連載企画

Our Passion

-挑戦に懸けるアスリートたちの想いー

編集協力:朝日新聞デジタル編集部

PASSION FOR CHALLENGE
UP DATE 2017.05.25
#29

「コートで知った、伝わる楽しさと伝えることの大切さ」

デフバスケットボール

越前 由喜選手

「サントリーチャレンジド・アスリート奨励金」第2期、第3期対象選手
埼玉AIT’s 所属
デフバスケットボール日本代表

  • .競技との出会いは?

    小学3年生のときにミニバスケットボールチームに入ったのがはじまりです。もともとスポーツが好きで空手や水泳もやっていましたが、チームで戦うバスケが一番面白いと感じました。
    初めのうちはまだ子どもだったので、耳が聞こえないことも特に気にせず、ただ楽しくプレーしていました。でも高学年になってくると、自分が思っていることを試合中に仲間に伝えられないことに、だんだん苦しさを感じたりするようになっていきました。
    中学生になった頃、聴覚障がい者でプレーするデフバスケットボールという競技があることを父が調べてくれて、埼玉県のチーム「埼玉AIT’S」(アイティーズ)の見学に行ったんです。手話などで自分の考えを一瞬で伝えられることに魅力を感じて、その場で入団を決意。月1、2回、土曜日の練習に、父の運転する車で福島から埼玉へ通うことになりました。メンバーは年上の人ばかりでしたが、みんな優しくて、緊張することもなくすぐに溶け込めました。
    埼玉AIT’Sにはデフバスケ日本代表の選手がいて、「自分もいつかは」と憧れるようになりました。そうしたら高校1年生のとき、試合を見に来ていた日本代表の監督から「トライアウトに参加してみないか」と声をかけられたんです。こんなに早くチャンスがやってくるとは思いませんでした。

  • .困難に直面し乗り越えた経験は?

    正式な日本代表になるまでの4カ月間と、代表になった直後はつらい時期でした。
    トライアウトを経て、まずは育成枠として代表合宿に参加させてもらえることになったのですが、別のチームと練習試合をやるときに、自分ひとりだけが相手チームに加わって日本代表と試合をしたんです。いくら合宿に参加していても、やはり育成枠は別。代表選手が近くて遠い存在に感じられ、悔しくて仕方ありませんでした。
    そこから「絶対に日本代表になりたい」と思い続けて練習に励み、4カ月後に正式に代表メンバーに選ばれました。ところが今度は日の丸の重みを感じすぎて、所属チームでも思うようにプレーができなくなってしまったんです。シュートも全然入らないし、周囲から「何かあったの?」と心配されました。
    そんなとき、両親やコーチが「大丈夫、ひとりじゃないんだよ」と声をかけてくれました。「自分のプレーをすることが一番大事なんだから、そんなに自分を追い詰めなくていいんだよ」と。こうした周囲の温かい言葉のおかげで少しずつ気持ちを切り替えて、気負わず本来のプレーができるようになっていきました。

  • .競技を通して身につけたものは?

    「伝えること」の大切さです。デフバスケの試合ではアイコンタクトが大事なコミュニケーション方法の一つ。日頃からの信頼関係があれば、耳が聞こえなくても視線で意思を伝えられることを学びました。また、年齢で遠慮することはないと代表のメンバーが言ってくれているので、手話を使って自分の考えも積極的に言うようにしています。
    自分から伝えようとする姿勢は日常生活で健常者とコミュニケーションを取るときも同じです。まずは聞こえないことを理解してもらうことが大切。今は障がいを特に苦しいことだとは思っていなくて、そういう前向きに考える力もデフバスケから得たものだと思います。

  • .夢、目標は?

    2018年に開催されるU-21の世界大会でメダルをとることです。自分は小学生のときから相手チームのエースを止めるのが得意。海外の選手は身長も大きいし体格も全然違いますが、ディフェンスの技術をさらに磨いていきたいです。
    4月からは宮城の大学に進学し、バスケットボール部に入部しました。そこでも活躍できたらいいなと思います。

  • .読者の皆さんへメッセージをお願いします!

    サッカー選手のリオネル・メッシが言った、「努力すれば報われるのではなく、報われるまで努力するんだ」という言葉が好きです。努力して初めて結果は出る。日本代表に選ばれなかった人たちの分も頑張る気持ちで、日々努力を重ねていきたいと思っています。
    デフバスケは、ルール自体は普通のバスケと変わりませんが、自分が常に心がけているのは「目で聞くこと」です。目まぐるしく動くゲームの中、手話で味方に合図を出したり、集中力を高めて視線でコミュニケーションを取ったりするデフバスケならではのプレースタイルにぜひ注目してください。

プロフィール

Profile

越前 由喜選手YUKI ECHIZEN

「サントリーチャレンジド・アスリート奨励金」第2期、第3期対象選手
埼玉AIT’s 所属
デフバスケットボール日本代表

  • 1999年1月27日生まれ
  • 福島県出身/宮城県在住
  • 聴力障害(感音性) 2級
  • 小学校4年生の時、小田倉ミニバスケットスポーツ少年団に入部
    荒井コーチとの運命の出会いが、現在までバスケを続けるきっかけに
  • 中学一年の時、デフバスケを知り埼玉AIT’sに所属
    2014 高校一年の時、デフバスケ関東大会で日本代表監督から声をかけられ代表トライアウトへ参加し、2014年12月に日本代表入り
  • 2015 第8回アジア太平洋ろう者競技大会 4位 (日本代表)
    2015 第4回デフバスケットボール世界選手権 9位 (日本代表)
    2016 第50回全国ろうあ者体育大会 埼玉チーム 優勝
  • 趣味 バスケットボール/特技 ダンス