
世界には深刻な水不足に苦しむ人々がいます。蛇口をひねれば容易に水を得られる日本にいると、その深刻さを実感しにくいかもしれません。しかし、その日本とて決して水が豊富にある国とはいえないのです。事実、降水量は年々減少傾向にあり、毎年のように、各地で水不足も起こっています。では、私たちが暮らす日本には、いったいどれだけの水資源があるのでしょうか。私たちができることはなにか、具体的に考えてみることにしましょう。
私たちが暮らす日本は、湿潤なモンスーンアジアの東端に位置しています。世界(陸域)の年平均降水量が約810ミリメートルなのに対し、日本の年平均降水量は、およそ2倍の1690ミリメートル。これだけ聞くと、「水環境に恵まれた国」という印象ですが、この降水量に国土面積をかけて全人口で割り、人口1人あたりの年平均降水量を算出すると、日本の場合1人あたり約5000立方メートルとなり、世界平均1人あたり約16400立方メートルの、わずか3分の1程度ということになります。
世界各国の降水量等
しかも、日本の国土は3分の2が山地。河川が急峻で流路が短く、降った雨はすぐに海へと流れ込みます。雨量も季節によって偏りがあり、太平洋側では梅雨時や台風シーズンに降雨が集中するため、降水のかなりの量が洪水となってしまいます。結果的に降った雨の大部分が水資源として利用されないまま、海に流出してしまうのです。梅雨時や台風シーズンには水害が発生し、それ以外の時期には水不足になる―これは、わが国が毎年のように経験していることです。
各種用水の渇水発生地区数
事実、過去40年を振り返ってみても、渇水(※1)が発生しなかった年はなく、特に昭和42年、48年、53年、59年、60年および平成6年には、多くの地域で渇水による深刻な影響を受けました。さらに、近年は降水量が減少傾向にあるだけでなく、少雨の年と多雨の年の、年降水量の開きも大きくなっており、安定的な水の確保がますます難しくなってきています。降水量が多いとはいえ、けっして水環境に恵まれているとは言えないのが現状なのです。
東京都の家庭での水の使われ方
体を維持するための飲み水をはじめ、炊事、洗面、風呂、トイレなど、現代人は日常生活のあらゆる場面で、大量の水を使っています(※2)。
東京都を例にとると、家庭で使う1人1日の水量は平均して約240リットルです(平成19年・東京都水道局調べ)。公衆トイレや公園の噴水、ホテル、デパートなどの公共・共有の水(都市活動用水)を含めると、1人1日約330リットルにも及びます。
水は文化のバロメーターといわれます。いわゆる文化的な生活になればなるほど、多くの水が必要となるからです。ヨーロッパ、北米、アフリカ、アジア、南米、オーストラリア・オセアニアの6地域の生活用水の使用量を較べてみると、もっとも少ないのがアフリカで1人1日わずか63リットルですから、日本は約5倍もの水を使っていることになります。人口1人あたりの年平均降水量が少ない日本でこれだけ高い水準の生活用水を確保できる背景には全体的な水の利用効率が高いこと、食料生産の多くを海外に依存していることなどが挙げられます。ちなみに、もっとも多い北米では約7倍の1人1日約425リットルとなっています(※3)。
一方、世界保健機構(World Health Organization: WHO)によれば、人が「人間らしい生活」を営むためには、最低1日5リットルの水が必要だとされています。この量は水環境に恵まれず、ギリギリの水量で生活する場合を指しますが、事実、世界にはこのギリギリの水で暮らしている人が大勢いるということも忘れてはなりません。
日本でも、特に渇水時には、水需要が逼迫するため、少しでも水使用量を減らす努力が必要となってきます。また、平常時においても、水道水を利用するには、取水・浄水処理・配水・下水処理の過程でエネルギーを要し、水の無駄遣いはエネルギーの無駄遣いにつながります。水使用量を減らし、エネルギー消費量を減らすためにできることを、私たち一人ひとりが考え、実行する必要があるのではないでしょうか。
| 洗面・手洗い | 1分間出しっぱなしの場合、約12リットル |
|---|---|
| 歯磨き | 30秒間出しっぱなしの場合、約6リットル |
| 食器洗い | 5分間出しっぱなしの場合、約60リットル |
| 洗車 | 20分間出しっぱなしの場合、約240リットル |
| シャワー | 3分間出しっぱなしの場合、約36リットル |
| トイレ(従来型) | 約12〜20リットル/回 |
| トイレ(ロータンク式の節水型) | 約4〜5リットル/回 |