dubai 個人性ベスト8
    福島県ボッチャ選手権大会 優勝
    CAC BOCCIA JAPAN Team & Pair Championships 2017 2位
  • 趣味:食べ歩き、音楽を聴くこと